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検査

天界での珍しい食事が終わり、梨亜たちや計人とも別れて行ったその先で、美奈はよく分からない検査を受けていた。


「では、こちらを五秒間持ち上げてください」


「はい」


材質のいまいち分からない、ふよふよとする物体を持ち上げる。下手に力を入れると壊れてしまいそうなため、慎重すぎるほど慎重に持ち、タイマが五秒を差すまで手の上で固定する。


「はい、では、このボールをあちらの的めがけて投げてください」


「はい」


的は、二メートル程先にあり、大きさも大きいため、楽々当てることが出来た。


「では、こちらの部屋でジャンプお願いします」


今度は、バルーンルームの様なところでポンポン飛び跳ねさせられる。


地球では年齢制限があって、とっくにやることの出来ないものだけに、楽しいのは楽しいのだが、これで一体何が分かるのだろうか?


首を傾げつつも遊んでいると、今度は向かい風の中、坂を駆け上るように言われる。


――うーん、お手伝いには体力が必要ってこと?


梨亜から聞いたときには、計人と違い、自分はやって二、三問診がある程度だろうと言われていたと思ったのだが、どうやら違ったらしい。


最終的には、何の意味があるのかは分からないドミノ倒しまで行い、綺麗に全部倒した達成感を感じているところで検査は終了になった。


「ありがとうございました、これで全て終了になります」


「ありがとうございました」


礼を言って、隊舎に戻ろうとした美奈は、くらっとふらつき、一瞬自分が何をしているのか分からなくなった。


――えーっと、今は、天界でお手伝い登録が終わって、戻るところ、だよね。


ぼうっとした頭を振って隊舎に戻ると、梨亜が出迎えてくれた。


「美奈は、もう終わり?」


聞かれた美奈は頷く。


「計人は何か色々測られていたけど、私は、ただの付き添いって扱いみたいで、名前とあと少し聞かれたくらいで終わりになったの」


少し聞かれただけにしては長かったな、と思った梨亜はしかし、大して疑問を持たずに話を流したため、気付かなかった。美奈が、検査について誤った記憶にねじ変えられていることを。


一方その頃、要は、早速美奈の検査結果を受け取っていた。


「やはり、新人レベルの力は凌駕している、か……」


本来、夢追人の現地手伝いは計人であるため、検査など一つもなかったものを、無理矢理ねじ込んだだけのことはある。といっても、当人に不自然さを気付かれぬ様、深呼吸による気の循環と、階段を昇る際の力の保有量しか見ていないため、それを実際に操れるかという部分は未確定なのだが。


とはいえ、今までの行動を見るに、操れないということはないだろう。


――さて、どうすべきか。


この結果を上に報告しても、それは問題ない。実際に力を使ったという事実さえ知らなければ、良い素質を持った地界人がいた、程度の認識にしかならない。


検査員に検査を依頼したことは秘密でもなんでもない。下手に隠してそれが見つかった時の方が問題になることは分かっているが。


――下手すると五十嵐の値を超えるんじゃないか?


そうなると、何故美奈の方が正式な手伝いじゃないのか、という意見が出てきかねない。それに答えるには、そもそも梨亜が計人に手伝いを頼んだ経緯から説明する必要が出てくるため、物事が色々な方向に広がり、面倒だ。


聞かれれば答えるが、聞かれない限りは自ら報告する気はない、部下の失態を思って、いっそ全て秘匿してしまおうかという気にもなる。


しかし、今回の検査員は確か、能力に対する憧れが強く、才ある者に対しての崇拝ぶりたるや、凄まじいものがある者だった。かくいう要も、一言声をかけるだけで、気絶しそうなほど喜ばれ、震えながら返事をされたのに、全力でどん引きしたのは苦い思い出だ。


この数値だと、美奈とすれ違ったりでもした際に、美奈を拝みかねない。やはり、大事になる前に報告はしておこう。


要はそう結論付けた。

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