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有名人のマスク

作者: 藤乃花

西暦2020年、新型コロナウイルスというこれまでに無いウイルスが世界じゅうに広がりを見せ、人々はパニックに陥った。あらゆる医療現場では看護師不足、自粛生活、渡航禁止令、そして店にも影響が出た。食品の買いだめ、消毒液やマスクの生産も追い付かない状態が続いた。人々のストレスは頂点を越え、物を巡って争いが起きた。そんな中、一枚のマスクがテレビで紹介された。『有名人のマスク』と題され、先着一名様に届けられる……そんな企画だ。たった一枚だが、マスクが世に無い時代。皆我先にと番組に電話をし、マスクを求めた。しかしあまりに多くの人からの電話で、混線が起きる。「なかなか電話が鳴りませんね。恐らく混線していると思われます」司会者がマスクの主に語る。テレビの向こう側、マスクの主は曇りガラスの向こうにいて、何者かは秘密。何となく髪の長い女性だと分かるだけ。「もし混線がおさまり御電話が通じたら、貴女はその方にどんな言葉をかけますか?」司会者の問いかけにマスクの主はやんわりと答えた。「ワタシ、キレイ?」





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