迷走
舞台は戻って、牢屋の一室。
美奈は、椅子だけしかない小部屋で、一人おとなしく待っていた。計人とは離されて閉じ込められた美奈だが、そのことに不満はなかった。
――大丈夫、大丈夫。
先程の話し合いでは、上手く相手に現状への疑問を持たせることが出来た。あの調子なら、恐らく早い内に自分達は解放されるはずだし、梨亜ちゃんの上司はこの世界でかなりの発言権を持つ立場にいる。自分達の話を聞けば、梨亜ちゃん救出に力を割いてくれるはずだ。
そう信じて、じっと待っていた美奈だが、いつまで経っても解放の手が来ないことに、これで何回目か分からないため息がこぼれた。
幾らなんでも遅いのではないか。自分達の名前を隊長さんに確認するだけなのだ。早ければ数分、遅くとも一時間あれば十分だろうと思っていたのに、まだ何の音沙汰もない。
この世界に通信機器がないというなら考えられない話でもないが、普通に地球よりも高性能な通信手段があることは聞いている。
考えられることは、自分達が捕まえられねばならない裏事情を理解し、そちら側についてしまったか、私達にかかずらっていられない案件が出現したか、だ。
美奈にとっての不運は、監察日について知らなかったこと。相手が『梨亜ちゃん』についても『隊長さん』についても聞かないで飛び出していった時、最初は呆気にとられた。普通聞いてからいくものじゃないのか、この場合。
しかし、戻ってくる様子がないことで美奈は、相手は自分達の情報から、呼び出した相手についても理解した、または本日来ると申請している人物について簡単に調べる術がある、と判断してしまった。
それはある意味正しい。普通、分からないのに知っている人間がいる場所に聞きに戻らないようなことはないし、そもそも、入国者が皆通る門に問い合わせていれば、本日の申請者について知ることは出来た。
まさか、戻るに戻れない事情があるとは思っていなかったし、パニックに陥った彼が、入国時の申請先という簡単な問い合わせ場所をすっかり失念してしまうとは、流石の美奈にも考えつけなかったのだ。
かくて、問い合わせ先の迷子中という情けない事実は置き去りに、このままでは救いの手は差し伸べられない、緊迫した事態へと変貌を遂げてしまったのだ。




