78話 カウントダウン31
地響きのような音が近づいていた。
一体、どれだけの数に膨れ上がったのか。
これまで倒した魔物のすべてがゾンビになっているのなら、そんな数は想像したくもない。
砂漠の入り口で、俺たちはシャルロッテが率いるゾンビ軍団を待ち構えていた。
「すぐに助けを呼んでくるから絶対に無茶はしないで」
佐々木さんはそう言って、うざっときの二人と本陣のほうに飛んで行った。
残りの第二部隊のみんなは、陸路で後から向かうはずだったが……
「俺も残るよ、ぶっさん。鈴木の敵討ちだ」
「私も残る。きっとゾンビは火に弱い」
第二部隊の中でも消耗が激しい、矢沢くんと如月 焔さんが残ると言い出した。
「いらねえよ、俺様一人で大丈夫だ。オマエら、フラフラじゃねえか」
「ぶっさんも、見た目酷いぜ。似たようなもんだよ」
鰐淵くんと矢沢くんが笑い合う。
不良グループのメンバーはみんな亡くなり、彼らだけになってしまった。
止めても彼らは、残ることをやめないだろう。
でも、後の二人は……
「野田さんと如月さんは、行ったほうがいい。本陣に向かったほうが生き残る可能性は高い」
「言ったでしょ。ななみんは私の親友だった。あんな姿のまま、放っておけない」
「私も妹がいる部隊にゾンビを近づけたくない。やれるところまでやって、無理だと思ったら撤退するわ」
結局、十人になった部隊は、また半分の五人ずつに別れることになった。
それが本当に正しいのか、俺にはわからない。
本陣に合流したからといって、確実な安全があるわけでもないのだ。
そして、まさに、そのとおりだと言わんばかりに、俺の携帯からラインの通知音が鳴り響く。
携帯を取り出し、画面を確認すると、やはりそれはいつもの知らせだった。
『カウントダウン あと31』
仲間の死を知らせる。
これが俺のスキルなのか?
だとしたら、なんて残酷で無駄なスキルなんだろう。
「おい、見えてきたぜ」
砂漠の手前に広がる森に、うようよとゾンビが歩いてきていた。
統率などまるでない。
ゴブリンとハーピーとリザードマンのゾンビが、ぐちゃぐちゃに混ざっている。
どこだ?
俺はその中にいるであろうシャルロッテを探す。
彼女は、誰かに見せるために、俺たちの戦いを映像に撮っている。
だったら、この再会をドラマチックにするために、きっと目立つところにシャルロッテはいるはずだ。
「おい、アレ、なんだ? 冗談じゃねえぞ」
滅多なことでは動じない鰐淵くんが驚愕の声を上げていた。
どん、どん、という大きな足音と共に、巨大な魔物が近づいてくる。
それは、一番最初に倒した魔物、ドラゴンのゾンビだった。
そして、その頭の上に……
「そこにいたのか……」
いつものように、涼しい顔で笑う彼女がいる。
「シャルロッテっ!!」
気がつけば、俺は一人、仲間の静止を振り切って、シャルロッテの元に向かって走り出していた。




