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演説

コービンが中庭から去ってからしばらく経った頃、またアレクサンドラの前にコービンが現れた。

 アレクサンドラはコービンを見向きもせずに一言。

「我を満足させられるか?」

 アレクサンドラの問いにコービンは――

「勿論でございます。必ずやアレクサンドラ様も満足して頂けるでしょう」

 自信たっぷり答えたコービンにアレクサンドラは微かに笑いコービンを見た。

「ほう、言うではないか。なら我を満足させてみよ」

「では城下が見えるテラスにご案内します。どうぞこちらへ」

 コービンはアレクサンドラを中庭からテラスへと案内した。自信たっぷりに案内するコービンだがその内心は不安で一杯である。

 アレクサンドラは歩いている途中に何かに気付いた。

「随分と外が騒がしいな」

「国民がアレクサンドラ様の為に詰め掛けております」

 コービンがテラスへの扉を開けると外から一気に人々の声が聞こえた。

 テラスに出てみるとそこから見える正門前に王都にいる国民が大量に押し寄せていた。老若男女問わず詰め掛けた国民はテラスにアレクサンドラが現れるのをずっと待っていたのだ。

 アレクサンドラの姿を見ると群衆は大声を上げた。

「アレクサンドラ様だ!お美しい!」「アレクサンドラ様!どうか我等をお救い下さい!」「偉大なる赤竜様!」「奴等を打ち滅ぼして下さい!お願いします!」

 群衆は口々にアレクサンドラに向かって懇願した。その声は王都中に聞こえるような凄まじい大きな音となり、アレクサンドラただ一人に向かって注がれた。

「中々にいい気分だな」

 アレクサンドラはその光景を見て気分良さそうに笑った。

「はい、これほど国民に慕われている王はこの大陸においてアレクサンドラ様ただ一人でしょう。私も長くこの街に住んでおりますがこの様な事は一度たりとも見た事がありません!アレクサンドラ様だからそこ成し得た奇跡でございます」

 

 アレクサンドラに足りないモノ、それは国民からの支持であった。

 今まで全ての公務をコービンに任せ城に籠っていたアレクサンドラはこうして国民の前に立つ事はなかった。

 アレクサンドラから無茶なの要望を聞いた後、コービンは大広間に戻ると全ての部下にこうお願いした。

「街に行きフーハイシティルが兵を出し向かっている事を伝えて下さい」

 部下達は動揺した。コービンの意図が分からなかったからだ。

「それでは国民が混乱するのでは?」

「それでいいのです。また愚王が王座に着けば圧政を強い、困窮した生活に逆戻りすると触れ回って下さい。そしてそれを解決できるのはアレクサンドラ様だけだと」

「それだけでいいのですか?」

 一人の部下が心配そうに聞いてきた。

「はい、とにかく非常事態だと危機を煽って下さい。国民総出でアレクサンドラ様に懇願するのです!城の前に集まり大声でアレクサンドラ様を称えて助けてくれる様にお願いしましょう」

 コービンが立てた作戦は国民総出でアレクサンドラに胡麻を擦る事であった。コービン史上最大規模の胡麻擦りである。

 騎士団が非常事態と呼び掛け、職員は親族、恋人、友人に城に来るように声をかけて行った。とにかく一人でも多くの国民を城の前に行くように声を掛けた。


 数時間後、そして集まったがこの城への道を埋め尽くそうする群衆である。

 流石のアレクサンドラもこの光景を見て心が動いた。

「ここまでされたら流石の我も応えてやらねばならんな」

 言った。アレクサンドラは確かにそう言った。それをコービンは群衆の大声の中聞き逃さなかった。

「流石アレクサンドラ様!やはり、やはり陛下は我等の救世主でございます!ではどうか集まった国民の為に一言お声を!」

「ふむ」

 アレクサンドラは一歩踏み出した。すると群衆は一斉に黙った。アレクサンドラの声を聞き逃さんと耳を傾けた。

 それは一人の喉から発せられるにはあまりにも大きな声であった。

「聞け我が臣民共よ!お前達の声に応えこれより我が国を踏み荒らす愚か者を蹂躙する!二度と我に歯向かうなど愚かな考えをしない様にその小さな頭に刻み付けてこよう!安心しろ!我がいる限りこの国は何人たりとも自由にさせん!」

 群衆から歓声が上がった。手を上げ喜び飛び跳ねている。歓声は空気を震わせまるで地鳴りの様な音を立てた。

「素晴らしい演説でしたアレクサンドラ様」

「では行こうか。案内せよ」

「はい!」

 アレクサンドラは竜の姿になり群衆を真上を飛んでいった。後からコービンが召喚竜に乗りアレクサンドラの追いかけていく。

 竜の姿を目の前で見た群衆はその雄大さと迫力に圧倒された。そして確信した。この戦争は必ず勝利すると。

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