1 拓海と美奈子
「美奈子、俺と付き合ってくれ!」
「……ごめん、やっぱり拓海のこと幼馴染としてしか見れない。」
「そ、そっか。」
また玉砕してしまった。
俺は浅川拓海。高校二年生。
自慢じゃないが、身長は平均より高く成績も学年で五位以内をキープ。
スポーツも大体得意、女子からも何回か告白されている。
その告白を断っている理由が、今目の前に居る俺の幼馴染、高田美奈子。
長い黒髪、キリっとした目つき、整った顔立ち、自分に厳しく人に優しい、高校生にして抜群なスタイル、長所を挙げればキリがない。
家が近所で、幼稚園の頃から仲が良かった。
家族ぐるみの付き合いもある。
幼い頃は友達として大好きだった。
小学校高学年になると、一人の女の子として意識し始めた。
その頃から多分好きだった。
美奈子に好かれるため、勉強に運動にと努力した。
身嗜みにも気を使い、女子から告白されるようにもなった。
中学一年生のころ、ハッキリと自分の気持ちを自覚した俺は、一度目の告白を実行した。
「家族みたいな感覚しかない」という返事だった。
まだ努力が足りないと思い、自分磨きに必死になった。
中学では成績はトップ、バスケ部ではキャプテンも務めた。
そして中学卒業の日。
二度目の告白に踏み切った。
返事は変わらなかった。
この時の俺は自分磨きに必死で、美奈子との距離を縮める努力が足りなかったと思い、高校も一緒だったので、美奈子と出来るだけ一緒に過ごせば変わると信じて行動した。
休みの日には一緒に出掛けようと誘い、学校のある日は朝家まで迎えに行き、学校では昼食を一緒に摂り、放課後は出来るだけ一緒に帰った。
そして、今日。
三度目の正直を信じての告白。
だが、ダメだった。
どうすればいい?
どうしたら、美奈子は俺を男として見てくれるんだ?
一体何が足りないんだ?
わからなくなっていた。
三度目の告白から2か月後。
「おはよう、美奈子。」
「おはよう、拓海、ちょっと話があるんだけど……。」
「うん?なに?」
「私、彼氏が出来たの。」