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クラスメイトを全員殺された俺はその魂を武器にして復讐する  作者: アキライズン
第五幕

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52話 田中 三郎

 

 暗闇の中を闇雲に走っていた。

 生い茂る木々の合間をくぐり抜ける。

 枝の先が肌を傷つけ頬から血が流れるが気にはならなかった。


「待ってっ! 田中たなかくんっ!」


 背後から、俺を呼び止める河合かわいの声が聞こえていたが、止まらなかった。

 一刻も早く、ここから離れたい。


 いつ、死んでもいいと思っていた。

 この世界に来る前からだ。

 毎日がつまらなく、生きている意味を見出せなかった。

 こんな世界に来ても、その感情は動かない。

 救出部隊とか言って、人を救おうとするいずみ達の気持ちが理解出来なかった。

 人の死にも、自分の死にも興味はない。

 この川原で最後が来るまでのんびり過ごし、魔物が来ても逃げずにその時を迎えるつもりだった。

 なのに、俺は誰よりも先に洞窟から逃げ出している。



 腐臭。

 そいつが姿を現した時、たまらない程の腐った臭いが洞窟内に充満した。


「ギィギィ……」


 それは、教会で全滅させたはずのゴブリンだった。

 ただのゴブリンではない。

 顔の右半分がなく、身体のあちこちが欠損していた。


 ゾンビだ。倒したはずのゴブリンがゾンビになって襲ってきたのだ。


「い、嫌ぁああ!」


 最初に叫んだのは、河合だった。

 音に反応するのか、ゾンビゴブリンが河合に襲いかかる。


蜘蛛の糸(カンダタ)っ」


 鈴木すずきが糸を出してゾンビゴブリンを拘束する。


「何だっ、コイツはっ!?」


 いつも冷静沈着な鈴木も慌てふためく。

 ゾンビゴブリンは拘束されながらも、脱出しようと暴れ続けていた。

 生きていた時のゴブリンとは明らかに違う。

 凶暴性とグロさが増し、こちらに噛み付いてこようと必死に動く。

 名波ななみ久米くめが洞窟の奥でふるえていた。


「に、逃げるぞ」


 それだけ言うのが精一杯だった。

 拘束されたゾンビゴブリンをそのままに洞窟の外に出る。


 出た途端に立ちすくんだ。

 朝、鈴木と妙な足跡を見つけた時に、ここから立ち去るべきだった。

 洞窟の周りを大量のゾンビゴブリンがぐるりと囲んでいる。

 よく見るとその中に人間型のゾンビが数体混ざっていた。

 どうやら、その人間型がゴブリンの死体をゾンビに変えたようだ。


 くだらない世界から消えて無くなるなら、どんな死に方でもいいと思っていた。

 だが、コイツらにやられたら、腐った死体になって、いつまでもこの世界を彷徨さまようことになる。


「名波さんと久米くんが、まだ洞窟にっ」


 そんなものは知らない。

 河合の声を無視して、愚鈍スロウのスキルを使う。

 正面突破。

 ゆっくりになったゾンビどもの間を、こちらもゆっくりなまま潜り抜ける。


「待って、田中くんっ」


 背後から河合の声が聞こえていたが、止まらなかった。


「いそげっ、田中についていくぞっ!」

「でも、二人がっ!」


 鈴木が河合の手を引いて、俺の背後に続く。

 そうだ。今しか逃げるチャンスはないぞ。

 ゾンビになりたくないなら、勝手について来たらいい。


「名波さんっ! 久米くんっ!」


 河合が叫ぶ。

 二人が残る洞窟にゾンビ達が雪崩れ込んだ。




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