とある男子校生が生き抜いたパンデミックの話
あれからどれだけ経っただろうか。
1週間?2週間?はたまた5日?
最近は夜もまともに寝れなくなった。
多すぎる。
今もまだ雪だるま一気に増えているだろう。
いや、逆に増える媒体が少なすぎてもう増えていないかもしれない。
あいつら・・・・は共喰いもするから減っている可能性の方が高い。
長居しすぎた。
あいつらが来る。
どうして。
どうしてこうなったんだ……
◆◇◆
その日、俺は親友と話をしていた。
どういう女優が好きとか。
そういうくだらない話をしていた。
そんな時、学校の外が真っ暗になった。
だが、学校内はよく見える。
親友はパニックになった。
俺は内心パニックになっていたが見目は落ち着いていた。
その時、ピンポンパンポ~ンとなんとも気の抜けた音が流れた。
そう、放送が流れ始めたのだ。
「あーあーマイクテスマイクテス聞こえる?聞こえるねー」
中性的な声だった。
男にしては高すぎる。
女にしては低すぎる。
狂気的でもあった。
狂喜を孕んだ声だった。
その声はこう言った。
「えー今からお前らの中から1人えらびまーす。
えーと、まずボクが嫌いそうな奴は論外でーす。
殺しまーす。
でー今からボクが嫌いそうな奴に仕込んだコンピュータウィルスを起動しまーす。
ここでいうコンピュータウィルスっていうのはーコンピュータにかけるウィルスじゃなくてー
人に感染させるコンピュータ入りの生物兵器のことねー。
ちなみに今のところ起動後の致死率100%だよ〜。
でも空気感染はしないから安心してね〜。
それでー起動したらー即死、からの強制蘇生。ゾンビみたいになりまーす。
ゾンビは脳みそを使い物にならなくすれば死ぬよー。
フィクションのゾンビみたく噛まれたら感染。お前もゾンビの仲間入りだよー。
それでー最後の1人になったら終了ー。
ゾンビたちは一斉に死ぬよー。
武器はボクが良さそうと思った人の右ポケットにあるよー。
それにいろんなところに放置されてるからー。
じゃ、スタート!」
その瞬間俺の親友は死んだ。
俺の右ポケットには拳銃と弾薬があった。
拳銃の撃ち方は見ればなんとなく分かったし、あってた。
その銃で俺は親友を殺した。
罪悪感は、無かった。
◆◇◆
それから学校内を探索した。
最初にあった人は教師だった。
メンタルがなんかクソ強かった。
多分すでに十数人の教え子を殺してるのにピンピンしてた。
武器は技術室のハンマーの柄にロープをくくりつけたものだった。
ぶん回してた。
その後は多分死んだ。
なぜなら、後日もう一度見に行った時にその武器を持ったゾンビがいたから。
次に出会ったのは隣のクラスの集団だった。
15、6人いた。
持ってた武器はナイフか拳銃だった。
1人だけ錐を投げてた。
たくさんあるしな。
メンタルは崩壊寸前だった。
人数で補ってたけど。
あいつらは俺が殺した。
1人がゾンビになった瞬間精神が壊れたから。
殺した。
あとは…まあみんな殺した。
最後の1人になれば生き残れるのだから。
◆◇◆
今日であの日から1週間らしい。
長かった。
分かった理由は殺したゾンビがつけてた腕時計だ。
CASIOのやつだった。
全校生徒1260人。
教則員含め1370人
何人が死んだだろうか。
もう1週間経ったのならあと多くても300人くらいだろうか。
少なく見積もると50人くらいになりそうだ。
……来た。
足音を聞くに15はいる。
拳銃の残弾数を確認する。
4。
少ないな。
替えのカートリッジを用意。
ハンマーを倒す。
7…
6…
5…
4…
3…
2…
1…
発射。
ダンッ!
1人の眉間に命中。
流石に死んだ。
783。
あいつらには恐れが無い。
だから構わずかかってくる。
殺す。
ダンッ!
ダンッ!
2発命中。
1発は頭。
もう1人は足。
今日は運がいい
784。
1本ナイフを投げ、足を負傷したゾンビを絶命させる。
785。
残りは…13人。
ゾンビは足が遅い。
ある程度定期的にバックステップを踏んでおけば襲われることはない。
……今回みたいな場合を除いて。
後ろから小さいけど足音がする。
遅い。
確実にゾンビだ。
だけどこっちに集中しないといけない。
距離と数が確認できない。
前にナイフを投げ、後ろに適当に銃を撃つ。
狙いは定めなくていい。
ダンッ!
命中。
どこに命中しただろうか。
ナイフは頭に当たる。
やっぱりナイフが一番使いやすいな。
786。
銃の残弾がなくなった。
別のマガジンに付け替える。
スライドを引き、即座にハンマーを倒し構え撃つ。
音速を超える死神が無慈悲な衝撃を響かせる。
俺らしくもないポエムだな。
ナイフをゾンビの脳髄に投げつつ銃を連射する。
787。
789。
790。
792。
残りは6。
後ろは…残り7。
多い。
背中の191を取り出す。
弾があまり落ちてないから使いたくないが仕方ない。
残弾数は確か25?
20はあった。
セーフティを外しレバーを倒す。
連射であることを確認し掃射する。
◆◇◆
805
生き残りは…いない。
俺は歩き始めた。
ずっと同じ場所にいるとまたあいつらが寄ってくる。
あの放送をした奴は何者なんだろうか。
コンピュータウィルス…
どういう技術なんだろうか。
…それもじきにわかるか。
腹が減ったな。
ポケットからカロメを出して食う。
カロメはそこらじゅうに落ちてるから安心だ。
水は貴重なのだが。
階段についた。
確か…この階段を登った階に放送室がある。
階段は危険だ。
なぜなら死角が多い。
足音が聞こえなくても注意しないといけない。
拳銃のセーフティを外し、いつでも打てるように準備しておく。
しゃがみ、ゆっくりゆっくり。
音を立てないように歩く。
…いる。
…いや、これは…生きてる?
生きている人のようだ。
2日ぶりぐらいか?
相手が敵対する可能性も考え、銃を構えたまま歩く。
…3。
…2。
…1。
…
「!」
…銃は必要なさそうだ。
◆◇◆
「よかったっス」
「そうだな」
部活の後輩だった。
部活でエースと称えられていたことからある程度は戦えると思っていいだろう。
武器は…少し大きめのダガーか。
「近距離で闘うのは危なくないか?」
「わかんないっス。いつも気づいたら戦闘が終わってるんっスよ」
「そうなのか」
「気づいたらいっしょにいた人もどっか行ってたりして辛いっス」
戦闘時には大きく人が変わる性格なのだろうか。
異世界にでもいきそうだな。
…この状況も異世界みたいなものか。
「先輩はその背中に背負ってるでっけーのがメイン武器っスか〜?」
「いや、こっちの拳銃だ。あとナイフを投げてる」
「先輩ナイフ投げ得意っスもんね。スッゲー遠いところの的にピタっと決めたりしてたっスよね」
「そんなこともあったな」
実際昔はみんなに結構披露したものだ。
危ないからやめろと言われて以降は披露はしていないが。
それでも、家でよく練習しているから腕は鈍っていなかった。
家で怠けて練習していなかったら今頃ゾンビの一体として狩られていただろう。
ナイフ投げをやっていて本当に良かったな。
「そういえばお前学校をずっと休んでいなかったか?」
「確かに休んでたっス。でも気づいたらここにいたっス」
「そうなのか」
「先輩は……はぁ…憂鬱っス」
「来たようだな」
「そうっスね…」
1、2、3、4、5、6、7。
7体か。
少し時間がかかりそうだな。
「うあっ……」
ん?
死んだか?
でも周りには人もゾンビもいない…
「あーあー。大丈夫そうだなぁ」
サクッ
806。
一回近付いていたゾンビをナイフで殺しそいつ・・・に問う。
「目つき、声、雰囲気、立ち姿。お前は誰だ?」
「あー俺ぇ?俺はぁ…俺だな。それ以外に言いようがねぇ」
「……二重人格か」
「おっ、ビンゴ!」
二重人格ならさっきあいつが言っていたのもよくわかる。
ゾンビを倒す時は別の人格になり変わっていたんだろう。
ゾンビ映画では精神的ショックから身を守るために二重人格になってしまう人が多いがそういうことだろうな。
「さて…行くかぁ」
ブレる。
消える。
そして現れる。
動きが見えない。
「おーおーいつもより汚ぇゾンビたちだなぁ?」
喋る。
ブレる。
消えたと思ったら現れる。
「そんなに汚ぇ奴らはぁ…」
ゾンビたちから鮮血が溢れ出る。
「切り刻まれても仕方ねえなぁ!?」
「甘いぞ」
そいつの背後に迫っていたゾンビを射ち殺す。
807。
「おー。ありがとうなぁ」
「ああこちらも1人では難しかった。ありがとう」
「どういたしましてだなぁ」
それにしても…
「あの動きはどうやって再現してるんだ?人体のみでやってるとなると相当無理があるはずだが」
「脚力っと言いたいところだが、これだなんだなぁ」
そうやって右手首にある小さな装置を見せてくる。
「ワイヤーか」
「よくわかったなぁ」
「動力はどうしてるんだ?」
「ゼンマイだぜぇ。少しダセえよなぁ」
「そうか」
そいつは左手を斜め前に突き出す。
ブレる。
俺は真後ろにナイフを突き出す。
「!……よくやったなぁ。これを避けれた奴はいなかったんだがなぁ」
ナイフはダガーの柄を弾いていた。
こいつの話を聞いた時からどっか行くのはおかしいと思っていたのだがやはり殺していたようだな。
「ちょっと耳がいいんだ」
「そうかよぉ」
ブレる。
右、右斜め後ろ、左斜め前、上、左上、左、右、前上、後ろ足下。
俺は靴に仕込んである仕掛けを使う。
刃が、飛ぶ。
ザクッ
「あぁ?クソがぁ…痛ぇな…なんだ…?」
「靴に仕掛けてただけだ。少し靴が高かったのが見えなかったか?」
「見えなかったなぁ……俺はぁ…死ぬか?」
「俺以外の誰かが来なかったら死ぬだろうな」
「そうか…」
道連れにでもしてきても大丈なように身構えていたが無駄だったか?
いや、元の人格に戻られたら面倒だ。
「じゃあな。絡楼 玲。俺はお前を尊敬していた」
銃を構え、セーフティを外す。
そいつは今まで見た中で一番の笑みを浮かべて言った。
「死ね」
引き金を、引く。
…808。
◆◇◆
進む。
歩き続ける。
今、この学校があるのはどこなのか。
どうやって武器や食料を散らばせたのか。
目的は何か。
疑問は尽きないがそれもじきに分かるだろう。
放送室に、着いた。
191の弾薬は大量にある。
もし罠で、ゾンビが大量に詰まっていたとしてもある程度は大丈夫だ。
ここに誰もいなければあとは学校内を散策し続けるしかなくなるが。
3、2、1、オープン。
ガチャ
…セーフティを外しレバーを引く。
引き金を引き…連射。
ダダダダダダッ
前のやつはほとんど狩れた。
だが、後ろのやつは半分も狩れてない。
マガジンを取り替え、もう一度レバーを引く。
引き金を引きつつナイフを取り出す。
4本投げ、4体狩る。
…効率が悪い。
191も残弾が切れた。
「仕方ないか…」
左の腿から1つだけ持っている手榴弾を取り外す。
ピンを抜き部屋に投げ込む。
爆発する前に扉を閉め、押さえつける。
ドンッ
あれだけの密集地帯だ。
相当数死んだはず……
だが、油断はできない。
少し待ってから開けよう。
◆◇◆
その間俺は外に出ていたゾンビを撃ち殺したり、落ちていたカロメを拾ったりした。
数時間経っただろうか…
もう中にはいないだろう。
…いや、言い訳だな。
ただ俺が怖かっただけだ。
ドアを開ける。
ガチャ。
部屋の中に一気に酸素が流れ込む。
鼓膜を破るほどの大きな音が鳴ると同時に目の前が真っ白になる。
ドアが吹き飛び、俺も壁に叩きつけられる。
痛烈な痛みが背中を貫き、頭を打つ。
意識が朦朧とする…。
俺は…死ぬのだろうか。
まあ、当たり前だ。
何百人の命を奪ったのだから。
玲の望んだ通りになったな…
意識を完全に手放す寸前、何か音が聞こえたような気がした。
◆◇◆
んんぅ…。
寝ていたのか…?
周りにゾンビは…。
ゾンビっ!
「俺はどんだけ寝てたんだ?襲われたあとな…痛っ」
痛みがした足を見ると包帯で巻かれていた。
全身を見ると足以外にも腕、腹、頭にも包帯が巻かれていた。
腕には点滴も刺さっている。
周りを見るとそこは知らない壁だった。
「ようやく起きたんですね。いろんな人が心配してますよ」
「‥ここはどこだ」
「病院ですよ。察してください」
俺は‥生き残ってしまったのか…
他の生存者は…いないだろう。
俺が生き残ったということは俺以外は生き残っていないということなんだから。
「俺はこのあとどういう生活を送ることになる?」
「警察に事情聴取を受けて、入院生活を続けて、退院後は「人殺し」と罵られることでしょうね」
「だろうな」
俺は生き残るためとはいえ殺しすぎた。
まともな生活を送ることはとっくに諦めている。
ネットで顔は晒され、実質生き地獄だろうな。
「さて」
ナイフを胸に突き立てられる。
「死んでください」
「…ここは病院だぞ」
「わかっていますよ。でも、でも!」
「自分の子供を殺した男を目の前にして!何もせずにいられるわけがないでしょう!!!」
「そうなのか」
「私の息子も殺したんでしょう!どうせ顔も覚えてないでしょうけど!」
「……お前苗字は?」
「は?山原ですが?」
「ああ。山原か。俺が七番目に殺した人間じゃないか」
「!?何をでたらめを!」
「覚えてるぞ。珍しく生きてた。精神は壊れてたけどな。ゾンビが増えられても困るからな。殺した」
「生きてたから印象に残ってるだけでしょうに!」
「いや、判別できるやつは覚えてるぞ。898。それが俺が殺した人の数だ」
「は?そんなに。そんなに覚えれるはずがない!」
「これでも全国トップレベルの進学校で成績トップだった男だぞ?舐めるなよ。898人の名前と顔?簡単に覚えれる。覚えないといけないんだよ」
事実だ。
殺した人の名前と顔ぐらい覚えとかなくてどうする。
覚えてても意味がなかったとしても。
それぐらいの自己満足ぐらいやらないと殺した俺の気が済まない。
カランッ
「嘘…だろ」
ガラッ
「すみません警察の…」
警察が来たか。
大量殺人を犯した男とそのそばに佇むナイフを落とした男。
この状況を見れば大体は察せるだろう。
「山原春人!19時43分!身柄拘束!」
◆◇◆
その後、警察からの事情聴取も受け、入院期間も終わり、晴れて退院した。
「久しぶりの外だなぁ」
行かないといけない場所が何個かある。
だが、行かない。
今はただ、この幸せを噛み締めていたい。
それに、少し話さないといけない人もいる。
「ねぇ、先生?」
「なんだ?」
俺の後方5m付近にいる俺のクラスの担任の先生。
彼女はあの学校が転移したあと一回も見ていない。
「勘違いしてると思うが私はあの日出張に行っていてな?学校にはいなかったんだ」
「へぇ。じゃあ、なんで玲は学校に来ていた?」
「!?」
軽く考えればサルでもわかることだ。
玲は休んでいたのに学校に飛ばされた。
俺は教師を殺している。
つまり、教師は対象で、対象であれば学校外にいてもあの学校に転移させられるということになる。
なのに、こいつがここにいるのはおかしい。
なぜなら、俺が生き残る唯一の方法は俺以外の対象者全てを殺すことなんだから。
「でしょう?先生」
「…学校外に居た者を転移させたのは失敗だったな」
「そうですね」
「それで、私をどうするんだ?」
「聞きたいことがあります。あのウィルスはなんですか?」
「あれは私の能力全てを注ぎ込んだ何かを作りたいと思った結果だよ。君も思ったことはないかい?「自分の能力を全て使い切りたい」と。人間の能力は限界がある。なら自分だけでも、限界を知りたくなるのは当たり前だろ?君は私の最高傑作だよ。あの、死と隣り合わせの環境を精神を壊さずに生き残った。私が見てきた中で一番の逸材だ。あの環境は相当なスペックが求められる。運、五感、知識、精神力、他にも様々だ。君はそれら全てを兼ね備えた人間だよ。もはや兵器と言ってもいい。君も同じことをするよ。私と同じことを。なぜなら君も、「天才」だからだ。天から才を受けた者。そんな人間にはこの世界は退屈すぎる。君は私と同じだ。この世界に退屈しているという意味ではね。暇なんだろう?この世界が。私はこんな暇な世界を楽しみたかっただけだよ。どういう結果になろうとよかった。私は十分、楽しめたからね」
…俺も思ったことはある。
この先生と同じことを。
でも、違う。
その思想は違う
「先生、確かにこの世界は退屈だ。それは事実だ。でも俺はその退屈の中に生きるのも楽しめるよ。どんなものも楽しめる。見方や、生き方も変えなかった先生にそんなことをする資格はない」
「退廃的だね」
「それも美しいと思う」
俺が呼んだ警察が先生を捕縛する。
こうなることも先生はわかっていたのだろうか?
いや、考えてなかっただろう。
俺だったら一番楽しいことをやる時に後先考えないと思う。
一番楽しいことなんて、ないけど。
「じゃあね先生」
「さようなら私の最高傑作。またどこかで会うことを、願っているよ」
191というのは正式名称を191型5.8mm自動歩槍というアサルトライフルです




