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クラスメイトを全員殺された俺はその魂を武器にして復讐する  作者: アキライズン
第七幕

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75話 如月 八千代

 

「第三部隊、これより砂漠に突入する」


 私の声に合わせて、部隊の四人が静かに頷いた。

 いつも通り、皆、冷静だ。

 第二部隊を含め、半数の部隊を犠牲にしての進行に、大山おおやまは、声を荒げて小日向こひなたに抵抗していた。

 小日向の将軍ジェネラルスキルには、逆らえない。

 それがわかっていて、抗うのは時間の無駄ということを理解できないのか。


 第二部隊には、双子の姉であるほむらがいる。

 しかし、それでも私の心は乱れない。

 焔が小日向に見捨てられたのは、直情的な性格のせいだろう。

 小日向の判断は概ね正しいと言える。

 生き残るために、邪魔な部隊を排除していくのは仕方ないことなのだ。


橋下はしもと、どう? 気配はある?」

「いまのところ熱源反応はありません、八千代やちよ隊長。このまま進行しても大丈夫そうです」


 橋下のスキル、『ピット器官』は、微弱な赤外線放射、つまり熱を感知することができる。

 魔物の位置を把握するだけでなく、ドラゴン戦では、温度の変化により、攻撃するタイミングも見極めてくれた。

 安藤あんどう索敵さくてきスキルのように、広範囲の敵は把握できないが、慎重に進行すれば、問題はない。

 そう、ゆっくり慎重に、私達は確実に任務を遂行する。


「八千代隊長、大丈夫ですか?」

「……? あ、ああ、どうした、橋下? 私は大丈夫だけど」

「いえ、いつもより体温が上がっています。もしかして焦っているのですか?」


 焦る?

 何故、そんな必要があるのだ?

 私はいつも通りだ。

 早く任務を終わらせて、焔を救いたいなど考えるはずがない。


「……気のせいよ、橋下。砂漠が暑いから汗をかいているだけ」


 そうに違いない。

 自分にそう言い聞かせて、スキルで小さな氷を作り身体を冷やす。


「そうだぞ、橋下。如月きさらぎさんは冷静だ。この状況をちゃんと把握している」


 フォローをしてくれたのは、私の後ろを歩く根岸ねぎしだった。


「魔物の大群が押し寄せていると言ってただろう。僕がよく遊ぶゲームにも、そう言った要素があるよ。時間内にクリアしないと、絶対に勝てない敵が現れ、全滅してゲームオーバーになるんだ」

「根岸っ、これはゲームじゃないっ、それにまだみんなが助からないと決まったわけじゃないっ」

「落ち着けよ、橋下。らしくないな。この世界はゲームみたいなもんだよ。そう思わなきゃやってられない」


 焔は、姉はもう助からないのか。

 私は冷静なフリをしているだけで、どこかで焔をまだ助けられると思っていたのか。

 どくんっ、と自分でも体温が上昇するのがわかる。

 それでも、橋下はもう私に何も言わないでいてくれた。



「お、見えてきましたよ、城が」


 先頭を歩く橋下が、砂漠にそびえる城を最初に見つける。

 第二部隊が魔物を片付けてくれたおかげか。

 砂漠では魔物はまったく出現しなかった。


「油断するな、橋下。くまなく周囲を警戒してくれ」

「はい、大丈夫です。360度、すべて反応ありませ……」


 ばくんっ。


 突然だった。

 橋下がいきなり何かに飲み込まれる。

 確かに、周囲には魔物は存在しなかった。

 そいつは、砂漠の砂の中、地中から現れて橋下を飲み込んだのだ。


「サンドワームだっ!!」


 ゲームに詳しい根岸が叫ぶ。

 醜悪で巨大な芋虫のような魔物の口から、力なくだらりとぶら下がる橋下の足が見える。


「各自、戦闘準備をとれっ、魔物を討伐するっ」


 それでも、私はいつものように、冷静に、戦闘を開始した。




 

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