50話 嘘
追放者を攻撃していたクラスメイトの動きが止まる。
突然現れて、スキルを使って指揮をしていたシャルロッテ。
その首がなくなっていた。
追放者による大砲『名波』の攻撃は、シャルロッテの頭を吹き飛ばし、後ろにいたクラスメイト達にも甚大(じんだい」な被害を与えたていた。
阿鼻叫喚。
手や足がちぎれた者達が叫び、呻いている。
「……し、死んだのか?」
シャルロッテの頭があったところから血が流れ、砂漠の砂を赤く染めていく。
「じゅ、十二個目のスキルを確認。黒鎧『鰐淵』。身体を硬質化させ、身を守るっ」
死体に向かって最後の報告をする。
目の前に追放者が立っていた。
いつのまにか、シャルロッテに切断された右腕と左脚が再生されていた。
傷変換ではないスキルだ。確認を怠った。
シャルロッテが生きていれば、怒られていただろう。
「……シャルロッテ」
追放者は目の前の僕が見えていないかのように、シャルロッテの死体を眺め、その名を呼ぶ。
「なんだ、違うのか」
「えっ」
思わず声をあげる。
追放者が僕に気付いて目が合う。
「お前が今のお気に入りか」
「それは、どういう……」
質問しようとした時だった。
ぞわっ、と全身が怖気が走る。
スキルの発動。
それは死んだはずのシャルロッテから感知された。
(なんだっ? このスキルはっ! 馬鹿なっ!)
「生きていたら……」
追放者の赤いマントが大きくたなびいた。
周りの重力が消え、追放者が宙に浮く。
「また会おう」
そのまま、追放者は城に向かって飛び去っていく。
「……十三個目のスキルを確認。赤マント『佐々木』。周りの重力を消して空を飛べる」
そんなことを言っている場合ではない。
だが、今更、どうにもならなかった。
生きていたら、だと。
(生き残れるはずがないだろうっ!)
シャルロッテの死体から二つのスキルを感知していた。
これまでどうやって隠していたのか。
『遠隔操作』と『自爆』のスキル。
「……嘘じゃ」
首のない死体からカチカチという音が鳴っていた。
爆発へのカウントダウン。
「嘘じゃ無かったのかよっ!!」
『遠隔操作で操っているので、この身体は本体ではない』
『その身体には強力な爆弾が埋め込まれているので、死んだら皆を巻き込んで爆発する』
「全部ハッタリよ。私からそんなスキル感知できないでしょう」
その言葉こそが嘘だったのだ。
クラスメイトを含め、もはやここから逃げる手段が見当たらない。
それでも、叫ばずにはいられなかった。
「爆発するっ、みんな逃げろっ!!」
カチン、という音がした。
辺りが真っ白な光に包まれる。
「死なないでね」
シャルロッテとの最後の会話を思い出す。
「出来れば生きて帰って、またスキルを報告してね」
「あのクソ嘘つきがっ!」
巨大な爆発がすべてを飲み込んだ。




