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遅くなりました。
『まぁ、よくあることだ、結婚する親友と幼馴染が俺のことまで心配してくれていろいろうるさいんだよ。適当にあしらっていたらうちの母親まで話がいって式に連れてこいと。ただ、結婚はもちろん恋人を作るつもりがない。だから、その辺を理解してくれる女を見つけていたが、思い違いだった。ギリギリでちゃんと付き合うか結婚するか迫れば俺が折れると思っていたんだろう。それが、花菱が聞いた電話だ。』
家に帰り、湯船に使ってさっきまで一緒にいた名倉さんの話を思い出していた。
結局、彼が本当に必要としているのは母親に見せつける偽物の恋人役ね。
『返事は明日までまって』
そういって私はお金を置いてお店を出た。
どうしたもんか。理由を話せと言ったのは自分だが、すべてを聞いたら協力しないわけにはいかないような状況ではないか・・・と自分の行動を呪った。
「はっ?水着?持ってきているわけないじゃない。」
もちろん夏の沖縄だ。考えなかったわけではない・・・どっちかというとわざと持ってこなかったのだ。
結局、翌日に私はこの話を受けた。お金はいらない。ただ。旅費代含め必要経費を払ってもらうことを条件としてもらった。
「別に遊びに来たわけじゃないからかまわないでしょ?」
空港からレンタカーを借り宿泊ホテルに着き荷ほどきをし始めた途端のことだった。
「だからって、この時期に沖縄で泳がないって意味不明。」
さっさと荷ほどきの終わった彼から出た言葉
「ほら、プールいくぞ」
彼はそう言ってひとつの袋をこっちにポイッと投げた。
私は怪訝な顔して袋を覗き込んだ。
「・・・・」
黙り込んだ私の反応を見てにんまり笑う彼
「俺の勘、当たったな。」
あいた口がふさがらないとはこのことだ。
サイズがちょうどよい気がするのは気にしないでおこう。
「夕食はバイキングなのね。」
プールで数時間過ごし、部屋でのんびりしていると無言の彼に連れてこられたレストラン
「好きな居酒屋メニューは知っているが他は知らないからな。」
案内されたテーブルにつきビールを二つ彼が頼んでくれた。
「俺の分も適当に取ってきてくれ」
早々とやってきたビールを一気に飲み込み言った。
「・・嫌いなものがあっても知らないから」
めんどくさそうな態度でも、一応自分のことを考えてくれての選択だったこともあり素直に席をたった。
行きの飛行機ではまったくといって会話もなく4日間も持つかと心配になったがプールで涼んでお互い慣れてきたのか思いのほか楽しく過ごしていることに安堵しつつ口元が勝手に緩んでしまうことに違和感を覚えながら食事を選んでいった。
「あら、昌人もここのホテルだったの?」
そろそろデザートでもと席を離れようと立ったと同時に声がかかった。
「・・何の用だ。」
彼は後ろから声がかかってもすぐにだれかわかったようで振り向きもせずワインを口に運んだ。
「なんて口聞くのよ!で、こちらが?」
そんな態度を気にもしないように彼の頭をはたいた女性
「花菱 紫苑です。はじめまして」
この人が誰かなんて彼との対応を見ていればすぐにわかった。
「はじめまして、昌人の母です。お会いできてうれしいわ。ごめんなさいね、私があなたを見たかったからこんなところまでひっぱちゃって」
性格は彼と正反対のようだ。と彼の母親の言葉に驚きながらも頭をフル回転させた。
「そんな、お気になさらないでください。昌人さんとも旅行に行きたいね。って話をしていたんですよ。それに、昌人さんの大切なお友達との時間まで一緒できるなんで嬉しいです。」
ペラペラとでる言葉に自分でうんざりしながらでも、表情にはださずに笑顔で答えた。
「まぁ、そういってくれるとこちらも嬉しいわ。明日は私たち離島まで行く予定だから次に会うのは結婚式ね。紫苑さんに会える楽しみが増えて嬉しいわ。」
長く拘束はしないわよと彼に視線を向けて私のほうへ視線うつした。
「ありがとうございます。」
遠くに見える彼の母親の背を確認し
「緊張した・・・・」
と息を止めていたがのようにはぁーっと息を吐いた。
そんな私を鼻で笑い彼は食事を進めていた。
「そんなことより、明日はどうする?」
けろりとしている彼。
「そんなことなわけないでしょ!!仮にも恋人(仮)のご両親に対して・・・・」
はぁーとわざとらしく大きなため息をはいた。
「まぁ、いいわ。あなただものね。明日か・・・何か候補はあるの?」
ぐいっと手元に持っていたカクテルを口に運んだ。
「おい、どういうことだよ!」
その話は終了とばかりに私は食事を再開し、彼は呆れたように口を開いた。
「ったく、別にホテルでまたりでもいいし、おふくろたちみたいに離島とまではいかないがレンタカーあるし、どこかに行ってもいいが?」
彼の言葉に、ボロが出ないようにhテルでまったりでもいいが・・・せっかく沖縄に来たのだ。
有名どころには行っておきたい。
「そうね、せっかくだから水族館にはいきたいかも。」
私の言葉に彼は特に反応を示すわけもなく
「わかった。」
とだけ返事をして彼も食事を再開した。
彼の反応に特に気にするわけもなく私はデザートを取りに席を立った。