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殺人事件の続きは異世界で  作者: 露木天
三章.呪われた七人の子供達
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63.『事件現場再現VTR』4

【魔暦593年07月03日11時20分】


 サイコメトリーは唐突に終わりを告げた。空間全域を照らす眩しい輝きの中から、一人の影が浮き上がる。その人物の余りにも大きな魔力の流れによって、木々は崩れ、花びらは舞い散った。

 過去を再現するのにも限度がある。彼の神業魔法を表現するには、キャパシティが足りなかったらしい。



「ラス隊長…」



 口を大きく開けたセリュナーは、目をぱちぱちと開閉する。サイコメトリーが強制終了させられたことなどなかったのだろう。



 殺人現場に、突如現れた白い光。ラス・スタウは自宅からルミの元まで長距離転移してきたのだ。


 

 「住宅街に殺人鬼が逃げた」と考えた僕が、ラーシーと合流したのが20時10分頃。僕たちが現場に戻り、ラス隊長は現れたのが20時20分。

 10時50分から9時間30分を再現し切った。一級魔法の恐ろしさを心の底から実感する。


 そして、花の空間に登場したのは三人。見回りをしていた警備隊員、ルミ、そしてラス隊長。



「ねぇ、なんだったのこれ?イアムどころから、誰も出てこなかったんだけど。場所間違えてない?」

「ああ、間違ったかもしれません。あはは」

「ちょっと、うっかりさんね。全く、再準備には時間かかるわよ」



 怒ることもなく、セリュナーは懐に手を突っ込む。種子が大量に入っているのか、彼女は大きさを選定し始めた。形と数量の調整が必要のようだ。


 だが、僕は目的を果たした。場所を変えて過去を再現したとしても、結果は同じだろう。


 鼓動の高鳴りが聞こえる。僕はらしくもなく興奮していた。真実に一歩近づいたという実感があった。



ーー花の空間に、異人は映らない



 もし、その間に異人が殺されても、サイコメトリーには再現されない。セリュナーの魔法では真実に辿り着くことはできないのだ。



ーーでも、それってつまり

ーーイアム・タラークが異人だと確定したってこと

ーーそして、殺人鬼も異人である



 セリュナーが再現した花の空間に、透明人間は最低でも四人はいた。殺人現場は間違いなくここなのだから。

 

 鼓動に合わせて、血液が体を駆け巡る。輪廻転生、魂の漂流、異人誕生。僕だけに降り注いだ奇跡のような出来事は、特別でもなんでもなかった。

 自分だけが特別なんて無視がいい。異人は当然の事象なのだ。そして、そう捉えた方が動きやすい。

 


 僕の心の中は一人の人物で埋め尽くされていた。そいつが異人であることは確定した。はやく、会いに行きたい。事件の真相を暴きたい。




「ああ、オルが強く持つから紙ガー」



 びりびりびり



 『一級魔法閲覧許可状』は真っ二つに破ける。副院長が押した印の中心が綺麗に裂け、それは効力を失った。僕は両手に持つ紙を地面に捨て、セリュナーにお辞儀をする。



「ありがとうございました、セリュナーさん。許可状が無くなってしまったので、僕らは帰りますね」

「はぁ?モニさん、あんた何してんのよ。自分で破ったでしょ」

「いいえ、このオルのアホが破きました。弟の教育は姉に任せてください。僕は関係ないので帰ります」



 「じゃ」と軽く手を挙げて、彼女に背を向ける。納得の言っていない様子のセリュナーだったが、彼女とはこれ以上喋りたくない。

 頭のいい彼女なら、何かに気がついてしまうかもしれない。既に違和感は持っているようだし、何より乗り気になっている。


 僕たちが提案するまでもなく、種子を手に取った。このままだと、引き返せない位置まで来てしまうだろう。


 これは日本の殺人事件の延長線だ。この世界の住民を無差別に巻き込むことは、心苦しいとさえ思う。



「ルミはどうする?」



 振り返らずとも、彼女がこちらを見ているとわかった。その目線が、強く僕を睨んでいるのも、理解していた。



「舐めてんのか。全部説明してもらうぞ、モニ」


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