書店とカッフェ カワイイ乙女との時間
そうだこんな日は読書をして凄そう
でも読書と言っても
自宅のベッドの上でインスタントコーヒーを片手
っていうのも何とも味気ない
それならば、
オシャレな人々で溢れかえっている代官山
そこのカッフェが併設されている書店で、
お気に入りの1冊を購入して
カフェラテを片手に
読書するというのはいかがであろうか?
しかしわざわざ代官山まで出てきて
読書するのだから
本当に本を読むだけだなんて頂けない
飛び切りのオシャレな服に袖を通して
度が入っていない伊達眼鏡をかける
椅子に腰掛けたら足を組み
本は片手(文庫本に限る)で読み
空いたもう片手でコーヒーを持ち上げ
まるでスープを飲むときのように
啜り音を立てぬように最善の注意を払って
皿の上に置く
こうすることで知的な男を演出し
あろう事か艶っぽさを垂れ流すことで
たまたま居合わせた乙女の心をも
奪い去ってやろうという
ジェントルマン特有の
いや メンズとして持つべき企みを胸に抱いて
代官山に降り立つ!!
ふむ…
街中では渋谷原宿みたいなあからさまなラビュラビュカップルは見当たらない
洒落乙なおねぇさんお兄さんがひしめき合っている
ここにいるカップルに限っては嫌みを感じないからいい…
そして お気に入りの書店へ足を運ぶ
澁澤 龍彥か
いや もっと気楽に読める本がいいなぁ
うん!?駄目だ 知的さを演出するには
佐賀のがばいばあちゃんを読んでいては駄目だ
しかし 小栗虫太郎も中井英夫も稲垣足穂も
今の気分じゃ無いなぁ
筒井康隆の【虚航船団】にしよう!!と
購入し いざ! カフェラテを購入し
カッフェの椅子に腰掛けた
足組み よし!!
本を片手持ち よし!!
コーヒーよし!!
後はカワイイ乙女…
むむむ
うむ
見当たらぬ…
足組み よし!!
本を片手持ち よし!!
コーヒーよし!!
後はかわいい乙女…
きたーーーーーー
良し完全な知的を装って本を読むんだ!
もはや周りの喧噪など聞こえぬ!
私は貴方の為に精一杯知的に本を読み
可憐にコーヒーを啜って見せよう!!
片手にした文庫本は今奇麗に次のページがめくられた
そっと コーヒーカップに手を伸ばし
未だコーヒーを静かに嗜み(この時眼鏡が少し曇って焦ったが気にしない)
また! 本を読む
どーだ!! 知的だろう
カワイイ乙女はコーヒーを飲みつつ携帯を覗いている
いずれそこの携帯に私の名前を絶えず表示させよう!!
さぁ!どうだ ここに貴方を華の用に美しく仕立てるジェントルマンがおりますぞ
数十分後
思いの外 小説の展開に夢中になってしまった
気づくとカワイイ乙女はコーヒーを飲み干し
携帯をしまうと すらすらさーとカッフェを出てしまった?
私はそれに気づく
そうか…あのカワイイ乙女ではこの魅力に気づくに及ばなかったか
それなりに高尚な心を持っていないとこの世界は理解できまい
そして私はコーヒーを手に取り
ぐいっと飲んだら
すっごく冷えてた