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電話

「ミナ、ひょっとしてあの人って……」


「うん、冴下さん。多分私の婚約者になる人」


あっさりと返された言葉に、秀が突っ込みを入れる。


「多分って何、多分って」


「まだ婚約者ではないから。でも、あの人に決まると思うから、多分」


これまたあっさり返される。色々と突っ込みたいところのある回答だが、美奈の家は大金持ちだ。秀は、そういうこともあるだろう、と自分を納得させた。


「どんな人なの?」


ゆかりに興味津々、聞かれた美奈は、うーん、と記憶を探り出すように顎に手を当てた。


「冴下家の次男で、年の離れた弟さんの面倒をよく見てる人。今は、学生の傍ら、おうちの会社を手伝っているんだけど、そこでの評判も結構いいみたい」


「なるほど。父親になるには良さそうな条件ね」


ゆかりの感想に、うんうんと頷く美奈。


「酒癖が悪いとか、ニコチン中毒とか、ギャンブル中毒とかもないし、親族に問題があったりする人もいないしね」


にっこりと返された答えに、秀は首を捻る。何か違和感を感じると思ったら、実際に自分で会った感想がないせいで、調査結果を話しているだけに感じるからのようだ。


「趣味とかは知ってるの?」


「えっと、音楽好きみたい。よくコンサートとか行ってるみたいよ」


「一緒に行ったこととかないのか?」


「まだ婚約者じゃないからね。他の人と婚約した場合、違う婚約者候補と遊んでいましたよ、なんてのは良くないでしょう?」


色々と面倒そうなことを考えなければならない美奈を見て、自分は普通に恋愛結婚出来る身でよかった、と思う秀だった。



夕食も終わり、二人が帰るのを見送った美奈は、電話が鳴っているのに気付く。計人からだった。


「よ、今日はどうだった?」


「着た、見た、買った、とはいかなかったよ」


残念そうに言う美奈に、計人も軽く返す。


「カエサルは負けたか」


「ゼラに行く前に迷ってしまったの」


今回の買い物は特に買いたいものがあったわけではなく、新装開店の招待がきていたため見てみるか、程度だったため、あちこち行っているうちに、あまり時間はなくなってしまったのだ。


が、三人で楽しめたので、目的は無事、果たしたといえる。それを聞いた計人は、しみじみと言った。


「ローマ軍は、方向音痴だから、自ら道路を切り開いた、か」


「それは残念な新説ねぇ。全ての道は迷子を誤魔化すためにローマから伸びているなんて」


ひたすら軽口の言葉遊びを繰り返していたが二人だったが、計人が少し真面目な声で告げてくる。


「残念ついでに、一つ言うことがある」


「なあに?」


つられて真剣な声になった美奈に、計人は明日の中止を頼んできた。


「明日、梨亜んとこのたいちょーさんが来ることになってな。それが飲茶んときと被るんだ。梨亜はその後たいちょーさんと一緒に夕飯食べることになるから、飲茶はまた今度ってことにできねぇか?」


どうも、一番の目的である梨亜が、要と会わなければならないらしい。梨亜が参加できないなら、他の日にしたいというのは確かに分からなくはない。


けれど、聞いた感じでは、夕食の時間が取れないというわけではないらしい。そこまで聞き取った美奈は提案した。


「え? もう結構準備しちゃってるよ。お話終わってから、うちに来るのじゃだめなの? 隊長さんも呼んで」


「そう出来りゃ一番だが、量だいじょぶか?」


どこか、ほっとした様な雰囲気を含んで聞こえてくる声に、大きく頷く。


「大丈夫。むしろ余るから」


「そうか、なら頼む」


「はいはーい。任せて」


前回助けてくれた隊長さんに、少しでも礼が言える。明日の飲茶に向けて、もう一度気を入れなおした美奈だった。

そういえば昔、友達に、私の口癖だった「はいはーい」という言い方が可愛い、と言われ、つい言うたびに、「出た!」って言われたり、「みなみみたいに可愛く言えるように真似してる」って言われたことがあったなぁ。

みなみの声ってもの凄い可愛いよねー、と何故か大絶賛。鈴鳴り声なんだと。

書いてて、小説の中でも言ってるや、と、ふと思い出しました。


……うん、褒めるの声限定かい、とか思っちゃいけませんね、私。

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