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密かに計人に全てを丸投げされた美奈は、一人難しい顔をして考え込んでいたが、やがて顔を上げると問いかけた。
「隊長さん、どこか『北』か、それに似た名前で呼ばれる場所をご存知ないですか?」
美奈の見解は、こうだ。
梨亜が捕まったというのはこちらの勘違いであり、本人と連れていった人物達は、別に何も問題が起こったとは認識していない。
そこに、自分達と同じ様に梨亜は投獄されたと勘違いした人物がやってきて、自分達を放置しておいて暴れられても困るからと、拘束した。
だから、暫くおとなしく待っていれば、梨亜は自分で帰ってくるのではないか。
多少強引な理論ではあったが、間違いという証拠もない。それに、計人も美奈も、振り返ってみれば、梨亜が捕まった、と思い始めたのは、自分達を拘束した人物が言ってからだ。
それまでは、梨亜はどこかで何らかの用を済ませて帰ってくると思っていた。梨亜の態度は勿論、横柄な態度だったとはいえ連れていった者達も、梨亜に対してはどことなく丁寧に接していたように思える。
そんな美奈の主張に、要はこの世界の特権階級に相当する統括者のための施設を思い出した。
「『北の邸』か……」
「お待ちください。『北の邸』は、確かに『北』とは呼ばれていますが、面会には『北』とは、聞いたことありません。そもそも統括者は、一般人と面会なんてしたりしないでしょう?」
鳥谷が反論するが、要の「忘れたのか?」という言葉に、梨亜の兄が統括者であることを思い出す。
二人は、梨亜のいるかもしれない『北の邸』へ向けて歩き出した。
存在感と威圧感を感じさせる重厚な扉に近づく。
滅多にない訪問者に、少し硬めの声が掛かる。
「待て。ここに何の用だ?」
「統括者の城崎様にお伝え願いたいことがあり、こちらに出向いた。頼めるだろうか?」
いきなりの要請に、警備たちも戸惑っているのが分かる。全ての手続きを無視した形で、急に統括者を指名して伝言など、通常許されることではないからだ。しかし、発言者が要とあっては、無下に断るのも憚られる。夢守隊の一桁番隊隊長の名は伊達ではないのだ。
「内容による。まず、聞いてから判断させてもらおう」
要は逆らわず、頷いた。
「私の部下であり、城崎様の妹である結城梨亜が、指定保護下にいる地界人を放り出したまま行方知れずとなっている。地界人の情報によると、結城は『北』に投獄された、とのことだが、実際に行ってみたところ、おらず、『北』では結城の行方を関知していないと言われた」
「は?」
想定外の言葉に固まる警備に構わず、畳み掛ける要。
「我々も捜索は続けるつもりだが、地界人が不当に拘束され、『風』へと勾留させられてしまったため、早々に何とかしたい。城崎様は、妹君を大層可愛がっていると聞いているので、結城の現状はすぐさまお耳に入れておく必要があると思い、直接足を運ばせてもらった」
最初は、統括者の元に梨亜がいるかどうかを確かめるだけのつもりだったが、計人が、仲良い兄妹なら助けてくれるよう頼めばいいんじゃないか、という至極真っ当な意見を出した ――統括者がこの世界で権力を有するなら、助けてもらうのが一番速い、という単純なことに計人以外誰も気付かなかった辺りに、それぞれの焦りと動揺が見える―― ので、現状を伝えて、統括者が動くよう訴えかける方法に変更したのだ。
狙い通り、警備達は目に見えて焦り始める。結城の兄のシスコンぶりは、知らないでいられる者がないほど有名だ。
委細を説明するよう求める警備に、地界人が好き勝手絶頂に動き回っているのは伏せて、現状を説明する。
細かい質問や確認を何回かされ、直接話す必要があるかもしれないので外で暫く待つように言われて、待つこと少し。
『梨亜ちゃん!』
突然、手に持っていた美奈端末から黒っぽい塊が飛び出していった。




