諮問会6
「それは……、少し面倒かもしれんな」
「何がだ?」
要の質問に、ふぅとため息をついた一番隊隊長は、少し声を潜めて言った。
「風早様の一派が、地界人に興味を持ったらしくてな。連れて来れないか、との仰せなんだ」
風早様、というのは、統括者の中でもそれなりの権力を持った人物だ。血族が統括者となる家系のため、梨亜の兄のような、本人の力量で統括者になった者よりも、より影響力が大きい。
今回、一派ということは、風早様自体は、さほど興味を示していないというのは不幸中の幸いか。
「それは……」
言いよどむ要に、他の隊長たちも頷く。
「気持ちは分かる。この世界に来て、散々な眼にあった地界人が、短期間でまた来たいと思えるかというと、微妙だしな」
「しかも理由は、能力に異様に執着する変人が、自分を勝手に丸裸にして、その結果をばら撒いちゃったせいで、見知らぬおっさんに興味もたれました、だものね……」
「その上、今回は統括者が呼んでいるから、地界人の身の安全すら保証出来ないけど来てください、なんて……、言えるわけないよな」
あまりに散々な言い様だが、その内容が間違っていないところが救われない。
微妙な沈黙の支配する空気を破るように、一番隊隊長がパンパンっと手を打った。
「今回の件は、風早様の一派が興味をもたれてしまったため、地界人の少女の、天界での詳細をご報告する必要がある。しかし、再度連れてくるのは難しいと伝えてみよう。で、一応確認だが、同行した少年は何もしていない、で正しいな?」
「あぁ。地界でも、美奈と違って力を扱うのが苦手らしく、細かい作業も面倒らしいからな。美奈が力使ってるのを見て、何やっているのか全然分からない、と匙を投げていたくらいだ」
美奈がやってくれるから、その間、自分は何もしないでも平気だ、と美奈を全面的に信頼していた姿が浮かぶ。
「よし。これ以上変なことに興味を持たれても困るからな。同行者については、ひたすら何もなしを貫こう」
「頼む」
「ただ……、そんな状況だから、その珠は接収される可能性もある。いや、牢から抜け出した証拠として、没収か?」
そんなのどちらでもいいが、どちらもよくない。
「で、実際どうなんだ、それ? ただの力の塊が残っているというだけなら、いっそ渡してしまった方がいい気がするんだが」
質問しつつも、表情が鈍いのは、この後の答えがほぼ予想付いているからだろう。
「いや、美奈が飛び回ってたときの性質をまだ保っている。ちょっとした命令なら、これは勝手に完遂するぞ」
うわぁ……、と眼を逸らす者、あちゃー、と頭を抱える者など様々だが、彼らの思いは一致していた。
『何て面倒な……』
「それから……、これは内密に頼む」
態々そこで区切る要に、まだあるのか!? と思いつつ、一斉に頷く面々。
「これ多分、繋ごうとすれば、美奈に繋がる」
「……繋がるってのは、電話みたいに、ということかい?」
「あぁ。訓練すれば、美奈がこれを媒体に、また共鳴出来るかもしれん」
………。
大問題だった。
「ただ、どうもこれは、俺の力も混ざってるらしくてな。鳥谷が使おうとしても使えなかったから、俺が許可しなければ、美奈も自由に動けない、はず、だ」
そう言いつつ、思い切り明後日の方角を向いている。
「…………第六の旦那、どう思う?」
「安心しろ、俺は今何も聞いてない。問題など一切浮かばん」
「私も残念なことに、聞き逃してしまいました。あぁ、本当に残念です」
満場一致で、聞かなかったことにすることにした。




