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飲茶の準備

天界での騒ぎから戻り、いつもの日常を過ごしていたある日。美奈は計人に相談を持ちかけられた。何でも、梨亜が飲茶を体験したがっているらしい。


「作ればいいの?」


尋ねた美奈に、計人が満面の笑みで頷く。


「あぁ、こんなもんだって分かりゃーいいから」


日曜に家で振舞う約束をした美奈は、学校から帰って、早速シェフに相談を持ちかけた。


「飲茶、ですか」


「そうなの。獅峰龍井茶は手に入る?」


「そうですね、ございます。しかし、飲茶の雰囲気を味わってみたいと仰るのなら、緑茶より青茶がよろしいのでは? 聞香杯を楽しんでいただくのが良いのではないかと」


言われて、考える。確かに、聞香杯は珍しく、飲茶を知らない梨亜はやったことがないだろう。それに刻一刻と変わっていく香りは、味だけでない楽しみをもたらしてくれるはずだ。


「そうね、確かに。大紅袍の一世代は手に入る?」


「申し訳ありません、今週日曜となると、少し難しいかと。流石に一世代は、通常には出回りませんから。鉄観音なら良いのがありますので、そちらはいかがでしょう? 見た目の華やかさでは、工芸茶もありかとは思いますが、飲茶の楽しみとは異なると思いますので」


どうせなら、幻の一品をと思いもしたが、流石に無理があるらしい。第二世代以降にするくらいなら、薦められたとおり鉄観音で構わないだろう。


「そうね、ならそうしましょうか。お願いね」


「はい。メニューはどうされますか? 蝦餃や小龍包に焼売、春巻きや餃子などが、馴染み深くてよいかと思われますが」


「そうね……。どんなものがあるかを見て、好きなのを選んでもらうようにしたいから、種類は沢山ほしいかな」


「そうですね。そうなると、叉焼酥や糯米鶏なんかは今回はやめますか?」


これらは、ひとつ食べるだけで結構なボリュームになる。沢山の種類を試すには不向きな料理だ。


「うーん、糯米鶏は珍珠鶏の方がいいかな。でも、一口だけ試すってのはありだと思うし、この際一つ一つのボリュームは考えないで作っておきたいかな。鹹水角とかもおいしいし」


「なら、全体的に小さめなものをつくり、シェアしやすいように取り分けナイフも用意しておきましょうか」


「飲茶の席に、ナイフが用意されているってのも、何かイメージ違ったりしない?」


「ですかねぇ、やはり。赤に龍紋の柄のものにでもして、中華らしくすれば、と思ったんですが」


二人でああでもない、こうでもないと話しているうちに、いつの間にかメイド達も加わって、あちこちで議論が交わされだす。


皆の主張を全て反映すると、十人いても食べきれない量が出来る算段になってしまったため、一人ふたつを提案する方式とし、前日までに用意できるもの、取り寄せる材料を決めていった。


結局、全てのメニューが決まったころには、夜はとっぷりと更けていたのだった。

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