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Stella×Spica  作者: 神崎あやめ


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Prologue 1

これは私と、ワタシの始まりの物語。

 「ねぇ、おじいちゃん」


 「ん?どうした?」


 「私ね、いつかあの空の向こうまで届くような、そんな人になりたいんだ!」


 「ほう……空の向こう、か」


 「?」


 「はっはっは、いやいや、前にもそんな事を儂に言ってきた()がいたなと思っただけだよ」


 「そうなの?」


 「ああ、そしてその娘は実際にこの星全体、いや、この星を超えた先にまで名前を轟かせるような存在になったよ。だから、いつかあの娘のようになれると思う」


 「そっか!ありがとうおじいちゃん!!」


 「うむ」



 こんな話をおじいちゃんとしていたのはどれだけ前のことだっただろう。私がまだ歌を歌い始める前だったからもう4、5年前の話になるのかな?

 私のことをいつも見守ってくれた、応援してくれていたおじいちゃんは今はもういない。だけど、おじいちゃんが話してくれた私と同じ夢を語ったのが誰なのかを教えてくれたから、今の私が存在してる。

 私の道であり、先輩であり、同じ人の元で過ごしたことがある憧れの人。


 「Stella(ステラ)……」


 貴女は、いまどこで何をしていますか?

 私は、貴女に憧れて歌を歌い始めました。まだまだ無名な私だけど、いつか貴女のようにこの星に轟くような、いや、この星を超えて、あの空のさらに先まで届くような歌を歌えるかな……?

 そんなことをふと思ったのは、今日が満月の日だからだろう。

 満月の日の夜、それはStellaが歌を投稿する時間。

 Stellaの存在を知った時からずっと投稿と同時に聴いて、歌を歌い始めてからはすぐにカバーして、上げるようになったっけ。

 そんな特別な日なんだけど……


 「セナー!今日はおじいちゃんの命日だから、今年はあなたが行く番よ!」


 「あ、今日だった!!……わかった!!もう今から行っちゃうね!」


 うっかり忘れてしまっていたけれど、今日は私の大好きなおじいちゃんの4回目の命日だった。

 我が家には特別な風習?があって、おじいちゃんの命日には、おじいちゃんが住んでいた家に行き、思いを馳せながら一夜を過ごすっていう行事がある。

 今年は私が行く時だった。もしかすると、今日という日が、Stellaのこととおじいちゃんのことをふと思った原因だったのかもしれない。

 なんだか運命的だなぁ、なんてしんみりしながらも、私は家を出ておじいちゃんの家を目指す。

 まだ昼前ではあるんだけど、単純に家がそれなりの山の頂上にあるから時間がかかってしまうので、早めに出たってわけだ。

 そんな、悪い言い方をしてしまえば僻地にあるおじいちゃんの家だけど、そこから見る星空が世界で1番綺麗な景色だと私は思っている。だから私は行くことが楽しみまであった。


 「待っててね、おじいちゃん!」


 『……儂……は…………2………………待って……』


 「??」


 なんだか、おじいちゃんの声が聞こえてきたような気がしたけど、気のせいかな?



 家を出て、電車とかバスとか乗り継ぐこと3時間。ようやくおじいちゃんの家のある山の麓まで着いた。

 この山はうちの家系が所有している私有地なこともあって、道自体はあるものの徒歩以外で頂上に行く手段がなかった。


 「さ、気合い入れて登っちゃいますか!!」


 1人声を出して気合いを入れ直した私は、その長い道のりを意気揚々と登っていく。

 さすがに少し1人ということで寂しさがあるので、イヤホンを付けてStellaの歌を聴きながら、そして口ずさみながら。


 そんな事をしていたらいつの間にか西の空には太陽が沈み始め、紅い空が私を照らし始めていた。時刻は18時になろうかというところ。東の空には大きくて綺麗な満月が顔を覗かせている。

 少しカッコつけたみたいな事考えてたら、視界におじいちゃんの家、頂上が見えてきた。

 ここのいいところは、山の頂上とは思えないほどに平らで広い花畑が広がっているところ。

 こんな景色の中で、Stellaの歌を聴きながらおじいちゃんとの思い出に浸るなんて、なんて素敵な事だろう。

 そして、頂上に着いた。まずはおじいちゃんの墓石に手を合わせる。


 「おじいちゃん、中々来れなくてごめんね。私ね?昔おじいちゃんが話してくれた人に憧れて、歌を歌い始めたんだ。私なんて、まだ名も無い小さな光だけど、いつか私の歌で世界を照らしてみせるから、おじいちゃんも空の向こうで見ててね?」


 おじいちゃんへの報告も済ませたので、家の中に入る。

 そこは、まるで未だに人が住んでいるかのように綺麗に整頓されていて、だけどあの頃の懐かしい匂いが感じられて。

 自然と涙が溢れてしまう。悲しいわけじゃないのに、とめどなく流れる涙。おじいちゃんと過ごしてきた時間が走馬灯のように頭の中に流れていく。その思い出1つ1つに心が揺らされる。

 そんな私は、その場からしばらく動けなかったんだけど、そんな私の耳に声が聴こえてくる。

 それは私がいつも聴いている声で、だけど、今聴こえるはずのない声で。


 『ワタシの歌にソマレ世界』


 私の耳に響くのは、紛れもなくStellaの声だった。


 『ワタシはずっとアナタに会いたかったの……Spica(スピカ)


 「私もずっと、貴女にいつか会いたいと思ってた、Stella」


 今日は、満月の夜。そして、私とStellaの共通の恩人のおじいちゃんの命日。

 そうだ、もう1つあったんだ。今日は7月7日。日本で言う七夕の日。織姫と彦星が1年に1度だけ会うことができる日。


 これは私の妄想かもしれないけど、おじいちゃんが私とStellaを今日という日に巡り逢わせてくれたんだ。


 ここから、私の人生が大きく動き出すなんて、そんなことを考える余裕はこの時の私にはなかった。

読んでいただきありがとうございます!


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