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第二話 不憫令嬢は決意しました



はあ…。


私は自室の机の上で項垂れていた。




理由は、転生先が前世でやり込んだ女装ものBLゲームで、不憫公爵令嬢だったからだ。





絶叫した後、ルノーにはやっぱり気分がすぐれないから、と伝えて一人にしてもらった。

眉を寄せ、本当に大丈夫ですか?と念入りに詰め寄る彼を半ば強引に自室から出し、私は早急に紙とペンを走らせた。





BL恋愛ゲーム『平民の秘め事』


女装がデフォルトの主人公を操作し、学園生活を送りながら様々な事件を解決したり、苦難を乗り越えたりして攻略対象者と愛を育む学園ファンタジーもの。


攻略対象者→5人+隠しキャラ2人 計7人


基本的に魔力は王族・貴族が生まれながらに宿す天賦のものだが、ごく稀に平民にも宿ることがある。(ザ・王道)


属性は、火・水・風・土・光・闇。

※闇魔法は禁忌。


魔力は天賦のものだが、鍛錬を重ねるとより洗練された魔法を使う事ができる。


魔力の本質は、人の思いの強さ、だとか(諸説あり)


主人公→ユア・リーファル

変声魔法と自分の容姿を生かし、両親の雑貨屋の集客をしていた。16歳。肩まである白銀の髪色と薄桃色の瞳。平民で珍しく魔力がある。

"魔力ある者に正しき導きを"がモットーの王立魔法学園なのでユアも否応なく入学する。光属性の魔法が使えるが、分かるのはまだ先。


攻略対象①→リオルド・アルカルト第一王子

火属性の魔法が得意なハイスペック王子。16歳。深紅の髪色と瞳。ユアに一目惚れをする。ユアが男性だと知っている。ここ重要。

幼馴染兼婚約者であるリナリーへ入学式後に開催された舞踏会で婚約破棄を言い渡す。


ここまで書いてペンの動きが止まる。


「……改めてこの王子、なんて事してくれてるの。」


思い出したら腹が立ってきた。卒業式の舞踏会ならそこでさよなら〜って颯爽と去ることができただろうに。


まさかの“入学式”の舞踏会で言い渡すなんて!


せっかくの学園生活デビューが最っ悪の状態からなんてあんまりだ!


しかも、ルノーの話によれば私は丸二日眠っていたらしい。入学式後から2日も出遅れるとか笑えない…。何このハードモード。



はあ…。


リオルドルートは、ユアを男と知った上でまっすぐに愛し通す純愛な感じが好きだったんだけどなあ。正直、ゲームだから、でさらっと婚約破棄のくだり流してたけど…実際にその立場になるとたまったものではない。



そして何より厄介なのは、この私ことリナリー・アーノルド・ラタン。通称・不憫令嬢。


何故、“不憫”なのか。


それは、婚約破棄宣言をされた後、彼女は…

リオルドルートだと嫉妬に狂い、歴史に名を残す“悪役令嬢と成り果て”処刑か国外追放をされ、

それ以外のルートだと主人公が困った時には手を貸し、時には諭し、彼らの恋を助ける“サポートキャラと成り果て”、ラストには身を挺して彼らを守り、命を落とす


そんな、シナリオの都合に振り回されるキャラクターだからだ。



はあ…。



神さま、転生させるにしてももっと良いところはなかったのでしょうか……。


肩を落とし、再び項垂れてしまいそうになった時。


ふと、目の前の机上の本棚が目に入った。そこには整然と魔法学や薬学、歴史学、法学など多ジャンルの本が並んでいる。

その手前には、幼少期のリオルドから送られた赤いおもちゃの宝石がはめられた指輪がガラス張りの小物入れに大切に保管されていた。



…彼女は、リオルドのためにこんなに勉学を頑張って、そして、こんなにも想っていたのに。




キュッと心臓が締め上がる。




「本当……可哀想で………不憫なキャラ。」



誰に聞かせるでもなく、ただ呟く。


窓を見ると、昇った月は霞がかっていた。


視線を戻し、今度は自身の腰まである透き通る水色の髪を一束掴み、見つめる。


ある決意を胸に秘めて。


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