質問
『あの、隊長さん?』
おずおずと話しかけてみると、予想に反して大して驚きもせず、少年は答えてくれた。
「なんだ?」
――訂正はされない、かぁ。
やはり、この少年は何かの隊の隊長であることは間違いないらしい。問題は、何の隊長か、だが……。
『いきなり捕まえたり、しませんか?』
どう聞き出すかを考えつつ、会話を途切れさせないように質問をすると、相手は大きく頷いてくれた。
「あぁ、大人しく質問に答えるなら、内容に関わらず、勝手に捕らえたりしない。約束する」
『それは、答えなければ、捕まえる、ということですか?』
「答えられない、と答えればいい」
二人? で話をしている間、少年を隊長と呼んだ女の人はピクリとも動かない。まぁ、鳥が喋っているんだから、驚くのは無理はないが。むしろ、すぐに慣れた少年の方が珍しい反応だとわかってはいるが、あまりにも長い間固まっているため、大丈夫なのか、少し不安になってきた美奈は、話を振ってみることにした。
『……そちらの方も?』
話しかけられた女の人は、はっと我に返ると、慌てて何度も頷いた。
「は、はい。捕まえたりしません」
二人の態度には、嘘は感じられない。美奈は、少し用心しつつも低い枝へと降りていった。
しばし見つめあう。
相手が話してくるのを待っていた美奈だったが、いつまで経っても用件を切り出そうとしない少年に、首をかしげる。
『それで、聞きたい事って何ですか?』
聞きたいことがあったから捕まえようとしただろうに、少年は美奈の言葉に少し考え、結局は簡単に聞いてきた。
「お前、何で喋るんだ?」
想定外の質問だった。やはり、喋る鳥が珍しくないわけではなかったらしい。が、本当は人間だからです、と言っても平気か迷う。……助けを求めるには、言う必要があるのは分かっているが。
『それは……、言葉が分かるからです』
迷った美奈は、一旦あやふやに返してみた。これで、怒り出すようなら、助けを求めるのは諦めた方がいいと思いつつ。
美奈の返事を息を詰めて聞いていた女はがくっと肩を落としたが、少年はやっぱり平然として、いまいち感情の変化が読み取れない。
「お前は、何者だ?」
『それは、言えません』
今はまだ、という言葉をつけようとしたところで、無表情のままぎろりと睨まれる。
――えーん、怖い。なまじ見た目が幼い分だけ怖いよぉ。助けて計人ー!
「何が目的だ?」
心もち低くなった気のする声が、またもや端的に聞いてくる。
『それも、言えません』
段々と逃げたくなってくる美奈だったが、今ここで逃げたら、捕まって鶏鍋にされそうな気がして踏み止まる。だって消されるにしても、消され方は選びたい。頭をかち割られてバラバラ死体なんて冗談じゃない。
びくびくしながら暫く問答をくり返していたが、どうも少年は、何か明確な目的があって捕まえたわけではなさそうだ。
なら、こちらは用があるということで解放してもらえないだろうか? 美奈は、いつでも逃げ出し始められるように構えつつ、自分が夢追人の隊長を探していることを伝えてみることにした。




