八方塞がり
「あそこって、本当に『北』だったんだよな?」
要と鳥谷が移動している間、映像鑑賞をやめた計人が、美奈に話しかける。
「まぁ、隊長さん達が二人揃って、勘違いしているんじゃなければね。……でも、門番さんと話してた時、『北』って単語出てたし、多分間違いないでしょ」
「じゃあ、何で梨亜がいないんだ? あいつどこいった?」
二人して、うーんと首を捻る。
「梨亜ちゃんは『北』にはいない……」
「ってことだろーなぁ、今の感じだと」
「でも、私達が聞いたのは、確かに『北』だった」
「まぁ、凶悪犯罪者の入る脱出不可能な牢獄なんてもんが、そこらに転がってんなら、聞き間違いもあるかもしんねぇけどな」
「聞き間違い……」
呟いた美奈が、腕を組んで下を見つめる。
計人は、そのまま美奈が何か閃かないか、美奈の髪の毛先をくるくると弄りながら見ていたが、その内に要達の方が隊舎に着いたようだ。
「じゃあ、また映像流すねー」
ぺたっと美奈に張り付かれ、眼を瞑ると、先程の様に美奈端末の視点が頭に流れ込んでくる。
目の前では、要と鳥谷が美奈に負けず劣らず難しい顔をしていた。
「なぁ、これ俺もあっちに話しかけられんの?」
先程までは、どこに周りの目のあるか分からない外だったが、今は部屋の中。しかも建物内で一、二の権力者が揃って自分達と共にいる状態なら、ちょっとくらい何かあっても、どうとでもなるだろうと思った計人は、美奈に問いかけた。
「うん、普通に話せるようにする?」
「あぁ、頼む」
「了解」
美奈の言葉と共に、映像の中に二人の姿が映し出された。
「普通に話そうとすればいいのか? ――お、話せてる」
計人が話すと、映像の中から同じ言葉が少し遅れて聞こえてくる。
外国の中継放送を見ているみたいだ、などと思いつつ、計人は会話に加わった。
話は、主に『北』か二人を捕まえた奴らのどちらが嘘か、ということが焦点になる。
だが、見たところ、両者とも嘘ついているようには見えない。それが計人一人の意見なら怪しいところがあるが、一緒にいた美奈もそういうのだから、間違いないだろう。
「俺ら捕まえてるやつらに何か聞けねーのか?」
ふと思いついて聞いてみる。
自分達をここに連れてきた奴らが誰か知ってる可能性は高いし、どんな名目で拘留しているのかや、梨亜が実際にはどこにいるのか、何か知っているんじゃないかと思ったためだ。
だが、どうやら計人の知らないうちに、既に聞き取りは終了していたらしい。ここの責任者は、自分達を単純な不法侵入者と思っているとのこと。
「じゃ、あっちの牢のやつらも知らねーんじゃねーの? 梨亜が捕まってること」
先程、美奈がこちらが入りたくて入ったわけじゃないと言ったにも関わらず、それをまるっと無視するような世界なら、案外『北』とやらも、管理体制杜撰なんじゃなかろうか、と思っての発言だが、どうやら向こうは違うらしい。
「流石に、あそこはなぁなぁのまま、物事が進むことはないさ。人の一生が掛かってるんだからな」
まぁ、確かに、ちょっとの間逗留する場所と、一生出れないかもしれない場所で、真剣さが異なるのは当然といえば当然なのだが。
『北』が違うとなると、計人にはお手上げだ。他の場所を予想しようにも、天界自体を全く知らないのだから。
計人は、美奈に向かって匙を放り投げた。困った時の美奈への委任である。やる気がないのか、美奈を信頼しているのか、いまいち分からない計人なのだった。




