禁話 執筆
警告
この話を読んではいけません。
禁幕は世界観が崩れる危険性があります。
禁幕は本編とは関係ありません。
不快に思う方は是非読み飛ばして下さい。
シャルロッテが作ったビデオ映像を持ち帰り、モニターにセットして、ロッキングチェアに座る。
腰のS字カーブに合わせた曲線が頭や背中、腰、ふくらはぎなどを優しく包み込む。
とっておきのポップコーンの袋を開けて、コーラの栓を抜く。椅子を前後に揺らしながら電源を入れた。
モニターに映像が流れてくる。
時系列をうまく利用し、編集されていた。
肝心なところは明かさず、焦らすことも忘れない。
「……相変わらず、えげつないな」
シャルロッテの演出は基本、どSだ。
人の死ですら、演出の為に操っている。
三人がゾンビの残骸の中で抱きしめ合う。
血にまみれ、腐った肉の中で最高の笑顔を見せる。
これで終わりでいいはずだった。
だが、シャルロッテはここでカメラを止めない。
パチパチパチ、と手を叩く音が聞こえた。
「すごいわ。あそこから全員生き残るなんて」
映像を一時停止する。
三人の前に現れたシャルロッテ、映像は足元までは映っていない。
しかし、明らかに彼女の右足が不自然に動いている。
何かを蹴飛ばしたのだろう。
それは、後に明らかになる。
「作戦成功ね。どう? いいアイデアだったでしょう」
「ああ、聞いた時は頭がおかしいと思ったけどな」
画面ではシャルロッテと田中が話している。
その背後、名波と久米がいる場所に、先程までなかったものが映っていた。
久米の足元にあるそれは、間違いなくシャルロッテが蹴り飛ばしたものだ。
頭だけになったゾンビの頭。
それがゆっくりと久米の足に噛み付ついた。
「な、な、な、ななみ、さん」
「いやだ、久米くんっ」
ゾンビになった久米が名波に襲いかかる。
「あら、残念」
映像から聞こえるシャルロッテの声は少しも残念そうではなかった。
「ハッピーエンドにはならなかったわね」
ハッピーエンドでも良かったのではないか?
だが、シャルロッテはそれを許さない。
彼女の中には、言葉では表現できない異様な何かが渦巻いている。
名波がゾンビになり、画像が終わる。
ため息をついて、椅子を大きく動かした。
もう少し余韻に浸りたいが、あまり時間がなかった。
これを観測者達に伝えなくてはならない。
モニターの送信ボタンを押す。
いつものようにエラーメッセージが出た。
「容量が大き過ぎます。その画像は送れません」
やはり、そのまま送ることは出来ない。
また、この映像を文章に変えて送るしかない。
人を惑星に一瞬で送る技術を持つ観測者に、何故、映像が送れないのか。
彼らとのやり取りは、お互いに文字だけしかない。
シャルロッテに渡している観測者達の感想には、いつも少し手を加えて渡している。
「読む」の所を「観る」に変えていた。
シャルロッテが命がけで作っている映像を俺が陳腐な文章に変えていると知ったら彼女はどう思うだろうか?
案外、すでに気がついているかもしれないな。
キーボードを叩く。
これまで、こんな文章を書いたことなど一度もなかった。
だけど、少しでも伝えなくてはならない。
ランキングに残り、消滅を避ける為に。
俺はひたすらキーボードを叩き続けた。




