Prologue 3
「ここは……どこ?」
さっきまでStellaと一緒にいたはずなのに、いつの間にか真っ暗な世界にいた。
ここは、本当に現実の世界なんだろうか?そんな疑問が頭をよぎっては消え、よぎっては消える。
ただ1つだけ理解できるのは、ここが私と繋がりのある世界だってこと。
何かしたいけど、真っ暗なこの場所では下手に動くこともできなくて。どうすることもできないまま、さっきStellaに言われた私の音について考えるだけだった。
【……ca】
私の音って、なんなんだろう。Spicaとして、歌を歌い始めてから私は実はStellaの曲だけを歌い続けてきた。もちろん他の人の歌も好きだけど、歌うとなるとStellaだけ。
コメントでまるでStellaみたいだ、なんて言葉ももらえて嬉しかったけれど、それはあくまでStellaという存在がいてこそもらえるもの。
【……pica】
それだと、私はあくまでStellaの真似っこでしかなくて。私はStellaに憧れて歌を始めたけれど、Stellaになりたいわけじゃなくて。
じゃあ、私はどうなりたいの……
【Spica!】
「!!?」
深い思考の海に堕ちこんでいた私の耳に響くのは、とても聞き覚えのある声だった。いや、これは……
「な、なんで私の声が?」
【それは、ここが貴女の心の中だから。私は貴女で貴女は私】
「ということは、今聞こえてるこの声は私の心の声ってこと?」
【理解が早くて助かるよ】
「なんだか私自身と会話してるなんて不思議な感覚だね」
【普通の人間は自分の心と対話することなんてできないからね。できるのは今の世界だと数人、かな?】
「そう、なんだ。じゃあ私って今すごいことをしてるんだね?」
【そういうことになる。ま、さっきまで話してたStellaも、いや、Stellaは心と対話を通り越して心を言葉にして表に引き出せる存在だけどね】
「本当にすごい人なんだね、Stellaって」
【そうだね。でも君はSpicaであってStellaじゃない。憧れるのはいいことだけど、いつまでも憧れと比較していては前に進めないんだよ?】
そんな私自身の言葉に、私がハッとさせられるなんて思ってもみなかった。
「……そっか。私、ずっとStellaの背中を追い続けてた。Stellaになりたいわけじゃなくて、憧れを持っただけなのに、いつのまにかStellaの二番煎じをし続けてた」
【うん】
「その先にStellaともし同じになったとして、それは私自身ではないのに」
【そうだね】
「私は、私自身の歌声を世界に、あの広い空の向こうに届けたいんだ。そして、私の歌でみんなを明るく照らしたいんだ!!」
【そう、それが私の……Spicaの原点だよ。貴女はいずれこの世界を照らす大きな光になる。おじいちゃんもそれを望んでるはず、貴女自身の歌声で世界を照らすことを】
「うん!ありがとう、私!!」
【私も貴女とお話しできてよかった。また、悩む時があったらおいで?私はいつだって貴女と共にあるんだから】
「わかった!!」
不思議な時間だった。私の中の自分と対話するなんて、他の人に話したところで何を言ってるんだと聞いてもらえないだろう。
でも、確実に私の中には頼れる私がいて、今日初めて顔を合わせたけれど、他人とは思えない憧れの存在が近くにいて。
それだけで私はどこまでも前へ進んでいける気がした。
『Spica……とても深い思考の海にいるのね』
Stellaがそう呟きながら星空を見上げていた時だった。
辺りに吹いていた風が止み、空を駆ける流星群の光が突然増し始めた。
「Stella!!待たせちゃってごめんなさい!!」
『……ふふっ、Spica。さっきまでとは違う顔つきになったね?』
「え、顔変わってる?」
『ううん、そういう意味じゃない。貴女の中に1つの確かな芯が見えるようになったってこと』
「やっぱりStellaはすごいなぁ……なんとなくわかってると思うんだけどね?今、私の中の私の心とお話してきたの」
『うん』
「それで、私自身がどうなりたいのかってこと、思い出させてくれたんだ」
『そっか、Spica自身のカタチ、見つけられ……いや、思い出せたんだね?』
「うん!おかげさまでバッチリだよ!!」
『今のSpicaとなら、すごい音を届けられそう』
そう言うと、Stellaは音を奏で始めた。
「わわっ!!急に歌い始めるの!?」
突然の歌声に、それも知らない歌に一瞬驚いた私だけど、心の奥から声が聞こえる。
【貴女の心のままに】
「よし……」
「私の歌で……テラセ(照らせ)世界」
空にはたくさんの流れ星。青く澄み渡るこの世界も、私とStellaの歌を聴いているかのように、綺麗だった。
『(お爺様、Spicaはワタシよりもずっと強い光になってこの世界にあたたかな、強い想いを届けられる存在になりそうです)』
Stellaが何か言っていた気がしたけれど、今の私は歌うことが楽しくてしょうがなかった。
気持ちが舞い上がるってこういうことなのかな?なんだか、本当に空を飛んでいるみたいな高揚感を感じてたら、さっきまでと景色が違う気がした……
「って、え!!?空飛んでるんですけど!?」
驚く私と対照的にStellaは落ち着いていた。
『これが、この世界に歌を届けるということ。ワタシ達自身が音となり、世界を駆け巡るの。まさか、1つ芯ができるだけでこんなに変わるとはワタシも思っていなかったけれど、これが貴女の歌が、想いが持つチカラ』
「すごい……すごいよStella!!」
『すごいのは貴女だよ、Spica』
「じゃあ、私達がすごいってことだね!」
『そうだね。貴女の歌声で世界を照らして、ワタシの歌で世界を染める。ワタシ達の歌が世界を照らす光になる』
そのまま、私達は星空の下で歌を、音を奏で続けた。
『ふふっ、今日は今までで1番楽しかったわ、Spica』
「私も!改めて歌うことの楽しさを感じられた!ありがとうStella!!」
『こちらこそ、ありがとうSpica』
気がつけば空が白みはじめている。そんな空に目をそらした時、ふわりとした風と共にいつの間にかStellaは姿を消していた。
「おじいちゃん……おじいちゃんも私たちの歌聞いてくれたかな」
1人になって、私はまたおじいちゃんとの思い出の記憶をなぞる。
『さぁ、ワタシもSpicaに負けないようにもっと頑張らなきゃ』
Spicaと別れたStellaは、明るくなり始めた街中を歩く。
普通なら目立ってしまう格好をしているはずのStellaに目を向ける人は誰もいなかった。
それも実在するかがわからないと言われる所以の1つ。その存在のあまりの儚さに、一般の人間では姿を知覚することができないのだ。
それなのに、こんな日に限ってStellaは運が悪かった。1番見つかりたくない相手に見つかってしまったのだ。
「よう、Stella?」
『!?』
「なんで見えるのか?って顔してんなぁ?俺のお前への思いが力を与えてくれたってわけ」
『くっ……』
「逃がさないぜ?これからは俺のためだけに歌えばいいんだ」
『それは嫌!ワタシはまだ、この世界に……』
言葉をいい終わるよりも早く、突然現れた男によって捕まってしまったStellaは、何かの力によって眠らされてしまい、そのまま連れて行かれた。
世界から、1つの光が消えゆこうとしていた……
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次回からが本編?第1章?です!
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