表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
クラスメイトを全員殺された俺はその魂を武器にして復讐する  作者: アキライズン
第六幕

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

71/121

61話 カウントダウン 33

 

「もうすぐ着くわ。準備してて」


 佐々ささきさんにそう言われて、腰のベルトからナイフを取り出した。

 ハーピーがいた渓谷を抜けた所で、五人は二手に分かれる。

 宇佐うささん、時任ときとうさん、鰐淵わにぶちくんは、地上から、俺と佐々木さんは上空から第二部隊の救出に向かう。

 後ろから佐々木さんが俺を遠慮がちにそっと抱えて飛んでくれていた。


「あまり無茶はしないで。救出メインだからね」

「わかってる」


 スキルのない俺に大した戦闘は出来ない。

 リザードマンを退治しにいった時にそれはつくづく実感した。

 ナイフはあくまで、もしもの時の護身用だ。



「これ、持っていけよ」


 そう言って田中たなかくんが渡してくれたナイフは、以前自分が作った槍もどきとは比べ物にならないほど良く出来ていた。


 短剣にちかい少し大きめのナイフは、田中くんが硬めの石を砕き、研磨した後、リザードマンの爪を埋めこみコーティングしてある。

 黒々とした鈍い光を放つナイフは、まるで芸術品のように綺麗だった。


「あ、ありがとう。大切にするよ」

「あげたんじゃない。帰ってきたら返せよ」


 こちらを見ずにそう言った田中くんの表情はわからない。

 だが、なんだか照れてるんじゃないかと勝手に想像してしまう。


「ほら、名波ななみさんも渡しなよ」

「え、あ、う、うん」


 河合かわいさんに押されて、名波さんが俺の前に来る。


「あの、これ、良かったらお守りに持っていって」


 そう言って名波さんが渡してきたのは、合格祈願と書かれたお守りだった。


「受験の時の?」

「う、うん。ご、ごめんね、場違いだよね」

「そんなことないよ。ありがとう」


 名波さんとのやり取りを河合さんが後ろでにやにやしながら見ている。


「あ、ワタシは別に何もないからね。でも、怪我したら治してあげるから、ちゃんと帰ってきてね」

「仏の顔も三度までじゃなかった?」

「優しいからね、ワタシ。四度目もあるみたい」


 笑ってピースサインする河合さん。

 彼女のスキルがあるおかげで、どれだけ救われたことか。

 負担を減らすためにも、なるべく誰も傷を負わずに帰りたい。


「お前ら待ってろよっ、すぐ帰ってくるからなっ!」


 鰐淵くんが鈴木すずきくんと久米くめくんに向かって拳を突き上げていた。

 またすぐにみんなで再会できる。

 この時はまだ、そう信じて疑わなかった。



「見えたっ、第二部隊だっ!」


 砂漠の入り口付近に砂で出来たような魔物が溢れている。

 疲弊しているようだが、まだ五人とも無事のようだ。

 大丈夫。

 彼らを救って、みんなとすぐに再会する。

 シャルロッテに名波さん達のことを頼んだのは不安で仕方ないが、もう彼女を信用するしかない。


 その時だ。

 携帯にラインの通知を知らせる音声が鳴った。


 ……まさかっ!?


 間違いであってくれっ、と切に願う。

 震える手で携帯を取り出し画面を確認する。


『カウントダウン あと33』


 仲間の死を知らせる無情な報告に、目の前がぐにゃりと歪む。


 俺の中で爆発するように何かが弾けて、ぶっ壊れた。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ