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説得

計人が、難しいといった意味を説明する。


「確かに、お前が言えば大抵の無茶は通るだろうけどな。でも、さすがに小学生が何も言わずに数日間空けたり、夜中に出て行ったら、ホテルは心配するだろ」


オーナーである美奈の客であるからこそ、ホテル側も特に気にかけるはずだ、と言われてしまえば、なるほど、そうだとしか言えない。


「それに、補導でもされようもんなら、何で子供だけでそんな長期間泊めたんだとか、夜中出て行くのを止めなかったのかとか、色々面倒くせーこと言われると思うぞ」


「うーん……」


計人の言うことも一理ある。普通、要くらいの見た目の子が好き勝手していたら、それを止めなかった大人は避難されても仕方がない。


それなら、数日、計人の家に泊めてもらって、その間にマンション辺りを用意するのはどうか、と思った美奈だったが、口に出す前に、計人から却下されてしまった。もう一人泊めるのは無理、だそうだ。以前、四、五人でお泊りしてた話も聞いているので、数日なら、と思ったのだが。


このままでは、要は本当に野宿してしまうだろう。夜になるとまだ肌寒い季節、何日も野宿なんて、体調を壊すに違いない。そう判断した美奈は、要に話しかけた。


「なら、いっそのことうちに泊まりませんか?」


他人を住まわせるのは避けたいところだが、相手が梨亜の上司なら構わないだろう。そんなことより、助けてもらった恩ある相手が、風邪引いてしまうのをみすみす見過ごしてしまう方が問題だ。


「それは正直助かるが、平気か?」


「はい、部屋だけは沢山余ってますので。但し、時々私の趣味の料理に付き合ってもらうことになりますけれど」


まぁ、この家に住むからには、そのくらいは我慢してもらおう。食べられないレベルではないのだし。


「趣味の料理?」


「はい。いつもは、きちんとしたシェフの美味しい料理が食べられるんですけど、時々、自分で作りたくなるんです。お菓子とかも」


「俺は、それを一緒に手伝えばいいのか?」


「え? 手伝ってくださるのなら、是非!」


自分の作ったものに文句を言わずに食べてほしい、というつもりの美奈だったが、思いがけない要の提案に飛びつく。どうせなら、玄人でない誰かと一緒にわいわい作りたい。


要は、一瞬きょとんとした美奈を見て、間違えたか、と思ったが、直後、満面の笑顔の美奈に、身を乗り出しながらお願いされ、思わずこくこくと頷いた。


「あ、あぁ。役に立つかは分からないが」


「じゃあ、お願いします! ふふふー、楽しみ~」


あれを作ろうか、いや、あれがいいか、と、鼻歌でも歌い始めそうな勢いの美奈に、つられて頬が緩む。


少し手伝うだけで、美奈が喜び、自分はここにいることができる。好意で住処を提供してくれた美奈を監視しなければならないことは、心苦しいが、その分、自分に出来ることはすすんでやっていこうと決意した。

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