突然のゆり。
この季節になると、いつも思い出す。
あの子と過ごしたキラキラ、純粋に輝いていた日々を。
思い出したくないのに・・・11月ごろになると、毎年―。
私の恋は、突然、意味わかんなくなるほどに突然のことだった。
始まってほしくも無かった、だけど・・・始まってしまった。
女の子に、恋を。
しちゃいけないって、知ってた。でも、それはあまりに突然で。そうなってしまうような兆候さえなくて―気がつくと、あの子を見つめていた。
かわいらしくもたくましいあの子の背中。やわらかにゆれる髪。
何度見ていても、あきない。
「そらぁー」
「なに?」
私を呼んだのはあの子―愛である。
「ちょっと教えてほしいんだけど・・・」
「どこ?」
「この問題・・・」
愛がよってくる。私はドキドキしていた。自然とだ。顔も、赤くなってきている。
愛の髪が私の顔に触れてしまった。くすぐったい。チクチクする。でも、嬉しい。
「ちょっ・・・くすぐったい。」
「あ、ごめん。」
愛の方を見た。ほんとに、かわいい。好きだ。見れば見るほど、近づけば近づくほど。
「で、どこだっけ??」
「ここ。5番の問題。」
「えっとそこは・・・」
私は決して成績がいいわけじゃない。でも、英語だけには自信があって、誰かに教えてと言われることが多い。
「あ、なるほどね。ありがと。」
「・・・!ど・・・どうってことないしっ。わからない問題あったら、また、さ。言ってよね。」
愛の―好きな人の言う「ありがとう」という台詞には、いつもドキドキする。その笑顔に。その声に。めったにありがとうを使わないのに、それを言ってくれる照れくさそうな言い方に。
これが、続けば良かったのに。私はいつも、考える。
このあと、私は気持ちを抑えきれなくなり、告白をしてしまったのであった。
会話だけしか思い出せない。風景、状況、あの子の表情。
あの日、こんな会話をした。
「ねぇ・・・愛ってさ、好きな人とか、いんの?」
「・・・いるよ。」
「え?まじで?私も。」
「でも、絶対そらには言わないから。」
「なんで?」
「笑わない?真面目にきける??」
「うん。」
「その人はね、いつも私に英語を教えてくれるの。」
「ほぅ・・・」
「髪の毛は短くて、目は小さいけど、なんていうか・・・目力がある。」
「はぁ・・・」
「わかった?」
「全然。」
「かわいいほどに鈍感ね。」
「え?」
「そらだよ。」
「え?」
「そらなの。」
「え?」
「私の好きな人は・・・そらなの。」
「えっと・・・私?」
「うん。」
「うっそ。」
「だから言ったじゃん。真面目にきいてよ。」
「真面目だよ。真面目だけど・・・信じらんない。」
「女の子に恋って・・・だめだよね、うん。知ってた。拒否されるって、わかってた。でもさ・・・今しか言えないよ・・・。ねぇ、そらは?そらは誰が好きなの?どうせ勝てないってわかってるけど・・・せめて教えて。お願い。」
「・・・。」
「お願い・・・」
「愛だよ、クソッ。」
「ほんとに?」
「まさかって、思うじゃん。今、すっごいびっくりしてる。だって・・・同姓恋愛とか・・・さ。叶うと思わないもん。」
なんで、ああなってしまったんですか?
愛、どうしてなんですか?
私は罪を犯してしまいそうで、君を見るたび、おかしな気持ちになって。
突然のゆりは、私を悩ませました。
あれから日が経って。
私は―愛の下にいました。
「こんなの・・・したこと・・・あるの・・・?」
「ないよ・・・でも・・・したい。」
壊れてしまいそうだった。
別にここまでしなくても良かった。
私は目を閉じ、身をまかせた。
何をされているのかはわからない。
でも、愛の髪が触れるのと、いつも愛からする甘い香りだけは、確かに感じられた。