申し開き4
「それじゃあ、話を進めましょうか。貴方達、一体何が問題だといっているの?」
その言葉に、未だ固まっていた風早派が息を吹き返す。
「それは勿論、許可もなく力を行使出来たことです。異世界の者が力を使うなど、前代未聞ですから」
「そうです。本人を詳しく調べるべきです。今後に役立つかもしれませんし」
勢い込んで前のめり気味に言う風早派に、要はひっそりとため息をついた。
――結局、それが本音だろうが。
美奈が実際に問題になることは殆どない。力を行使したとはいえど、それは単に、街を飛び回っていただけだ。これがもし、隊舎や他の牢など、侵入防止措置が取られている場所に入っていたなら、美奈は身動きとれずに捕まっていただろう。
美奈が要と会えたのは、美奈の執念が本当にすれすれの部分で幸運を偶々掴み取っただけだ。感覚としては、父親の書斎には入っちゃだめ、と言われている子供が、偶々通りがかった際に扉が開け放たれて、中に誰もいなかったので入ってみた、程度のものでしかない。
親が鍵でもかけてしまえば、子供がいくら入ろうとしても入れない。中に入った時に親がいたら、簡単につまみ出される。その程度の事しかしていないのである。
だが、美奈の使った力は、なまじこちらの常識がない分、珍しい使い方だった。そのため、美奈の柔軟な発想で力を使えば、今までにない技術が産み出せるかもしれない、と欲を持ったのだろう。
犯罪究明を大義名分として美奈を天界に閉じ込め、実験動物のように扱おうとする思惑が透けて見える。
「無意識下に許可が下りている可能性はございます」
言った途端、要に余計なことを言うな、と言わんばかりの鋭い視線が降りかかるが、当然無視だ。
「無意識にとは?」
「少女は、向学心旺盛だったようで、夢追人や天界について、部下に色々と質問をしていたようです。また、部下と離され、留め置かれていた『通い路』でも、門番に少々質問をしていたと聞きます」
「つまり、その中に互いが気づかない内に、滞在許可となる会話が成されていたかもしれない、ということね」
「その可能性も否定し切れません」
「成程。夢守隊の隊長と『通い路』の守人の二人ならば、緊急通行許可を付与する権限はあるからな。会話の中で、問いに対する答えが許可を与えたと見做されたか」
納得したように頷く風早に、要も無言で頷く。
このまま、風早様が話を終わらせてくれれば、要としては助かるのだが、やはりそうは問屋が卸さなかった。
「それならばっ! それならば許可を与えた者がそう報告するはずです! それがないのに、勝手に少女が特異ではないと断定するのは危険かと!」
「まぁ、それはそうねぇ」
「ですから、一度少女を捕らえて尋問すべきかと」
握り拳で鼻息も荒く主張する風早派を見、城崎が要達に意見を求める。
「どう思う?」
「少女は既に一度、冤罪で投獄されております。これでまた自分の身に覚えのない罪で捕えられたとなれば、こちらへの心証はこの上なく悪くなるかと。少女自身だけではなく、共に来た協力者もまた然り」
「せっかく見つけた貴重な協力者を失うことになる、か」
「その可能性がかなり高いかと」
要の警告に、風早一派が一様に黙る。
現地の協力があるとないとでは、そこに赴く夢追人の負担が変わる。妹大事の城崎夫妻が、妹の仕事を増やすような真似を許すとは思えない。そんな沈黙だった。
「なら、暫く様子を見るのでどうだ? 我が妹に、それとなく探るように知らせよう」
言って、そのまま端末を取り出す。その楽しそうな表情からは、指示を出すのと、妹と話すこと、どちらが主眼となっているかは一目瞭然だった。




