自由の身
年も明けましたね。
今年もゆるゆるとよろしくお願いします。
要が梨亜と共に、美奈達の捕らえられている『風』へとやってくると、先程の門番達の背がぴっと伸びる。
「木崎隊長、お疲れ様です!」
「何かございましたか?」
こちらを出て、そう時間も経たない状態で再度戻ってきた要に、やや緊張気味の声が掛かる。
「あぁ。まだ島田はいるか?」
「はっ。お呼びいたしましょうか?」
「いや、いい。入るぞ」
言って、そのまま中に入る。案内するという声も何も無視して突き進んでいった先に、島田はいた。
「ん? 木崎? どうした、またなんかあったのか?」
先触れもない登場に驚いた島田に、単刀直入に言って梨亜の持っていた封筒を渡す。
「先程の件、解決した」
「は?」
さっぱり訳が分からない、と言いたげな顔で、中身を見た島田は、そこに書かれた署名に、さぁっと顔色を青くする。
「な、統括者……、超一級指令書ぉ!!?」
その素っ頓狂な悲鳴に、周りに控えていた者達がざわつき始める。
まぁ無理もない。統括者自らが発する指令書など、普通に暮らしている限り見ることなどない。夢守隊一桁番隊長である要ですら見たのは数回程度、それも、国益に関わる指示であり、普通、個人を解放するためだけに使われるものではない。
「とりあえず、詳しい話は今度する。まずは二人を出してくれるか? 彼らは夜前には帰さにゃならんからな」
既に、昼は過ぎている。というより、夕方に近い。捕まったのが昼頃だったため、朝昼兼用で食事が出るこの場所では、食事も出されていない二人に、更に帰る時間まで変えさせる様な真似をするのは酷というものだろう。
そう主張する隊長に、一も二もなく頷く『風』の職員達。直ぐに鍵が持ってこられた。
「こちらが二人の部屋の鍵です」
恭しく差し出された鍵を受け取り、先程案内された場所に赴く。
「二人とも、迎えに来た」
扉を開け放ち、言った言葉に、二人は笑って頷いた。
「お待ちしておりました」
「これでようやく晴れて自由の身、か」
島田が、詫びに何かしようかと言ってきたが、二人とも、とりあえず自分を捕らえた場所からは遠ざかりたい意思を見せたので、さっさと隊舎に連れ帰った。
そして、隊長室。入って、捕らわれていた二人にソファを勧めると、梨亜が直角に頭を下げて謝る。
とりあえず、積もる話は隊舎へ戻ってから、と言われていたため、ずっと言う機会を待っていたのだろう。
悲壮な覚悟を決めた表情で謝り続ける梨亜に、二人が慌てる。
――謝りながら更に困らせてどうするんだ、全く。
要が、ため息混じりに止めようとする前に、美奈が空腹を訴え、梨亜が用意に走ったため、謝罪はそこで終了になった。
「こっちの不手際で迷惑を掛けてすまなかった。結城を許してくれて感謝する」
「まぁ、しゃーねーだろ。次はもうないだろうし」
「梨亜ちゃんが無事だっただけで、安心しましたし」
一応、部下の代わりに謝った要だが、あっさり許される。二人の置かれた状況を考えると、そんな簡単に許していいのか疑問だが、当人達がそれで良しとしているので、甘えることにする。
「今、結城が食事用意しているので、食べ終わったらこちらの手続きに付き合ってもらうことになる」
今後の予定を口にした要に、美奈が質問する。
「それって、私もですか?」
「あぁ、五十嵐よりは少ないが、一応美奈も付き合ってもらう。協力者のことは公にしておいた方が、何かと都合がいいからな」
答えを口にしながら要は、当初美奈へは行う予定のなかった検査を受けてもらう算段を立てていた。
今回の件は、こちらが悪いため、口を挟む筋合いでもないし、今まで見てきた美奈の感じからして、何か問題ある人物ということもないと思う。
しかし、地球では使えるはずのない力で牢から抜け出し、自分の姿を変化させるというのは、普通ではない。
美奈の扱う力が一体何なのか、力を封じるはずの牢で何故その力を行使できたのか、少しでも知っておかねばならなかった。
――公には、とても出来んけどな。
この件が知られれば、美奈は原因究明まで、拘置されることになる。それこそ『北』のように、脱出など考えられない厳重な檻で、手足も拘束される事態となりかねない。
ことはそれ程までに重大な問題を含んでいる。
ただ、暫く一緒にいた要の感触では、美奈に限って言えば問題があるようには見えない。
今回、牢破りなんてことをしたのは、憎からず思っている梨亜が殺されるかもしれないという非常事態だったため、出来うる限りの無茶をしてみたようだが、これが梨亜も計人も無事で、自分のみ捕まっていた場合は、大人しくしていたという確信がある。
国家転覆とか狙う人物にも見えない。異世界の事情なんてどうでもよさそうな無関心さも感じるし。
下手に騒いで美奈を危険にさらすより、こっそり調べて、問題なしと分かったら、今回の件は闇に葬るのが一番だ、と判断した要は、美奈に夢守隊の入隊前検査を受けさせることに決めたのだった。




