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次回で終わります。

「こんにちは。」

休日、買い物をしに久しぶりに外に出た。

「あっ・・・こんにちは。」

目の前に現れた一組のカップル・・もとい夫婦

なんでこの夫婦とカフェにいるのだろう・・・

挨拶をして終わろうと足を進めようとしたところで再び引き止められた。

にこやかに微笑む彼女から「お茶しませんか?」と、実際行く理由もないのだがそんな雰囲気をだすことなく近くのカフェまで連行された。

「あの、、紫苑さんって呼んでいいですか?」

4人掛けの席の向かい側に座る彼女に唐突そういわれた。

「あっ、はい。」

本当にどうでもいいそう思いながらも返事だけはした。

「ありがとうございます。私のことも可南って呼んでください。」

ふわふわとしたかわいい感じの彼女

彼はきっとこんな子が好きなんだろうな・・・そう思いながらぼぉーとしていた。

「あの、聞いても良いですか?」「あっ、はい。」

「昌人ってどんな感じなんですか?」

「えっ?」

「不躾にごめんなさい!

えっと聞いていると思うんですけど、私たち幼なじみなんです。」

「えーぇ」

「その・・・・想像つかなくて甘えさせてくれる様子とか?照れる様子とか?

結婚式の時に笑い出した彼を初めて見て本当に驚いたんです。」

「はっ?」

「プッ・・・お前なに聞いてるんだよ。」

「だってー気にならない?

いつも冷血なあいつのデレてるところ!!!」

「アホか。

すみませんね、こいつアホで・・・

んなのお前が知らない顔なんて沢山あるに決まってるだろうが」

この彼はきっと知っているんだろう・・・いつもの彼でない彼を・・・

「もぅ、そんなにアホアホ言わないでよ!!」

「ったく、お前が気付いてないだけだっつーの」

ストローもらってくるね。と席を立った彼女の背を見ながらボソッと呟くようにいった

「あっ・・・」

つい口から出てしまったのかそのことに気づき私の様子を探るように見てきた。

「大丈夫です。知っていますから」

なにが大丈夫なんだろうか。

本当は彼の恋人でもなんでもないのに・・・

自分で気づき彼に確認までしたのに他の人からしかもその相手からそのことを聞かされショックを受けないわけがない

「ごめんなさい、用事を思い出したので失礼してよろしいですか?」

うすうす自分でも気づいていた。あの日から蓋をしたこの気持ちに・・・

苦しい・・こんなに苦しい恋なんてしたくなかった。好きになっても彼には別の人がいる。わかっているのに・・・

「お土産ありがとう。

仕事ばかりじゃないかって心配していたから安心したわ。」

帰宅後、もやもやしたままぼぉーとしていたら電話がなった。

そうだった、沖縄からお土産を実家へと送っていたのだった。

「たまには顔見せに帰ってきなさいよ。」

両親に心配をかけているそんなことはわかっていた。ただ、年齢を重ねていくと帰省のたびに色々言われることが煩わしくなり年々、帰省回数が減りここ数年は帰省さえしていなかった。

「そうだね、帰ろうかな・・・」

素直にそういうと母は驚いたかのような反応を示したが気にしないことにした。

そして、きっと母と私の『帰ろうかな』の意味が違うこともわかっていたがあえて何も言わなかった。

ふぅー、やっと案件が落ち着きそう。

そう思いながら、パソコンの画面から視線を外し、一息ついた。

これが終われば・・・

そう思い、デスクの引き出しを開け、一番上にある白い封筒を手に取った。

ガシッ

いきなり後ろから何かが腕を掴んんだ。

それが人の手によって・・・それも彼の手によってと気づけたのは一瞬だったと思う。

「いきなり、何するんですか。びっくりしたじゃないですか。」

顔を後ろに向け思いっきり睨みつけた。

「これ何?」

しかし彼はそんな私に気にすることなく持っていた封筒をひったくった。

彼の手にある封筒の表には『辞表』と書いてある

「見てのとおりですが?」

何か問題でもありますか?的に私は言葉をはいた。

しかし、残念ながら彼の顔を見ることはできずうつむいたまま。

なんでよりによって見つかったのが彼なのか・・・安易に出すんじゃなかったと後悔しながら・・・

「そうか、わかった。ここからはプライベートだ。」

絶対に納得していない。そんな表情でわかったなんていわれても困る。しかもここにきてプライベートと来た。

まったく意味が分からない。プライベートだろうと私たちの関係は仕事と変わりはないはず

「なんでしょうか?」

そう思い、とくに気にすることもなく発した言葉に彼はとても不満だったようで

「プライベート」

いつもの感情のない表情と言葉・・・いや、のように見えるだけで機嫌が悪いとわかってしまった私は溜息を吐きたくなった。

「わかったから!なに?」

いったい何なんだとイラッとつぶやくように答えた。

「辞めてどうするんだ?」

こちらはあいかわらずの表情で言葉を発した。

「実家でお見合いとかするんじゃない」

もうどうでもいいと適当なことを口にした。

「お見合いとかねぇ~。」

へぇーと冷めた表情のままの彼

「なによ。」

思わぬ彼の言葉に驚きつつも嫌な感じの言葉にさらにイラッとした。

「あの時、そんな余裕なんかなかったからな。まぁ、元々予定にないことだったしな。」

彼のいうあの時がいつなのかはすぐにわかった。

私が逃げ帰ったあの時だ・・・

そして私に向けていた視線を下へとずらした・・・

視線の先が自分のおなかだとわかり彼の先ほどの言葉の意味が分かると急に恥ずかしくなり赤面した。

「なっ・・・・「ついでにいうなら、俺はお前を離すつもりなんかないからな。」

言い返そうとしたと同時に

「はっ?」

なにいって・・・

「続きは後だ。じゃぁ、これは預かっておく。話は以上だ。」

彼の手に渡ったままにそれをヒラヒラとふりながら滅多に見ない彼の笑顔があった。

しかし私は、彼の言った意味が分からないまま呆然としていて気づくことはなかった。


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