67話 野田 文香 その5
それは最初から計画されていたのか。
残酷な二択。
泉くんは私達、第二部隊を救うことを選択し、第八部隊の仲間を失った。
「泉くんのスキルはわからない。でも、仲間が死んだらカウントが減っていくの」
私を運びながら、佐々木さんが説明してくれる。
「とっきーの予知で、名波さんと久米くんが亡くなるってでてたの。でも、野田さんが見たカウントは……」
「……32だったわ」
最初の数字は36だった。
予定より、2人多く亡くなったのだ。
出発の時、泉くん達は、すべてをシャルロッテに託して来たという。
その結果がこんなことになったのは……
「オラァ、コイツで終わりだっ!!」
鰐淵くんが最後のゴーレムを破壊する。
だけど、終わりじゃない。
この惑星にいる魔物を全部倒しても終わらないだろう。
私はすでに確信していた。
本当に倒さないといけないのは、魔物なんかじゃないことに。
ゴーレムを討伐した後、砂漠前まで戻り、私達はキャンプすることになった。
簡易テントを二つ作り、第二部隊と救出部隊に分かれる。
矢沢くんと如月 焔さんの二人はスキルによる消耗が激しく、本隊まで戻れなかったからだ。
二人を早瀬さんと宗近さんが介抱していた。
私は泉くんのことが心配で、隣のテントを覗きに行く。
……そこにとんでもないものがあることも知らずに。
「野田さんっ、これ、誰が持ってきたのっ」
テントの入り口で宇佐さんが話しかけてきた。
手にビデオカメラを持っている。
「え? 知らないよ。誰もビデオカメラなんて持ってきてない」
傷だらけの汚れたビデオカメラ。
なんだろう。
すごく不気味なものに感じてしまう。
「それ、どこにあったの?」
「テントの前、第二部隊の誰かが置いたと思ってた」
「もう見たの?」
「……見てない。なんか見たらいけない気がする」
私も同じ意見だった。
でも、これは多分、あの女のメッセージだ。
その時だ。
プルルルッ、と大きな着信音が鳴り響いた。
携帯がなったのか?
ライン通知以外、すべてが遮断されていると思っていた。
慌てて自分の携帯を取り出すが、音は鳴っていない。
「……俺のだ」
青い顔をした泉くんが鳴り響く携帯を握っていた。
それをゆっくりと耳元に持っていく。
その顔が激しく歪み、吐き出すようにその名を呼んだ。
「シャルロッテっ」
うざっときの3人や鰐淵くんが泉くんのほうに注目する。
「お前はっ、一体何をしたんだっ! みんなはっ!?」
泉くんが宇佐さんの方を見た。
いや、正確には宇佐さんが持っているビデオカメラを見たのだ。
「……それを見ろというのか」
泉くんはもう携帯を持った手を降ろしていた。
携帯から通話が終わったことを知らせるツーツー、という音が漏れている。
やっぱりそうだ。
なぜかあの女は、泉くんに絶望を与えようとしているのだ。
見ないで。
そう、言おうとしたが声が出ない。
泉くんが宇佐さんからビデオカメラを受けとって、スイッチを入れる。
そこから地獄のような光景が流れ出した。




