未完
まず始めに感じたのは、音だった。
川のせせらぎとかそんなものではなく、高いところから水が落ちてくるような、それでいて滝のように轟々と響く感じの音ではなく、もう少し優しい感じの音だ。
雨の音かと思ったが、しかし俺の体がどうやら濡れていないらしいと分かると、どうやらこれは雨の音でもないようだ。
いや、もしかしたら家の中かもしれないが……しかし、雨の音とも何か違う。
(……なんだろう、この音?)
他には、何かガラガラと転がるような音とか、人の話し声や足音も聞こえてくる。
あとは……蹄が地面を蹴る音とか、ベルを鳴らす音とか……?
……にしても、その人の話し声というのが何だかおかしい。
賑やかな街の生活風景を彩るような感じではない。
何か不安がるような、心配しているようなそんな感じのざわめきだ。
……なんだろう?
いったい、何が起きているんだ?
気になった俺は、少し瞼を開けてみようとした。
何だか瞼が重い気がするが、頑張って外の様子を見ようと目を開いてみる。
そうやってなんとか目を開けようと身動ぎしてみると、全身になぜか鋭い痛みが走った。
「……ッ!?」
まさかとは思うがあのブリキ、俺の体を修復させずにそのまま持ってきたんじゃないだろうな?
俺は一瞬そんなことを考えながらも、薄っすらと開いた視界に意識を向けた。
オレンジと白のレンガが敷き詰められた街道。
そのレンガとレンガの隙間を走る溝に、何か赤い液体が流れているのが見えた。
(何これ?)
全身の痛みと、どうやら地面に臥せっているらしい状態の俺の体。
そして、心配そうな周りの人たちの声。
……もしかしてだけど、開幕早々、俺ってば死にかけてる?
そこまで頭の中で理解した時、ものすごい眠気が襲ってきて、俺は思わず意識を手放した。
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