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【表紙付き】完璧無比で幼馴染な風紀委員長様が不器用でポンコツなことを、嘘つきの僕だけが知っている!【完結】  作者: 時雨オオカミ
キューピッド達に背中を押されて

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33/33

ずっと一緒に

 高校三年生。


 一年。長い、長い一年。


 風紀委員会の教室でどら焼きをシェアしていた高校二年生の日常から、それだけの時間が流れてあのときの迷いと想いが見事にひっくり返っている。


 ずうっと、迷っていた想い。


 報われなくてもいいからずっと一緒にいたいという願いは、転校生がきっかけで成就した。


「もう、また嘘ついてー!」


 えーっと、今度はなんの嘘だったかな。

 ブロッコリーを鉢に植えたらたくさん成長して木になるって話だったか。

 さすがに騙されてくれるとは思ってなかったけど、こうも上手くいくと本当に愛おしい。


「何度だって騙されてくれるんだろ?」


 告白のときにくれた蒼葉の言葉を言うと、彼女は真っ赤になって言葉を詰まらせる。


「そ、そうだけれど!」

「騙されやすくてポンコツな蒼葉が好きだよ」

「わ、わわ、私だって、嘘つきだけど誠実な雪春のこと好きなのよ! 舐めないで!」

「別に舐めてない。それよりキャラ崩れてるぞ」

「んあー! 君のせいよ! 私をもて遊ぶなんて、雪春のスケベ!」

「スケベなのは蒼葉の思考のほうだろ」


 いまだ、彼女がポンコツなこと自体はバレていない。いや、厳密に言えばバレているが、本当の意味ではバレていない。みんなは多分、僕の前でだけポンコツなんだと思っているだろう。


 だが、こいつがポンコツなのはいつもだという真実が覆い隠されている。普段はクールぶっていて有能だから隠れているだけで。


 だから、二人の秘密はまだ保たれたままである。

 まったく可愛いやつめ。


 顔を真っ赤にしながら強気な言葉を繰り返し、しかし僕からは決して離れない蒼葉を抱きしめる。抵抗は、当然のことながらない。


 それから歯痒いことに、僕よりも身長の高い彼女の頬に手を添えて「晴れて恋人になったんだから少しくらいいいじゃないか」と言えば、彼女は耳まで真っ赤に染めて口をはくはくと動かす。相変わらず、積極的な態度には弱いところが可愛らしい。


 まあ、恋人になってからもう結構経つわけだが。


「ひゅー! 今日もやってるねぇ、二人ともー!」

「風紀委員長様可愛いー!」

「あの腰巾着が、まさかねぇ」

「はあ、二人を見守る壁になりたい……」

「お二人とも! 学園祭で漫研が出す題材にさせてもらってもいいですかぁ!? はあ、推しが今日も尊いですぅ〜!」

「結婚式場はここだった……?」


 なお、教室での出来事である。悪いね、教室でコントしてて。

 あれから……秋音先輩や姫宮さんが表立って僕らを推しはじめてから、なぜかファンが急増してしまったのだ。


 今までのじれったい関係を密かに応援していたらしい女子や、僕達のことを鑑賞物として楽しむことにしたらしい一部の男子。そして漫研の女王様と化した姫宮さんが「尊い」と叫ぶ。


 こんな騒がしい日常にも随分と慣れた。


「ありがとう、みんな。結婚式は来週だね」

「嘘をつくな嘘を!」


 しっかし、クラスメイトも応援してくれるとは、ちょっと思ってなかったな。てっきり嫌われていると思っていたんだけど。

 だって蒼葉はいつも通りお堅い風紀委員長様で、規律には厳しいし、僕は平気で嘘ついたりいちゃついたりするから……。


「よしよし」

「わ、わたし犬じゃないわ!」

「うんうん」


 声援に応えて蒼葉を撫で回したり、ぎゅうううっと抱きしめたりとファンサービスをしながら自分自身もこの至福の時間に浸りこむ。


 本当は気安く撫でるなんて女の子にしてはいけないのだけれど、許可は取っている。恋人になったのだから、前よりももっともっと触れ合いたい……と。一年足らずでは全然足りない。もっともっとと貪欲に求めてしまう。


 それでも、高校を卒業するまではとプラトニックな関係のままだが。


「まさか僕が風紀委員長サマを本当に射止められるとは思ってなかったよね」

「そ、そんなこと言って……自信満々だったじゃない! ……確かに、私も、ずっと好きだった、んだけど……」


 尻すぼみになっていく言葉をしっかりと耳で捉えて口元が緩む。

 いやいや、自信満々なわけがあるか。すごく不安でなんならネガティブだったのを頑張って抑えて告白しただけだし。


 告白のときは蒼葉に随分と助けられた。

 蒼葉のほうがよほど勇気があるし、すごいよ。


「これからも、ずっと一緒にいたいね」

「なに言ってるのよ、ずっと一緒にいるのよ! 願望じゃなくて事実なの!」


 幸せというものを形にするのなら、きっと僕にとっては蒼葉になるんだろう。それくらい、幸せが溢れていた。


「あ、そうだ先生が呼んでたわよ」

「え……なにかな」

「わたしはなにも聞いてないけど……絵のことだったり?」


蒼葉にうながされて職員室に向かう。

去年、蒼葉を天使として描いた絵は結局銀賞に選ばれた。


今年出したコンクールの結果はまだなんだけど……まさか、ね。


「終わったら放課後、少しだけお出かけしましょう?」

「そうだね、いいの? 風紀委員長様」

「いいのよ、成績に影響がないなら息抜きは大事だわ?」

「そっか」


 今日も僕らは嘘をついて、騙されて、そして許して、好きあっている。

 そしてそんな関係はこれからもずっと続いていくのだ。


 僕はそう、確信している。


☆☆☆☆☆

これにて完結となります。

お読みくださったみなさま、たくさんの応援ありがとうございました!

★★★★★

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― 新着の感想 ―
[一言] 完結、お疲れさまでした! 面白かったです!お互い、好きすぎでニマニマしながら読みました。 また、第1話の表紙のおかげで顔を思い浮かべながら読めたのも嬉しかったです。 次作品も期待してます‼
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