会議
会議に参加している面々の表情は重く、誰もが口を閉ざして考え込んでいた。
今日報告されたのは騎士団が結成された事である。それも騎士団長に妻であるアイビー・ヘツラウェルを任命した事も気掛かりであった。
「着々と独裁体制を築いてるのか……」
メイクーンは眉間に皺を寄せながら呟いた。
「はい、国王こそ赤竜としていますが、あの国の経済、軍事、政治の殆どはコービン・ヘツラウェルが握っていると考えていいでしょう」
報告をした部下も気まずそうに答えた。
「ノイガー王国に侵攻してくるのでは?」
「やはりあれは偵察だったのか?」
「いや、あれだけの力がありながら偵察する意味があるのか?」
「単に形式的に騎士団を作っただけかもしれませんぞ?」
「それにしても動きが早過ぎる。政変からまだ数ヶ月だぞ」
こんなにも早く物事が進む理由は至って単純、皆アレクサンドラが怖くて逆らえないからだ。
なのでコービンが決めた事に反対する者はおらずトントン拍子で進んでいく。それに加えて派閥争いをする貴族がいないのも大きかった。
その時一人の大臣がメイクーンに提言した。
「ここは赤竜を王と認め、国交を結ぶべきでは?」
その提案に強く否定する者は現れなかった。その考えにメイクーンも肯定を示した。
「確かに国として成立しているのはもはや疑いようのない。フーハイシティル王国とは長く断交してきたがこれを機に国交を回復しても良いかもしれない……」
メイクーンが発言していると扉の向こうが何やら騒がしかった。
そして勢いよく扉が開かれ兵士が一人部屋に息を切らせながら入ってきた。
「会議中失礼します!緊急事態です!ゴーエッド王国がフーハイシティル王国に戦争を仕掛けました!」
「何だと!」
メイクーンは驚きのあまり椅子から立ち上がった。
「国境を超え王都に進軍しております!軍の中に前国王のフーハイシティル十三世の姿も確認できました!おそらく国の奪還の為ゴーエッド王国と手を組んだと思われます!」
友好関係を結ぼうとした矢先の非常事態である。
メイクーンは直ぐ様指示を出した。
「我は手出し無用!事を荒立てず静観せよ!もしかしたら赤竜の力を見れるかもしれん!密偵は戦場近くで監視を続けよ!この戦争が我が国の運命の分かれ道となる事を心に留めよ!」
メイクーンの指示により会議の参加者はバタバタと仕事に取り掛かった。
メイクーンも急ぎ会議室を出た。
歩きながらメイクーンは考えた。
――赤竜の国か、フーハイシティルの国か……どちらになっても悩みの種は尽きないだろう。何故私の代にこんな事が起きるのだ……