第一歩
要に手を引かれた美奈は、目の前に聳え立つ、自分の捕まっている建物を見つめた。
「ここで間違いないな?」
要の確認に、こくこくと頷いて返す。
「フォローはするが、なるべく目立たないようにしてくれよ?」
アンバーの強い瞳が美奈を射抜く。美奈は、先程の会話を思い出しながらこくこくと頷いた。
『それじゃあ行ってくるから、お前はここで待ってろ』
『嫌です。私も連れて行ってください』
『まだこちらも、何が起こってるのか掴めてないの。危険かもしれないのよ』
『見張ってなくたって、お前らも結城もきちんと助け出すから、心配するな』
『じっとしていられないんです。邪魔にならない様にしますから、お願いします』
最終的には、小さな子供(の外見)が両手をきゅっと合わせての、うるうる上目遣いで二人を陥落させた。無理矢理ついてきた自覚が大いにある身としては、これ以上の余計な手間をかけさせるわけにはいかない。
既に賽は投げられている。ルビコン川を渡ってしまったのだから、後は勝利を掴むしかないのだ。
強い決意を胸に、がちがちに強張った顔で歩いていた美奈は、一瞬、引かれている手がきゅっと強く握られるのを感じた。
はっとそちらを見るが、要は美奈の視線に気付かなかったかのように前を向いたまま。試しにきゅうっと手を強く握り返してみると、やっぱり視線は前を向いたまま、繋いでいない方の手で頭をぽんぽんっと叩かれる。その懐かしいようなリズムに自然と頬が緩んだ。
――うん、大丈夫。平常心平常心。
今の自分は要に預けられた遠縁の親戚、と言い聞かせ、ゆっくり歩いていると、牢屋の門番がこちらに気がついた。
美奈としては、小さい二人の子連れにしか見えないんじゃないかと心配したが、門番は、日の加減によっては銀にも見える金髪の特徴的な子供が誰だか直ぐに分かった。間違いようのない有名人なのだ。
「これは、木崎隊長! お疲れ様です!」
「鳥谷副長も! どうなさいましたか?」
二人とも、大物の急なお出ましに、美奈のことまで気にかける余裕はなさそうだ。美奈も、なるべく意識に入らないように、おとなしくしていると、中から新手が出てきた。
「よぉ、木崎。こんなところに何の用だ?」
にこにこと平気で呼び掛けるのを見るに、相手もそれなりの地位にいるものと思われる。
「島田か。なに、お前の監督っぷりをひやかしにな」
要が軽口で返すのに笑った後、要の後ろに隠れるようにしている美奈をちろっと見た後、打って変わって真剣な表情になる。
「……で、本当は何しに来たんだ?」
要は、さり気なく美奈を自分の影に隠しつつ、同じ様に真剣に答える。
「今日、うちに地界人二人が来る筈だった。それが、いつまで経っても、連れてやって来る部下共々来ない。どうしたのかと思っていたら……」
「……俺らのところに捕まってた、といいたいわけ、か」
島田は、苦い顔をして頭をかく。どうも首を突っ込まれたくはないようだが、立場はこちらの方が上のようだ。無事、牢へと入ることに成功した。




