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殺人事件の続きは異世界で  作者: 露木天
三章.呪われた七人の子供達
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66.異人解体新書3

【魔暦593年07月03日11時45分】



 魔王。

 この世界のあらゆる法に縛られない、自由な存在。

 人に災いを与え、悪の道に引き摺り込む魔物の王。

 生活を豊かにするはずの魔法を、人を傷つけるために使う悪魔。

 そして、人間の寿命以外の死因の主たる原因だ。


 回復魔法で体を守っている人類を殺せるのは、魔獣の捕食による消化、呪異物の呪い、そして魔王の攻撃。

 魔王による攻撃で負った傷は回復できず、そのまま死に至る。数々の人々がその被害に合い、勇者と呼ばれる者たちの活躍によって、蹂躙は止められた。


 以後、勇者たちは魔法学院魔王討伐戦線の一員として、世界の平和を守っている…らしい。全てオルによる説明である。忘れていたが、この世界はファンタジーなのだ。




「異人の魂は地球から流れてきた者だけれど、体も地球側に引っ張られているとはね。確かに、お兄ちゃんって日本人顔だよね。黒髪だし」

「いや、それは気のせいだと思う。僕ってお母さん似だし。オルだって、ルミそっくりじゃない?」

「それもそうか。魂に体が適応したのか、それとも魔力を扱うのが魂なのか…。わからないなぁ」



 そもそも、異人がこの世界に生まれる原理すら解明されていない。なぜ、地球の人間が転生しているのか、異物との関わりは何か。全くもって不明だし、証明する方法もない。

 オルは曲げていた首を戻し、話題を変える。




「でも、魔王が異人ってのは納得できるね」




 この世界に馴染もうとせず

 この世界に歩み寄ろうとせず

 この世界の常識を覆す



「魔王のやってることなんて、いかにも異人がやりそうなことだよ。実際、お兄ちゃんだって魔王みたいなものじゃない。魔法を使わず、ヘルト村の中で考えられないほどの美人。どこか浮世離れしていて、常識が全く通用しない。まるでかぐや姫だ」



ーーそれは、そうだよ

ーーだって、僕はかぐや姫になろうとしていたんだから



 かぐや姫のように、美しく周りから見られたい。目標は高く設定する。それが僕が転生して、生きていくうちに決めたことだ。

 思惑を見破られていたことに恥ずかしさを覚える。だが、魔王と何の関係があるのか。

 オルは僕の方を見ながら、口を歪ませて笑う。




「俺は平安の地に降り立ったかぐや姫を、魔王じゃないと否定できないね。人を殺していないだけで、あの時代をめちゃくちゃにしたんだもの」

「なんか嫌な言い方」

「でも実際そうだろ。お姉ちゃんだって、今から魔王になれるんだ。それに、回復魔法に頼り切ってる、平和ボケしたこの世界の住人を殺す方法なんていくらでも思いつくでしょ?」



 思いつくかと言われたら、いくらでも思いつく。

 回復魔法は、菌などの悪性物質を排除し、怪我や欠損を無かったことにする。不死のような在り方だが、逆に言えばそれだけだ。


 例えば、土に埋めるとか。呼吸ができなくなり、そのまま死に至る。もし、回復魔法で酸素を生産できるとしても、身動きは取れない。そのまま衰弱死に持っていける。

 次に、回復箇所を無くすように、杭を差し続けるとか。治すという行為の邪魔をすれば良い。他にも、海に沈めるとか、燃やし続けるとか、色々ある。



 効果があるのかは知らないが、不死性は完璧では無い。もし、この世界の住人が気がついていない穴を見つけたら、連続殺人など容易いだろう。

 そして、異人にはその発想ができる。数多の殺人をフィクションコンテンツとして消化し、戦争を歴史として習った。この世界には無い常識が、僕たちにはある。


 オルが言いたいのはこういう事だろう。



『地球の常識をこの世界に運び込み、平和を乱す行為をすれば、それが殺人ではなくても魔王と言えるのでは無いか』



 だから、僕のように浮いている存在は注意されているに違いない。それこそ、魔王討伐戦線は魔王の専門家だ。彼らは異人のプロフェッショナルとも言える。

 


ーーどちらにせよ、異人の成れの果てが魔王



「でも、今回は逆にラッキーよ。殺人鬼が魔王で異人なら、僕たちの土俵だもの。どちらにせよ、殺人鬼を捕まえれば全部解決するってことよ」

 

 

 殺人鬼とイアム・タラークは異人である。これは、セリュナーのサイコメトリーが証明した。

 それは、彼女達が魔法を使った小細工を行えないということだ。ラス隊長のように連続転移して人を殺すことも、催眠をかけて辺境の地に呼び寄せることもできない。



 異人による、異人を対象とした殺人。

 つまり、殺人は科学的に証明できる。魔法や超能力といったファンタジーを、排除することができる。だとしたら、こちらに部がある。

 僕たちの話し合いを側から見ていたルミが、思い出したかのように呟く。



「さっき、父さんが言ってたことだが。魔王討伐戦線がロスト山まで来ているんじゃないっけ」

「そうなるわね。でも…」



 魔王討伐戦線には期待できない。既に殺人が起きて三日は経っている。それなのに、一向にヘルト村に来ない。

 転移魔法という便利なものがある以上、距離の問題ではない。何かしらの制約があるのかわからないが、希望を持つだけでは無駄だ。

 なにより、ロスト山には副院長がいる。彼がいて、何も動いていないはずがない。そちらは勝手にやってもらえばいい。



ーー結局、自分達でなんとかするしかない




「さて、そろそろ向かうわよ」



 僕は両手を叩き、歩みを進める。

 行き先は一つ。元より、セリュナーのサイコメトリーはサブプランで、こちらが本命だ。



 とはいえ、彼女の魔法には感謝している。



 半信半疑だった可能性が、確定した。四人目か五人目の異人が住んでいる家は、もう少しで到着する。




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