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【表紙付き】完璧無比で幼馴染な風紀委員長様が不器用でポンコツなことを、嘘つきの僕だけが知っている!【完結】  作者: 時雨オオカミ
キューピッド達に背中を押されて

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28/33

君を傷つける嘘はつかない

 昼休み。

 僕はいつものように風紀委員会の部屋へとやってきた。


「ま、待っていたわよ雪春」

「え? うん。そっか」


 わざわざ待っていた発言までして、なんだかそわそわとした様子の蒼葉。

 肩のあたりにある前髪を無意識に指で手遊びし、ポニーテールのてっぺんにあるウサギのような白いリボンはぴょこぴょこと動いている。


 ……どうやら緊張しているらしい。いつもの癖だ。


「け、今朝のクッキーはどうだったかしら?」

「ん、美味しかったよ」


 授業が始まる前に一枚食べたが、ほどよい甘さのチョコチップクッキーでとても美味しかった。僕の好きな味にすごく近くて、でも、好きなメーカーのクッキーよりもよほど美味しく感じた。


 ……多分、蒼葉が作ってくれたものだからだ。

 だって好きな人の手料理なんだよ? 美味しくないわけがないんだ。


 まあ、たとえどんなに下手な料理だとしてもきっと僕は「美味しい」と言うんだろうけれど。

 僕のほうが料理が上手いとか、そういうのとはまったく関係なく、好きな人が作ってくれた料理というのはそれだけで天にも昇るような気持ちになるのに、それがさらに美味しいとなるとそれ以上の幸せはない。


 蒼葉は僕の言葉に硬直して、少し唇を震わせて両の手を胸の前で握りしめた。


「ほ、本当に? 本当に本当?」


 あれ、嘘だと思われたのか? 

 そりゃそうか、僕は嘘つきだもんな……そもそも信用されていないんだ。


「本当だよ、誓って。嘘つきだから信用されないかもしれないけど……」


 少し落ち込んで呟くと、蒼葉は「へっ!?」と素っ頓狂な声をあげて慌て始めた。んん? 


「そ、そ、そうじゃなくってね? えっと、その……わたし、たくさん練習はしたけれど、美味しいかいまいち自信がなくて……だからその……無理して『美味しい』って言わせちゃったら嫌だなというか……」


 目を伏せて蒼葉は不安そうにしている。

 なるほど、そっちが不安なのか。


「嘘なんかじゃないよ。僕はその手のことに関しては嘘はつかない。君を傷つけたいわけではないからね」


 こう言うとなんか最低男みたいだな。だけど嘘つきなのは性分だし。


「そのわりにはいっぱい嘘つくじゃないの」

「それはその……反応が見たいというか」

「ま、おもしろい嘘ばっかりだから別にいいわよ。今まで君の前でしか恥はかいたことないし」

「奇跡的にね」

「ええ、そうよ! 奇跡的にね!」


 あんなにもポンコツで迂闊なのに、僕の前でしかそのポンコツっぷりが出ないというのは奇跡としか言いようがない。みんなの前ではそれなりに気を張って生きているのかもしれない。


 ……その分、僕の前では気を許して『素』でいくれる。

 それが分かるから、嬉しいんだ。


「蒼葉、本当だよ」


 タタッと近づいて彼女の手を取り、そして握りしめる。

 それだけで蒼葉は顔を真っ赤にして放心したように力を抜いた。


 姫宮さん達の言葉が本当なら、本当に本当に、自惚れじゃなくて蒼葉が僕のことを想ってくれているというのなら、きっと嫌がらない。

 どころか、きっと喜んでくれるはず。そう信じて……少しだけ、一歩前へと踏み出すことにしてみたんだ。


 僕自身のことが信じられなくても、蒼葉と僕が両想いだって後押ししてくれた姫宮さんや、素直な反応を見せてくれる蒼葉のことは信じることができる。


「うん……信じるわ、雪春」


 僕自身が嘘つきの自分を信じられなくても、蒼葉は僕のことを信じてくれるって知っているから。

 蒼葉の瞳は、泣きそうに潤んでいるような気がした。


「なんなら、まだ少し残っているから一緒に食べるか?」

「え、でも……雪春のために作ったのに」

「蒼葉と食べるのが、僕は、す……好きなんだよ」


 直接の告白はできない。でもこうして言うなら、できる。

 愛してるはまだ言えないけれど、少しでも蒼葉に想いが伝わるならそれでいい。


「す……!? わ、分かったわ。その、は、早くお昼ご飯食べましょう!? 時間がなくなっちゃうもの!」

「……そうだね」


 そうだった。お昼休みに入ってから、わりと時間が経ってしまっている。

 お昼ご飯を食べずに昼休みが終わってしまう! 


「じゃ、じゃあ、いつもみたいに」

「あの!」

「ん?」


 いつもの席に着いて弁当を置いたら、蒼葉が強めの口調で声をあげた。

 なんだろうと思って顔を上げると、そのまま真正面の席ではなくて、僕の隣の席へ移動してくる。


「今日は……隣で食べてもいいかしら?」


 言葉を失った。

 照れるように目を泳がせて、髪をいじる蒼葉。「もし断られたらどうしよう」なんて思いが透けて見えるほど、不安げな表情。


 僕が断るわけ、ないのにね。


「もちろんだよ」


 ぱあっと花開くように咲く笑顔は、春に咲くどんな花よりも可愛らしく、そして美しく見えた。


 ◇


「あとね、雪春。も、もらってほしいものがあるの」

「なに?」


 お昼が終わって、教室に戻る直前に蒼葉から長方形の紙を渡され首を傾げる。


「秋音先輩と姫宮さんが、スイーツバイキングのチケットを手に入れたのだけれど……行けなくなっちゃったらしくて……その、わたしにくれたの。だから、一緒に、行けたらいいなって思って」


 やはり目が泳いでいる蒼葉に、甘く柔らかい気持ちになって笑う。


「受け取るよ」

「う、うん! 今度の日曜日、行きましょうね!」

「りょーかい」


 そうして僕らは教室に戻るのだが……その夜、ぼくはチケットに書かれた『カップル割専用チケット』の文字を見て頭を抱えた。


 ……姫宮さん達、そもそも僕らに渡すためにこのチケット取っただろ!? 

 明日から日曜日まで、どんな顔して蒼葉と会えばいいんだよ。


 顔を赤くして葛藤しながら、僕はなんとか当日まで平然としたフリを続けるのだった……。

完結までもう少し。

前回、姫宮と秋音先輩初対面じゃなくね?という感想をいただき、「あっ」ってなったのでこのあと加筆修正しておきます。


ご指摘ありがとうございます。

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