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認識相違

「……ということになるんだけど、構わないかな?」


「お願いがあります」


一通りの説明を終えた係りのお兄さんに、美奈は間髪いれずに要望を伝える。


「ん、なんだい? 悪いけれど、規則は規則だからね。見逃すことは出来ないんだ。ごめんね」


表面上はすまなさそうに苦笑しつつ、子供に言い聞かせるような係りの言葉を軽く流し、言いたいことを言う。


「私達は、天界人に連れられてここに来ました。帰る時はその人と一緒に帰してください」


「……どういうこと? 君達、ここには迷い込んできたんだよね?」


案の定、何も知らなかったお兄さんは、美奈の話に違和感を感じてくれたようだ。


――これなら、少しはこちらの望みに沿って動いてくれるかな?


「いえ。隊長さんに会いに行こうと言われて、連れてこられました」


「……え?」


軽く混乱しかかっているお兄さんに気付かない振りして、構わず続ける。


「門のところで、入国手続きをしようとした天界人が連れていかれて、戻ってくるのを待っていたら、こちらに連行されました」


きっぱりと、事実のみを言う。眼を逸らしたら負け、とばかりにじっと相手の眼を見据えながら。


「え? でもさっき、こんなところ知らないって……」


相手がいい具合に困惑しているところに、計人からの無意識の援護も入る。


「ぁ? 初めてここくる俺らが、ここがどこなのか知ってるわけねぇだろ。元々、天界のどこに行くかまでは聞いてねぇし」


「……え? じゃあ知らずに迷い込んで、門の中に入っちゃったんじゃないの?」


「入るわきゃねーだろ、そこだけは入らずに待ってろって言われてんのに」


計人の、ふざけるなと言いたげな苛立たしげな態度は、二人の主張の信憑性を増してくれたようだ。うろたえた表情で美奈の方を向いたお兄さんに、美奈はこてんと首をかしげ、何か変? とばかりに答えた。


「連行されて初めて足を踏み入れましたけど?」


「……うわぁ」


頭を抱えてしまったお兄さんに、内心謝りつつも、更に追い討ちをかける美奈。


「あ。私達、今日来る事は報告済みなので、連絡してくれると分かると思います。梨亜ちゃん、隊長さんに美味しいお菓子用意してもらえるよう頼んだって言ってました」


さっきまで書類相手に難しい顔をしていた部屋の主も、流石にこちらの問題を無視できなくなったようだ。


「……向井、お前、ちょっと超特急で確かめて戻ってこい。出来れば監察前がいいが……、最後に局寄って荷物取ってこい。ちょっとした雑用で出てることにしとく」


「は、はい。それしかないっすね。いってきます!」


二人で何か話し合うと、向井と呼ばれたお兄さんは慌しく外へ出ていってしまう。その慌しさに、二人が呆気に取られていると、部屋の主が声をかけてきた。


「さて、何か手違いがあったようで悪いが、少なくとも君達の言葉が証明されるまで、君達を自由にしてあげることは出来ない。暫くの間、牢の中に入っていてもらえるかな?」


「どうせ嫌だって言ったって入れるんだろ?」


計人の言葉に、男は無言でにっこりと頷いた。

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