表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
殺人事件の続きは異世界で  作者: 露木天
三章.呪われた七人の子供達
68/155

67.突撃作戦1

【魔暦593年07月03日11時50分】

 

『今から、会いに行くよ、お兄ちゃん』



 入江マキは死の直前、こう言ったらしい。先に死んだ僕に会うために、自ら首を吊った。天国に行く翼を求めて、地に落ちたのだ。


 そして、その願いは叶った。僕が4歳の時、ロイに連れられてスタウ家を訪れたことがある。その時、佐藤ミノルと入江マキは再会した。マキが死んでから四年後、死の間際の言葉は現実になった。



 神様はいたんだ。一部始終を見ていた神様は、入江マキの悲惨な現状に同情した。そして、兄の転生先に、しかも近所の幼馴染として転生させた。




ーーそんなこと、あるわけないだろ




 断言しよう。神様はいない。

 否、この世界で神様という括りがあったとしても、僕たちの想像するようなものではない。人の願いを叶え、導くような力は持っていない。

 そんな都合のいいことは起きるはずがない。世界は残酷で、呪いに溢れているのだから。




 そう考えていた僕が至った結論は、一つ。




 あの雪山で死んだ人間は、全員転生している。




 この方がしっくりくる。僕とマキの運命や奇跡よりも、土地由来の転生の方が、道理が通っている。あの場にいたから、転生先が同じだった。

 


ーーあの雪山山荘には、何かがあったのかもしれない

ーーそうすれば、辻褄が合う

ーーなぜ、鬼塚ゴウが逃亡先にあの山荘を選んでいたか

ーー鬼塚ゴウは、何を知っていたんだ



 勿論、この考えも妄想の域を超えない。今更証明する手段はないし、鬼塚ゴウも転生しているとは考えたくもない。


 それに、今回の殺人に鬼塚ゴウは関わっていない。



 以前もオルと議論した話だが、七連続女性刺殺事件と雪山山荘密室殺人は似てるようで全く異なる。

 鬼塚ゴウは『七人を殺す』という明確な意思の元、ライブ的に行われた。通り魔殺人による被害者は、そこに偶然いた人々だ。

 雪山山荘の方の目的は『完全不明』。綿密に組まれた計画の割には、殺害方法の統一すらままならない、杜撰さが目立つ。殺害したのも、マキを除く六人だ。



 つまり、イアムの殺人は、雪山山荘と同一犯で間違いない。なぜなら、鬼塚ゴウが転生していたら、被害はイアム一人じゃ済まない。



 鬼塚ゴウは、二日で七人を殺してみせた。加えて、

 七連続女性刺殺事件の二日目、彼は指名手配されていた。それなのに、三人殺すことができた。



 彼の手際の良さならば、ヘルト村に既に七人の死体が見つかっているはずだ。



ーー疑問が残るとしたら

ーー雪山山荘の殺人鬼は何処に消えたか

ーーいつ死んだか、だ



 転生しているからには死んだはず。謎の殺人鬼は、どうやってこの世界に来た?




「と、まあ。現状僕の考えはこんな感じだね」




 僕の考察を黙って聞いていたルミとオルの反応はバラバラだった。

 過去を思い出して複雑そうな表情をしているのはオルだ。足取りも重く、やるせないため息を時折吐く。

 対して、僕と近い感情を抱いているのはルミだ。彼女は怒りを内包した目で、空を見ていた。

 二人とも足取りは重く、ここから先に進むのが不安なようだ。



「不安なようだ、じゃねぇよ。いい加減何処に向かってるか先に言えよ」

「四人目か、五人目の異人が住んでいる家よ」

「え、はぁ!?」



 現状の情報で、異人だとわかっている人物は四人。佐藤ミノルこと僕。入江マキの転生先、オル・スタウ。死後異人だと判明した、イアム・タラーク。彼女を殺した謎の殺人鬼。

 


「そして、セリュナーの魔法で判明した異人、というわけよ。こいつがイアムを殺した殺人鬼の可能性は充分あるので、四人目か五人目なの」

「言っている意味がわからないのだが」

「僕たちの記憶と比較しただけでも、透明人間が四人いるのよ。ほら、あなた達も見たでしょ。セリュナーの花の空間の最後」

「父さんが転移して来たところ?」

「そう。あの再現された空間だと、ルミの元にラス隊長が到着して魔法は終わった。だけど、実際はどうだったか思い出してみてよ」



 ラス隊長を魔道具で呼びつけて、僕は走り出した。足を捻っていたけど、それでも二人きり(・・・・)になりたくなかったのだ。

 あの時は、殺人鬼が転生していることに恐怖して、人間不信になっていた。三人以上の相互監視ができていないと安心できない。不安はピークだった。

 だから、モニとオルのいる方向に走った。誰も信用していなかったけど、誰かがいるところにいたかった。



 彼女達は目を大きく見開く。僕の肩に乗せていた手に力が入ったのがわかる。オルに至っては、僕達が向かう目的を向かう先を睨んでいた。

 ルミは信じられないものを見たかのように叫ぶ。




「あいつが異人かよ!」




 そう。ラス隊長より先に、僕達がルミの元に辿り着いた。つまり、僕の隣にいた男は、セリュナーが生み出した花の空間に映っているはずなのだ。それなのに、僕と一緒に透明人間になっている人物がいた。



 魔法学院警備隊員、ラーシー。



 魔力を持っていないのは、彼が異人である証拠だ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ