45話 救援部隊
「救援部隊を作るべきだと思う」
そう提案して来たのは、「うざっとき」のリーダー的存在、佐々木さんだった。
洞窟の前に全員が集まり、これからのことを話すため、会議をすることになった。
十人が大きい岩のテーブルを囲んで円になっている。
「私は関係ないから、意見しないわ」
シャルロッテだけが一人、少し離れた木陰に座った。
どうやら話だけ聞くつもりのようだ。
「小日向率いる本隊の戦闘方針は明らかになったわ。これからも犠牲者を出しながら、突き進んで行く。ボクはその犠牲者を一人でも多く救いたい」
佐々木さんの言葉に鰐淵くんが歯ぎしりをしていた。
小日向くんに乗せられて、部隊単独で行動したことを後悔しているのだろう。
「このまま、この川辺で過ごせば安全かもしれない。でも、本隊との位置が離れすぎると助けに行けなくなる。ここに残る者と救出に行く者で分けるべきだと思うの」
「ワタシは嫌だよ。怖いし、動きたくない」
最初にそう言ったのは河合さんだった。
「俺も、動くの面倒だし、ここに残る」
当然のように田中くんがそう言う。
「俺様は行く。ついでに小日向の野郎にも用があるしな」
鰐淵くんが拳を強く握りしめ震えていた。
佐々木さんの提案にそれぞれが意見を言う。
「そうね。理想は半々に別れること。ここも拠点として残しておきたいしね」
「ポチ助とタマ美もいるしね」
突然、宇佐さんが謎の言葉をつぶやく。
「ポチ助? タマ美?」
「あ、捕まえたリザードマンね。回復力が凄いからもう鈴木くんと久米くんから移した傷、治りかけてるよ。また負傷者が来ても安心だねっ」
「な、名前つけたの?」
「うん、愛着わくよね」
愛着わいたらダメだろっ、と突っ込みたくなるが黙っておく。
「泉くんは行かないよね?」
そう言って来たのは名波さんだ。
当然、彼女も残るだろう。
リザードマンの洞窟に行く前に、田中くんがここに残ると言った時は、みんなとここにいようと決意した。
だが、今は違う。
佐々木さんと第四部隊を救出し、その考えは変わっていた。
「一人でも助けれる可能性が増えるなら俺は助けに行きたい」
名波さんは、その答えを聞いて、何も言わず寂しげに俯むいた。
「一つ、聞いてもいいか?」
ここで初めて話したのは、不良グループの参謀的な存在、冷静沈着な鈴木くんだった。
「時任の予知スキルで、俺たちは最後まで生き残っているのか?」
時任さんは首を振る。
「多分、ほとんど生き残れない。救出は死ぬまでの期間を延ばすだけの行為かもしれない。それが意味のない事だと思うなら救出には加わらないほうがいい」
それは残酷な宣告だった。
「ちなみにうっさーはこれまで5回死んでる。今朝もリザードマンに餌を与えようとして、噛まれる予知を変えている。それが無駄な事だと私は思ってない」
「うそっ、マジでっ! ポチ助とタマ美が慣れてきたから口枷外そうとしたのがダメだったの? とっきー止めてくれてありがとうっ!」
……う、宇佐さん、もうちょっと気をつけて生きていこうね。
「どうせ、人はみんな死ぬ。それまでにどう生きるかが大事だと私は思う」
時任さんの言葉に鈴木くんは何も答えない。
この日、俺たち十人は二つの部隊に分裂した。