表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ワールドスター  作者: 箱丸祐介
伝説と壁
14/31

第14話 秋季大会!

皆さんこんにちは、約1ヶ月ぶりの投稿です。

お待たせしてしまい申し訳ないのもあるのですが、今の現状、小説に関してはスランプで、動画制作に関してはPCのスペック不足と多忙により何も出来ず。

助けて欲しいくらいです。



2週間後、菜月の引退試合のために和田野と球場へ向かっていた。


「そういや菜月ってポジションは?」

「あら、ちゃん付け辞めたのね」

「いや、練習してる時に、いい加減1つしか離れてないんだからやめてって言われましたよ」

「あらそう、ショートよ。あなたと一緒ね」

「いや、俺はサード以外ならどこでも守れますけど」

「でも、守備に着くならショートでしょ?」

「いや、本当はサード着きたいですよ、強打者感(小並)あるし」

「じゃあなんでサードを守らないのかしら」

「サードゴロとか捕球して1塁投げると、だいたい鋭すぎて取れないらしいです」

「手加減を覚えることも大事ね」

「ですね」



練習試合の会場に足を運ぶと3塁側に菜月のチームが、1塁側についこの前知り合った気がする少女が見えた。


「ん、相手のチームって」

「埼玉の強豪らしいわよ」

「そんなとこで4番打ってんのか、スゲーな」


本当にすごいと思う、でもこういうことって社会人野球で、経験積んでた奴が言うとなんの褒めにもならないもので。

しかし書面上は、実績と記録の残るシニア野球で活躍している選手と経験だけを積んできた人間の差は推薦などでの面では大きく差が出るわけで。


「がんばれー、雪ー!!」

「あなたは全く、どっちを応援しに来たんだか」

「下手したら雪との方が仲良いですし」



練習試合の結果は6対4で菜月のチームが勝った、ただし菜月は4打数1安打3三振。

一方で雪は4打席3安打2ホーマーの4打点。

これじゃ、どっちが来年から高校生かわかんねーな。


「菜月、どうだった? 高校への手応えは」

「なんにも」

「そいですか」


「菜月!」


球場から出て菜月と話していると、スタンドでも見かけた女の子が走ってきた。


黒髪のショートカットのその少女はよく和田野宅で顔を合わせていた人物であった。

菜月の幼なじみである女の子、活発な菜月とは裏腹に大人しい性格の少女で、よく菜月に引っ張られている。


「今日残念だったね」

「試合には勝ったんだから、残念てことはないだろ」

「でも、菜月活躍できなかったし」

「勝負ってのは時の運だからな、どんなにすごいプロ選手でも140試合全部活躍するなんてことないんだしな」

「祐介!」


手を振りながら走ってくるジャージ姿の少女を妹達のように可愛く見えてきた、重症患者か何かかな俺は。


「よっ、雪。今日は大活躍だったな」

「負けちゃったけどね」

「その子は?」

「この前知り合った女の子っすよ、相手チームの4番の」

「あぁ、あなたらしいわね」

「じゃあ今日は、私じゃなくてその子を応援しに来たんだ?」

「そこまで入ってないだろ菜月」

「そういう事でしょ! もうっ知らない!!」

「あ、待ってよ菜月!」


「女心の方はまだまだみたいね」

「んな事言われましてもね、俺は野球だけ出来ればそれでいいっすから」

「そういえば1回戦の相手聞いた?」

「聞きましたよ、楽な相手でしたっけ」

「そ、あなたがいれば楽な相手よ」

「いや、居ますよ? 居なきゃ人数足りないし。いつまでも桜屋に頼りっぱって訳にも行かないから、来年の新入生は期待しないとですね」

「なになに、秋大会の話?」

「そうそう、勝ち戦の話をな」

「慢心は良くないって言ってなかった?」

「今回はガチで弱小レベル、山下くんでも抑えられるような」



「3回からの先発の大乱調で、5回終了で7対4ですか。して、どないしますか」

「どうするも何も」

「リードが悪いのかもね?」

「あん?」

「いや、俺が悪い」

「まあいいや、誰が同行以前に。キャプテンどうします?」

「あ、あぁ。どうすればいいんだろうな」


頼りなき瀬良新キャプテンの元。


先発山下

捕手鬼道

ファースト桐生

セカンド和田野

ショート俺

サード瀬良

以下外野はいつも通り。


というオーダーで組まれた秋季地区大会1回戦、相手は弱小白瀬学園。


「仕方ない、山下くん次ヒットでたら交代ね」

「は? 誰と」

「俺」

「お前まだ腕は完治してないんだろ!?」

「左で軽めに投げるし、元々7回以降は俺が投げる予定だった、そうやって瀬良先輩とも相談してたしな。それが2回ばかし早くなっただけだから」

「医者からはなんて?」

「なんも言われてないし聞いてない、それになんか言われても聞かない性格なのは分かってるでしょ?」

「だろうな」

「んじゃほれ、ファースト山下くん、ショート桐生先輩でいいっすよね? キャプテン」

「いや、しかし」

「いいんじゃないかしら、何もしないで負けるのが1番嫌でしょ、辻本くん以上に私達も」


俺が登板するという発言に暗い表情になる瀬良キャプテンと、桐生を除いたメンバー達。

しかし、和田野先輩の一言に、世良キャプテンは俯いたままの頭を上げた。


「いいだろう、ただし痛みが出たらすぐに言え、そうなれば棄権する」

「へーへー、大丈夫っすよリハビリはしてましたから」


本来骨が折れた時などは強い振動を与えるような行動は症状を悪化させるのだが。


「残念ながら、この怪我とは一生の付き合いになりそうだしね」

「え?」


近くにいた桜屋だけが聞こえたであろうその呟き、自分の事は自分自身が一番よくわかると言うが。

全くもってその通りで。



その日は危なげもなく、6回ワンナウトでヒットを打たれた山下と交代し、3回3分の2をパーフェクトに抑え。

打線に火が8対7で辛勝にはなったが、1回戦を突破した。


「あと一勝すれば地区大会進出、地区大会で2勝すれば春の甲子園と」

「肩の調子は?」

「投げたわけじゃないっすから、なんともないですよ」

「そ、ならいいけど。くれぐれもチームの為とか言って選手生命を断つようなことはしないでね」

「あら、そんなこと言って、多和田先輩はツンデレなんだから」

「今の話と、私がツンデレって話がどうやったら繋がるのかしら」

「ツンデレは認めるんすね」

「違うわよ!」

「どちらにせよ、うちの選手不足は深刻ですし、何人か帰ってきてくれれば話は早いですけど、俺らが夏の甲子園勝っちゃったせいで更に戻り辛くなってるんじゃないですか?」

「そうね、知り合いには何人か声をかけてるんだけど」

「え、多和田先輩知り合いとか友達とか親友とか彼氏とかいるんすか?」

「あなたは私をなんだと思ってるのかしら」


そう言いながら俺の首をチョークスリーパーする先輩の姿は、まさにデレデレの乙女そのもので。


「いたたた、痛い痛いよ先輩。俺けが人!」




県大会2戦目は何事もなく終わり、平常運転で授業中にタブレットでニュースを確認していると、ふと目に入ったものがあった。


『蓮舫の若きエース、野球マンに襲われ重体。蓮舫は秋季大会の戦力低下か』


ニュースを開き、内容を確認すると。野球マンの書き置きが残された現場に2名の高校が倒れているのが発見され。

うち1名は搬送後に死亡したという内容であった。


「重体者は登坂哲人、死亡者の方は――」


ガタッと瞬間的に体が反応し椅子が倒れ、授業中の教室の中に椅子の倒れる騒音が響いた。


「辻本〜、うるさいぞ」


「死亡者は成宮、あの夏大会のバッテリーで哲人君の幼なじみって言ってた? おいおい、嘘だろ」

「お兄様、授業中ですわよ」

「悪ぃ、しばらく帰れなくなるかも。先生! 体調悪いんで早退します!」


貴重品の入ったバックを持ち出し、教室の出口に向かって走り出す。


「桜屋! 悪いけど俺のタブレット部室のロッカーに入れといてくれ!」

「あ、うん」


颯爽と教室から飛び出て教室のある3階から階段を駆け下りる。


「どうしたんだろう、辻本くん」

「お兄様のタブレット内容見てみたらどうですか?」

「そうだね、見てみようって。ええ!?」

「なんだ! 桜屋まで!」

「いえ! なんでもないです!!」


学校の外でいつも待機している車に乗り込み、携帯で似たようなニュースを探し始める。


「坊ちゃんまだ授業中では?」

「車出して! 最寄りの駅まで!」

「はーい」


蓮舫関連を探すも、出てくるのは少し前に終わった甲子園のものばかり。

野球マン関連はここ数週間で急激に増えた野球マンの被害がニュースになっているだけで。

さっきのはたまたま出てた速報だったのだろうか。


「ダメだな、ニュースは何もなし。ラジオはなんか流れてる?」

「いんや、スポーツニュースはこの時間やってないっすからねぇ。なんかあったんすか?」

「愛知でまだ野球マンの被害が出た。被害者が知り合いだから会いに行く」

「なら、目的地は愛知でいいっすか?」

「いいけど、ガソリンもつの?」

「いつも満タンに入れてますよなくなり次第適当なとこで入れてきゃいいっすし」

「ま、俺の監視も含めた仕事か」

「そうっすね」

「否定しないのね」

「そういう仕事っすから」

「例の件親父はなんだって?」

「俺はなんも聞いてないっすよ、ただ相手が相手っすから」

「仕方ねーわな」

「そうっすね」


携帯を取り出し、知り合いでなおかつ事情をよく知ってそうなブラコンに電話をかける。


『もしもし』

「うっす、今まだアップ前ですよね? 少しいいですか?」

『哲人くんの事?』

「ですです、どこの病院居るか聞いていいですか?」

『あ、うん。蓮舫近くの総合病院だよ、メールで場所教えるね』

「了解です、ありがとうございます」

『こちらこそ、哲人くんを前向きにしてくれてありがとう』

「元々前向きなやつでしたよ、あいつは」


電話を切り、小さくため息を吐く。


「はぁ、蓮舫の近くだって」

「了解っす」


全く、ココ最近は何から何まで頭を悩ませるようなものが多い、野球関係以外はどうしてこんなに面倒なんだか。

秋になって輝石は体調崩して入院するし、1年前に破談になったと思ってた政略結婚の話は復活するし。


「あー、もう。人生ってめんどくさい」

「そうっすかねぇ、楽しいっすよ?」

「四六時中人を監視してるやつに言われても、説得力ねーわ」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ