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クラスメイトを全員殺された俺はその魂を武器にして復讐する  作者: アキライズン
第六幕

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65話 鈴木 恭弥 その2

 

 いつもの俺ならすぐに逃げ出していた。

 ゾンビになった3人とは友達でもなんでもない。

 いや、友達であったとしても関係なかった。

 すべてにおいて、他人などどうでもいいと、いつも思っていたからだ。


 なのに、俺は逃げずに立ちすくむ。

 ゾンビになって、リザードマンの臓物を貪る3人をそのままにしたくないと思ってしまった。


「河合、走れ。先に泉達の所に向かってくれ」

「えっ、いやだよっ! 一緒に行こうよっ!」

「いいから行ってくれっ! 見せたくないんだっ!」


 蜘蛛の糸(カンダタ)のスキルを発動させ、両手から糸を出す。


「これから、みんなをバラバラにするから」


 このまま、3人をゾンビのまま、残していけない。


「……わかった。終わったら追いかけてきてね」

「ああ、すぐに行く」


 河合が走り出したと同時に、大量の糸を撒き散らす。

 ここが森ということが幸いする。

 木と木の間に糸を張り巡らせた。

 最初に近づいてきた久米くめゾンビが糸に触れた瞬間、周囲にある糸が一気にピンと張り詰める。


 ハーピーとの戦いでは、何重にも巻いた糸で、自分自身を守るだけで精一杯だった。

 だが、今はピアノ線のように頑丈になっている。

 スキルは使えば使うほど成長していくのだ。


 糸により、久米ゾンビが細切れになって、ボトボトと地面に落ちていく。


「いつもパシリご苦労さん。パン一個余ったんだ、食べるか?」


 久米を都合よくパシリに使うために、パンをあげたことを思い出す。

 いつも人を利用することしか考えてこなかった。

 久米は俺たち不良グループを憎んでいただろう。

 なのに、ハーピーに襲われた時、命がけで俺たちを救いにきてくれた。


「いままでありがとう。ゆっくり休んでくれ」


 生きている間に言えなかったことを後悔する。

 俺にできることは、終わってしまった仲間を、せめて安からに眠らせてやることだけだ。


「う、あぁ、ぃあぁ」


 久米ゾンビに続いて、今度は名波ななみゾンビが近寄ってくる。


「その姿、泉には見せたくないよな」


 名波が糸に触れた瞬間、同じようにバラバラにしようとした。

 なのに、身体が動かない。

 突然、背中になにか熱いものが突き刺さる。


「ダメよ。それ、彼に見せるんだから」


 後を振り返ると、そこにビデオカメラを持ったシャルロッテが立っていた。

 いつのまに、そこにいたのか。

 まったく気配に気がつかなかった。


「オマエ…… がっ」


 大量の血を吐いたために言葉がでない。

 シャルロッテが持っているのは、ビデオカメラだけではなかった。

 右手にビデオカメラ、左手に血塗れのナイフが握られている。

 それで俺の背中を刺したようだ。


「あまり介入したくなかったけどね」


 慣れないことをしたからか。

 それとも罪と罰なのか。

 途絶えそうになる意識の中で考える。


「後でうまく編集するわ。私の所はカットしましょう」


 俺は最後に何ができるのか。

 張り巡らせたスキルの糸は全部解除されている。

 名波をバラバラにする?

 違う、今、1番しなくてはいけないことは……


 一本だけ、残った命の全てを込めて一本だけ糸を作り出す。


 俺の背後から名波が迫っていた。

 それをシャルロッテが嬉しそうな顔で撮影している。

 気づかれないよう、静かに静かにシャルロッテの首に糸を巻き付ける。


 名波が俺の首に噛みつく瞬間。

 シャルロッテが大きな笑みを浮かべた瞬間。

 最後に糸をギュッと絞る。


「……俺が、カットして、やるよ」


 シャルロッテの首が飛び宙に舞う。

 爆発でもなんでもしたらいい。

 名波に噛みつかれながら、目を閉じようとする。

 だが……


「残念ね」


 首だけになったシャルロッテは、それでも笑みを崩さなかった。


「これぐらいじゃ死なないのよ」


 ぽんっ、と飛んだ首を、首のない胴体が受け止める。


(……やっぱり、らしくないことはするもんじゃない)


 それが俺の人間としての最後の意識だった。




 

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― 新着の感想 ―
[一言] 面白い。どうやって抗ってどうやって今に繋がるんだろう。応援してます。
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