表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
クラスメイトを全員殺された俺はその魂を武器にして復讐する  作者: アキライズン
第七幕

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

82/121

71話 ビデオカメラ

 

 ビデオカメラを地面に叩きつけ、呆然と立ち尽くす。

 今、見た光景が信じられなかった。

 時任ときとうさんの予知で、死ぬはずだった二人に加え、さらに二人がゾンビになって死んでいる。


「……うそ、でしょ」


 動揺しているのは、俺だけじゃない。


「私がシャルロッテに救出を頼んだからっ!!」


 どんな時も、変な言葉を使って、場の空気を和ませていた時任さんが頭を抱えて、叫んでいる。


 俺はどこかでシャルロッテは、俺たちに協力してくれるんじゃないか、と甘い考えを持っていた。

 しかし、今回のビデオカメラの映像で、そんな気持ちはぶっ飛んだ。

 楽しそうに、ゾンビになった仲間を撮影するシャルロッテからは、悪意しか伝わってこない。

 怒りで頭が沸騰しそうになる。


「ぐっ、ふっ、ぐぅ」


 落ち着け。

 落ち着くんだ。

 さっきも、俺が冷静さを失って暴れ、みんなを危険に晒した。

 俺たちが慌てふためく様を見て、きっとシャルロッテは笑っている。

 あの女は何を目的にしているのか。

 魔物に侵略された城を取り戻すため、俺たちを救世主として、この惑星に召喚したと言っていた。

 だが、本当にそれだけなのか?

 最初からずっと違和感を感じていた。

 俺たちが最初、教会でドラゴンやゴブリンを倒した時のシャルロッテの言葉を思い出す。


『すごいわね。誰も死なないなんて。半分くらいは死ぬと思っていたわ』


 そうだ。

 シャルロッテは、最初の戦闘で俺たちに犠牲者が出なかったことを残念がっていた。


「……もしかして」


 足元に転がるビデオカメラを見る。

 地面に叩きつけ、バラバラになったはずなのに、元に戻っていた。

 このビデオカメラはシャルロッテのスキルなのか?

 シャルロッテがなんのスキルも持っていないと言っていたのは嘘だったのか。


 もう一度、ビデオカメラを手にする。

 名波ななみさんたちがゾンビになった所で画面は止まっていた。

 俺は再生ボタンを押さずに巻き戻しボタンを押す。


「……やっぱり、そうなのか」


 巻き戻っていた画面が、違う場所に切り替わる。

 渓谷だ。

 ハーピーと戦い死んでいった加藤かとうくんや佐藤さとうくんが映る。

 彼らの無残な姿に目を背け、さらに巻き戻していくと、今度はリザードマンが襲ってきた時の川原が映った。

 森山もりやまくんが、頭を狙撃され、倒れる映像が見えた所で、ビデオカメラを停止した。


「シャルロッテは、ずっと、俺たちを撮影しているんだ」


 何のために?

 誰かに見せるためだ。

 そう、シャルロッテの服装は最初からおかしかった。

 ゴスロリ風の衣装に、ピンヒールを履いている。

 まるでわざとらしい舞台衣装だ。

 ここに来た時に受けた説明も、俺たちに説明するというより、他の誰かに説明しているようだった。

 なにより、シャルロッテの目線は、いつも俺たちに向けられていない。

 最初から彼女はカメラ目線だったのだ。


 不意に視線を感じて、上を見る。

 そこには何も無いはずなのに、なにかの存在を強く感じた。


 今も撮影されている。

 ビデオカメラは一台じゃないんだ。


 そうか。そうなのか。

 俺がリザードマンにやられた時、シャルロッテが俺にキスをした意味を理解する。

 シャルロッテは、盛り上げているのだ。

 俺たちの戦いを、映画のように盛り上げるために、クラスメイトの命まで利用している。


「ふざっ、けるなよっ! シャルロッテっ!!」


 激昂し、今も撮影しているであろうシャルロッテに向けて叫ぶ。


 だが、それすら、シャルロッテの思い通りの、映画のワンシーンのようでしかなかった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ