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クラスメイトを全員殺された俺はその魂を武器にして復讐する  作者: アキライズン
第六幕

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66話 野田 文香 その4

 

 いずみくんの錯乱は止まらなかった。

 携帯の画面を見ながら、泣き叫ぶような声で吠えていた。

 その携帯からラインの通知を知らせる音が鳴る。


『カウントダウン33』


 画面を覗き込むと、そう表記されていた33の文字が、32に変わった。

 それを見た泉くんが、頭を掻きむしり、携帯を叩きつけようとする。


「ダメッ!!」


 無理矢理抱きついて、携帯の破壊を阻止した。

 この世界でスキルが使えるのは、この携帯が影響している。

 泉くんがどんなスキル持っているのかわからないが、スキルなしで、この先、生きていけるとは思えない。


「落ち着いてっ! お願いっ! 泉くんっ!!」

「見捨てたんだっ! 俺がっ、みんなをっ!!」

「わかったっ、わかったからっ!!」


 今、私にできることは、泉くんを一刻も早くここから連れ出すことだ。

 鰐淵わにぶちくんがかなりの数を撃退してくれだが、周りにはまだ多くのゴーレムが挽回している。


野田のださんっ! 今、行くっ!」


 低空飛行で砂漠に追突した佐々ささきさんが、よろめきながら飛んでくる。


「待って、来ないでっ! 出来るだけ離れて着地してっ!」


 まだ試したことはない。

 私のスキルは、自分と誰かを入れ替えるだけのスキルだ。

 だけど、砂漠の戦いで何度も使っているうちに、だんだんと使える距離が伸びていった。

 そして、さらにスキルが進化していくのを感じている。

 大丈夫。きっと出来るはずだ。

 私を信じてくれた佐々木さんが、旋回して一気に戦場から遠ざかる。


「また後でね、泉くん」


 ななみんはきっともう生きていない。

 私も泉くんと一緒に泣けたらどんなによかっただろうか。

 でも、それはななみんがきっと許さない。

 私はどうにか頑張って、泉くんを笑顔で見送る。


入れ替わり(チェンジ)


 かなり離れた位置で佐々木さんが着地したのを見てから、自分ではなく、泉くんと佐々木さんの位置を入れ替えた。


 これで、もう泉くんが戦うことはないはずだ。

 後は私達で……


 スキルの使いすぎで、意識が飛びそうになり、倒れそうになる。

 自分と誰かを入れ替えるより、誰かと誰かを入れ替えるほうが体力を激しく消耗するみたいだ。


「野田さんっ」

「ごめんね、佐々木さん。最前線に連れてきて」

「ううん、ありがとうっ」


 泉くんと入れ替わった佐々木さんに支えられ、なんとか倒れずにすむ。


 まだこれからだ。

 鰐淵くんだけでは、全部のゴーレムは倒せない。

 だけど、私と佐々木さんのコンビなら一気に片付けることが可能なはずだ。


「まだ飛べる佐々木さん? いいアイデアがあるんだけど」


 私の考えに佐々木さんが目を丸くする。


「ボクは大丈夫。でも、野田さんが……」

「私も大丈夫。まだまだ頑張れる」


 そう、弱音なんて吐けない。

 ななみんがいないなら、その想いは私が引き継ぐんだ。


 佐々木さんが私を抱えて、高く高く上昇する。


入れ替わり(チェンジ)


 目が眩みそうになるような上空で、地上のゴーレムと私の位置を入れ替えた。


 佐々木さんが私と入れ替わったゴーレムを地上に落下させる。

 ゴーレムが密集するど真ん中にだ。

 凄まじい衝突音の中、無数のゴーレムが一気に破壊される。


「負けないよ、ななみんっ」


 破壊されたゴーレムの間を走り抜け、空中の佐々木さんに向かって手を伸ばす。


 そっ、とななみんが私の背中を押してくれる。


 そんな気がして、私は力強く頷いた。





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