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マルボロ

作者: 平井

 しゅって音と共に火がつく。一本咥え、そこへ少しだけ息を吸う。火がついたら吸い込んで吐くだけ。別に吸わないと生きていけないわけではない。なんとなくだ。でも、そのなんとなくも緑のマルボロの4ミリでないといけない。なんでも同じように見えるあの箱は実は味がそれぞれ違うのだ。少しmentholの爽やかさを感じつつ、煙はほどよい苦味。ただタバコの先から出る煙はタバコ臭いことこの上ない。

 私はタバコのことが嫌いだった。臭いし身体に良くないし、何よりお金が勿体無い。それでも吸う人は吸い続け、身体を蝕みお金を減らす。馬鹿だなぁとしか思っていなかった。歩きタバコは害虫のように見え、心が荒れているときには死んでしまえとさえ思ったほどだ。

 しかし、いつからか吸ってみてみたいと思った。あの時は友達と呼べる人間が周りにいなかった。家族に助けを求めようとも思わず、ひたすらに日々を恨んだ。恨んでも特に行動することはなかった。唯一と言っていいほどの行動がタバコだ。嫌いなものに身を任せる。自傷行為の延長でしかなかったそれは嫌いだったはずなのに気持ちが良かった。いつの間にか半年が経ち、あれほど忌み嫌っていたタバコが日常に溶け込んだ。

 19時11分。私はタバコの火をつけるためにライターを探していた。ライターが机の上にない。苛立ちを隠せず、ああもうと子供のように声を出す。そういえば昨日履いていたジーパンのポケットから出していないかもしれない。ポケットを探ってみるとあった。ベランダに出て火をつける。一息ついてやっと、タバコに依存していることに気がついた。来月にはやめよう。そう決めてひと月が経ち、全く変わっていない現状。やめようと思えばいつでもやめられる。そう思ってもう一本めのタバコに火をつけた。

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