表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

数百文字の物語

私の幸せ

 昔よく読んでた絵本を読み返した。

 少女が小さなどらごんのお友だちに


「あなたはわたしの宝もの。幸せそのものなの」


 そう言って、抱きしめる終わり。

 懐かしいな。


「あんたたちお風呂入ったのー?」

「今入るー」


 お母さんに言われて、わたしはソファを立つ。


「ねーちゃん、後でゲームの対戦してー」

「いいよー」

「姉ちゃんが風呂出たらお前もすぐ入れよ。ゲームはその後な」

「えー」


 お父さんに駄々をこねようとする弟の後ろを通り過ぎて、わたしは絵本を本棚にしまった。



「あったか〜」


 浴槽が狭いから、膝立てて半分寝転ぶみたいになって肩まで浸かる。


「……いーい湯ーだーな」


 絵本を読んで昔を思い出したからか、そんな歌が出てきて、歌詞が分からなくなったから後半鼻歌で続ける。


「幸せ、かぁ」


 ぽつりとこぼれた。

 小さい頃から、小さなどらごんを女の子が抱きしめるシーンが大好きで、よくそこだけ眺めていた。


「私の幸せって、なんだろう?」


 考えてみる。ゲーム? 漫画? スポーツ? それとも、ご飯やお菓子? ……もし世界で一つだけしか幸せを選び取れなかったら、どうするかな。私は――

 それまで自分のことしか考えていなかったのに、不意に家族や友達のことが出てきた。


「あ、そっかぁ……」


 わたし、意外と……というか、それが一番大切だったんだ。うん、そうだなぁ。もし他の全部がなくなっても、私は大切な人たちを選ぶな。普段気づかなかったけど、こんなに私、みんなのこと大切だったんだ。こんなに愛しいって気持ち、あったんだ。

 そう思ったら自然と頬が緩んできて、いつの間にかそこには涙が伝っていた。

読んでくださりありがとうございます。

作中の絵本はこちらの三枚目の絵をイメージしています。

https://www.pixiv.net/artworks/112389449

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ