合流
一応、美奈本体は、呼ばれたりした際に反応出来るよう、常にうっすらと意識を残してはいたとはいえ、大部分を動き回る分身側に集中していたせいで、何となく視界が新鮮に感じられる。
と、隣からごんっと音がした。計人のいる部屋の方だったので、意識を集中させ、ネズミを作り出す。
『計人、呼んだ?』
何故か島田の姿はなく、部屋にいるのが計人と要の二人だけだったので、そのまま聞いた美奈だったが、途端に慌てた計人に摘み上げられる。もう片方の手に包まれるように乗せられ、そのまま隠されそうになるのを遮り、要が聞いてきた。
「美奈、か?」
要も、大分美奈に慣れてきたようだ。
自分達が既に知り合いであることに安堵した計人が手を開いたので、くいくいと手の上でバランスを取り、そちらに向き直る。
『はい、隊長さん。計人、この人は梨亜ちゃんの隊長さん。もう聞いた?』
ネズミナは当たりー、とばかりに人差し指(いや、四本しかないけど)をぴしっと突き出し、要に告げる。それと同時に、計人に簡単に紹介するも、計人はあまり納得していないようだ。
はて? と首を傾げると、不信感丸出しの声が返ってくる。
「さっき夢守うんたらとか言ってたぜ?」
――あぁ、成程。
美奈が夢守隊や、第三隊について知っていたせいで、計人も同じことを知っていると勘違いされたのだろう。
美奈が知っているのは、事前に梨亜に何でもかんでも聞きまくっていたからであり、計人が教わっていることは多くないことを要に告げつつ、計人には夢守隊が夢追人達の所属名であることを説明する。
ついでに、今知っておくと便利そうなことも付け加えようかとも思ったが、計人が、色々ややこしくて面倒くさくなってきているのを感じたため、必要なことだけ簡潔に述べるに留める。
『隊長さん達は、私達を助けてくれようとしているの』
「そのために、何が起こってるのか知りたいんだが」
続けて言う要に、計人はネズミナの頬を指でつんっと突いて背中をポンポンと叩いた。どうやら、肩を叩く代わりらしい。
「タッチ。頼んだ」
思ったとおりの受け流しに、ネズミナは尻尾を指に絡ませる。
『うーん、でも私はもう説明しちゃったし。計人、何か気付いたこととかない?』
聞いてみると、何を? という顔で見下ろされる。
『梨亜ちゃんが何で連れ去られたのか、とか』
「どっかの誰かが、北へお連れしろ~って言ってきたから、だろ?」
『うん、そ――』
うだけど、と続けようとした美奈は、自分のいる部屋がノックされたのに気付き、慌てて意識を戻す。
「――はい」
間一髪、半眼になって椅子に腰掛けている状態を見られるのは逃れられたらしい。特に驚く様子もなく、淡々と用件を述べる牢番の人に連れられ、隣の部屋へ向かう。
計人のいる部屋に入ると、計人は左の壁に両手をついた状態で固まり、要は椅子の脚を掴んだ状態でこちらを振り向いた。
「………」
牢番は、その光景に暫く固まっていたが、辛うじて、何をしているのか聞くことはなかった。世の中、知らないほうがいいことだってある、と悟ったのだろう。気を取り直して平然とした態度で要に告げる。
「失礼いたします。島田隊長の命に従い、地界人を纏めることとなりました」
要も、何事もなかったように椅子を手放し、鷹揚に頷く。隣にあった椅子と共に押し込まれた美奈は、ぺろっと舌を出して笑った。
「いきなりだったからビックリして、ネズミ動かすだけの余裕なくなっちゃった」
持ってこられた椅子に座った美奈は、要に向かい、ぺこりと頭を下げた。




