捜索
壁を抜け、空へ羽ばたいた美奈は、ひとまず大空から、辺りを見渡す。流石に不法入国者の身柄を引き受けるような場所なので、隣接して建っているような建物はないが、比較的近くに広がるのは、住宅地のようだ。
――うーん、子供も普通に近寄ってこれる場所かぁ。
別にそんな物々しさがほしいわけでもないが、犯罪者が逃げ出したら、すぐに住民達に被害がいきかねないこの立地条件に、ここは重犯罪者達のための場所ではないのだろうと当たりをつける。
それならば、自分がこうして好き勝手動き回っていることが、牢の人達にばれることはなさそうだ。最悪、力を使った途端にばれて、不従順として罪が重くなる可能性も考えて美奈は、ほっと息を吐いて、力強く羽ばたいた。
美奈は知らないが、美奈達の捕らえられた場所は、異世界からの迷い人を一時留め置くものである。異世界の力を封じる機能が建物自体に備わっているため、握力が強い、魔法が使える等、その世界にある力では抜け出せないようになっている。
今回、美奈が力を使えたのは、梨亜から夢追人としての力の使い方を習った美奈が行使する力は、天界人が使う力のそれとなっていたからだ。捕らえる対象が地界人なので、天界人の力は封じる必要がない建物だったのが幸いした。
天界人としては、偶々迷い込んだ地界人が、訳も分からず捕らえられた場所で、いきなり冷静に天界の力を理解し、行使しようとすることなんて想定に入れていなかったし、実際、今までも問題なかった。
計人や美奈が、天界のことを知っていてこちらに来たと知っていても、まさか壁抜けなんて技を使えるとは思わないのは仕方がない。天界の力を使うといっても精々、壁を破壊したりする程度で、それだと大騒ぎになって気付かないはずがない、と考えるのは極々普通のことだろう。
美奈のやっていることは、梨亜から教わった中途半端な知識を基に「だったらこれも出来るんじゃない?」と連想していった出鱈目が偶々上手く作用してしまった、イレギュラーなものだ。
流石に、「異世界の共鳴の要領で、自分にとっての異世界である現地の様子を探れるかも」と考え、実際に実行してみて、成功してしまう可能性を予期すべき、というのは無茶な注文だろう。
どこぞの間の悪い迷子の分まで運を使ったような幸運で、美奈は自由に動き回れる状況を手に入れていたのだった。
閑話休題。
どこかそれらしい建物でも存在しないかと飛び回っていた美奈だが、何せ、自分が目指すのがどんな建物か分からない。
――えーん、こんなことなら、目的地の情報も詳しく聞いておけば良かったよぉ。
どんな場所かは実際に見てからのお楽しみ、と、敢えて尋ねることをしなかった己を悔やみつつ、明らかに人が生活するには不便そうな建物から地道に調べてみる。
しかし、大体の方向すら分からない状態で探すには、天界は広すぎた。
報告に行くまでの時間と、観光させてもらえる時間の大体の予定から、門からそこまで遠い位置ではないと思うことにしているが、この世界に、一瞬で遠距離を移動する技術でもあれば、その想定も全く役に立たないものとなる。
必死に探して疲れ、少し休憩とばかりに一本の樹に止まっていると、次に調査しようと見当をつけていた近くの建物から、一人の子供が出てきた。




