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殺人事件の続きは異世界で  作者: 露木天
終章.エピローグ
136/155

135.最後の異人5

【魔暦593年07月04日18時05分】



 そんな経緯があって、僕とルミは代弁教師アンダーソンとの面会に成功した。死体の場所を教えてもらうためにアンダーソンに接近しようとしていたこともあったので、ようやく、と言ったところだ。

 集会と違って少人数で話せるのは嬉しい限りだ。


 正義の四人組の一人、デルタ・サランがいてくれて良かった。彼のおかげで、この場所をセッティングできたと言うのもある。

 隠密魔法の使い手だとは知らなかったが、デルタがアンダーソンを尾行していたのは、昨日知ったところだった。スカーと教室で雑談した甲斐があった。



「デルタ先輩は、隠密魔法を使う時に魔力を垂れ流してるからね。その魔力すら隠せる力はすごいけれど、過去は消せないってわけ」

「過去?」

「あたしが、サイコメトリーで魔力の動きを蘇らせたんだよ」



 と、机の上に置いた種を、うねうねと成長させながらルミは言う。天才魔法使いセリュナーの十八番であるサイコメトリーを、ルミはすでに見て学んだ。

 化け物じみた学習能力だ。


 大体の場所さえわかれば、僕の出番だった。隠密行動をしているデルタを、目視で見つければ良い。周囲の認知を歪める魔法だかなんだか知らないが、僕に魔法は効かない。



「納得いかないなぁ」

「なかなか良い魔法だったぜ。今度教えてな」

「嫌すぎる…」



 仲良く魔法トークをしているルミとデルタを置いておき、アンダーソンに目をやる。彼は代弁教師らしく教壇に立ち、こちらを見下ろしていた。ちなみに、僕たちは生徒のように教室の椅子に座っている。



「先ほどは見事な推理だったねぇ、名探偵。カウエシロイ大先生も、大変喜んでいたよぉ。ほほほ。それで、どうしたのかなぁ? 感想が聞きたいのならば、夜が明けるまで話しても良いよぉ」

「物語を最後まで読まないで感想をいう奴は、読者として二流ですよ」

「ふむ?」

「アンダーソン先生。単刀直入に言います。カウエシロイ大先生について、一つ、質問に答えて頂きたい」

「一つ、一つでいいんですかぁ? 聞きたいことは山ほどあるんじゃなくてぇ? 少なくとも、そちらのデルタくんは私のストーキングをするほど飢えているようでしたが」

「知らねーですよ。デルタ先輩のことなんか。僕が聞きたいのはですね、カウエシロイの…」



「ちょっと待った!」



 がたん、と椅子が倒れた音と共に、僕の肩に男の手が乗る。

 おかしいな。アンダーソンの元に辿り着くまでがデルタの利用価値で、それ以降はノイズだ。ルミが彼と魔法トークに花を咲かせることで、邪魔をさせない手筈だった。


 首だけ後ろを振り返ると、ルミは欠伸をしながら肩をすくめていた。「流石に、可哀想だぜ」、と彼女は言う。

 親友にあっさりと裏切られた僕が可哀想、ということではない。アンダーソンを追い続けたデルタの、今まで積み重ねてきたものが全て無くなることに対してだ。


「カウエシロイを追い続けて二年! 殺人事件が終わったことによって、今までで一番情報が緩い時なんだ。だから、順を追って質問させてくれよ!」

「デルタ先輩は尾行なんかしないで、最初から直談判してればよかったんですよー。僕は、自分が知りたいことを、自分が知りたいタイミングで、自分の力だけで手に入れたいので」

「ひ、ひどい! モニちゃんだって、僕の尾行をしたからアンダーソン先生に辿り着いたんじゃないか!」

「別に頼んでません。それに、利用される方が悪いんですよー」



 「ぶっ飛ばしてぇ」と赤髪の少女の声が聞こえるが、僕は無視した。お前はどっちの味方だよ。

 


「これが噂に聞く暴言女モニ・アオストの実力というわけか。やっぱり、早い段階で目を積んでおくべきだったよ。正義の名の下に」

「そんな正義がいるか!」



 やはり、正義の四人組はスカー・バレントというカリスマがいてこそ成り立つものだろう。こんなにもチョロそうなデルタだけでなく、無口のリエット、感情的なシエラと退屈しないメンツだ。


「ほほほ、若人の議論を仲裁するのも教師の役目ですが、今回はカウエシロイ大先生が発端ですからなぁ。ふむ。そうですな」



 と、教壇に立つ代弁教師は口を開く。



「ゲームをしましょう。勝者からの質問は、絶対に答えましょう」



 まあ、こうなるよな。

 アンダーソンは最初から情報を隠し通すつもりがない。元より、情報を小出しにして僕たちを操作するような人種だ。

 これも、その一環。ゲームを通して僕たちを操ろうとしている……、のかな。カウエシロイの考えはなんとなく理解できるようになってきたが、アンダーソンの真意は読み取れない。

 流石に、こうして詰め寄っている今、カウエシロイから代弁を預かっているとは思えない。準備期間のない、ゲリラ的な話し合いだ。



 種目は、名前当てゲーム。

 カウエシロイの本名を言い当てたものが、勝者となる。


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