諮問会への招集
「――以上で終了となります」
「ご苦労」
ふぅ、と息をついた要は、午前の仕事が無事に終わった解放感をかみしめる。
ここ最近、必ずと言っていいほど、どこかで問題が発生し、昼を割り込んでの対応となっていたのだ。
今日こそは、旭屋の数量限定わがまま定食を食べるぞ、と意気込んだ要は、机を片付けている鳥谷に声をかける。
「お前は、昼はどうする? 俺は旭屋に行こうと思っているが」
「私も本日は用意していないので、ご一緒させてください」
きらきら輝く瞳でクマちゃんコートを差し出してくる鳥谷を無視し、まともな上着を選んでいると、どたどたと走る足音が聞こえる。
嫌な予感に、さっさと外へ出ようとした二人だったが、一歩遅かった。
コンコンコン。
無常にも響くノック音を、暫く無視していれば帰らないか、と往生際の悪いことを思った要だったが、帰るどころか激しくなったノックの音にため息をつきつつ、顎を扉へとしゃくる。
「どなたですか? 私達はこれから昼休憩なので、出直していただけますか?」
一応、悪あがきを試みた鳥谷だったが、その意見は敢え無く却下された。
「申し訳ございません。諮問会が発足されることとなりました。隊長ならびに副隊長はご参集ください」
予想を超えた用件に、二人が顔を見合わせる。
諮問会は、何か重大な事が起こった際、事態打開のために開かれる議会のことで、夢守隊の一桁隊隊長の過半数の承認がなければ開かれることはない。
夢守隊は、基本的には隊による優劣は存在しないが、一桁番号の隊だけは特別であり、その序列は、ほぼ隊の番号に等しい。三番隊隊長であるということは、頂点から三番目にあるということでもある。
隊長の過半数の承認が得られているこの状態で、三番隊隊長である要の耳に諮問会の内容が入ってきていないということなど、通常あり得ない。
――城崎様への不敬が問題とでもなったか?
他の隊の隊長が、態と己の耳に入らないようにしたとすると、会の議題は自分に関係のあることなのだろう。
要は、つい先日、統括者に対して、個人の望みを押し付けるという不敬を犯している。
とはいえ、それは、元々が統括者の考えなしの行動の結果、罪なき地界人が拘束され、部下とも音信不通状態とされたことに対するものであり、統括者の命を覆すことが出来るのは統括者のみであることを考えれば、必要なことだったのだが。
しかし、本体ならば、統括者から指示を受けることはあれど、こちらから働きかけるなどという無礼は許されることではない。
統括者自身が気付き、間違いを正すのを待つべきだったと責められても仕方がないことではある。
一応、城崎様からの指示書には、今回の第三隊の行動について、自分の意に沿う行動であり、罰せられる類のものではない、と明記されてあったため、それを見せれば直ぐに終わりになるはず、とは思いつつ、もし不敬を言い出したのが、同じ統括者の一人であるならば、話はまたややこしくなる。
今日も限定メニューは食べられないか、とこぼれだしそうなため息を抑えて会議室へと向かったのだった。




