諮問会7
「とにかく問題は、その珠を引き渡して、少女の特異性を示す結果が出てしまうことでしょう」
「三番隊隊長、その少女に、こちらを害する意思はないと思って平気ですか?」
もし、美奈が天界に害なす存在ならば、放っておくわけにはいかない。こちらを覗くことができるくらいで、害など成せるかと言われたら、そうさせはしないが、不穏の芽を摘んでおくに越したことはないからだ。
「あぁ。それは間違いない。こちらが害を加えようとしない限り、あちらから攻撃することはないだろう」
力強く頷いた要に、他の面々も頷きを返す。三番隊隊長である要がそう言うのなら、それは信じていいのだ。
「なら、なるべく隠せるだけ、特異性を隠した方がいいですね」
「そうだな。これ以上の面倒は増やしたくはないしな」
二番隊と七番隊の隊長が頷きあう。
「三番隊隊長、それは君にしか使えない、というのは本当か?」
「おそらく。何となくだが、俺か美奈にしか扱えないものだと思う」
「少し試してみてもいいか?」
「どうぞ」
言って、珠を渡す。六番隊隊長は、渡された珠を覗いたり、指で弾いたり、矯めつ眇めつした後、ぐっと力を入れて握った。
バチィッ!
「うぉっ!」
出来るようなら潰してしまえ、と思っていた六番隊隊長だったが、ある程度以上の圧力をかけた時点で、珠が閃光を放つ。そのまま、自分の身を守るように雷を纏い続ける珠に、呆れの様な声が出た。
「こりゃ、駄目だ」
「駄目だじゃないですよ、隊長。どうするんです? 止まりませんよ、これ」
副隊長の言葉に、ぽりぽりと頭を掻き、呟く。
「やっぱ、このまま放置って訳にはいかんだろうな」
「そりゃそうですよ。これだけ怒ってるんですから、きちんと謝ってください」
「珠に謝るのか? 俺が?」
じと目の副隊長に、心外とばかりに答える六番隊隊長だったが、副隊長は怯まない。
「当たり前でしょう! 悪いことしたらごめんなさい。基本ですよ!」
「悪いことはしてねぇだろ……」
「何言ってんですか、いじめたでしょうが!」
「いじめ!? 調査だ、調査。真っ当な理由のある正当なる行為だ」
「珠にとったら分かりませんよ、そんなの。いきなりやってきた怖いおじちゃんが自分を押し潰そうとしたってだけじゃないですか」
ギャーギャーと漫才を繰り広げ始めた六番隊をよそに、他の隊も珠に近寄ろうとするが、雷は全く収まる気配がない。
「これは、一般人くらいなら十分火傷する威力はあるな」
「あくまで持ち続ければ、火傷ではすまない可能性もありますよ」
「見てる分には綺麗だけどねぇ」
「そのままという訳にもいかないだろう。三番隊隊長、止められるかい?」
皆の視線を受け、要が珠にすっと手を伸べると、珠は静かにふわっと要の手に収まる。
「これは……」
「成程」
要が特に何か力を使ったわけではない。要はただ、珠を取ろうとしただけだ。要の意に従って動いたのは、珠の方である。珠に意思があるとまではいかないが、ある程度周りを判別することは明白である。
「なるべくなら、渡さないほうが良いけど、そうもいかないでしょうねぇ、現状じゃ」
「そうだな。……三番隊隊長、調査の間大人しくしておくように、珠に言い聞かせておいてくれ」
「……自信はないが、なるべく穏便に済ますように頼んでおこう」
「で、六番隊。何か分かった?」
未だ、副隊長と言い争いを続けていた六番隊隊長は、その言葉に顔を向け、断言する。
「あぁ。調べられても問題はないだろう。自衛機能くらいなら珍しいもんでもなし、こちらが触ってもただの石としての反応しかなかったからな。三番隊隊長が動かさない限り、あちらにとって面白い反応は出ないはずだ」
「調べている最中に、三番隊隊長が急に窮地に陥ったりしなければ、勝手に動いたりしないと思いますよ」
調査・研究を得意とする六番隊が出した結論に、皆が頷く。
「では、この珠は特別何かあるわけでもないので、調査協力のために貸し出しはするが、預かり物なので早めに返してほしいと頼んでおこう」
一番隊隊長がそう言って、この場はお開きになった。




